不動産投資では様々な初期費用が発生するため、正確な資金計画を立てるためにも事前に基本的な内容を把握しておく必要があります。本記事では、不動産投資でかかる初期費用の詳細や収支計算方法と併せて、節税に関する基礎知識も解説します。
目次
1.不動産投資の初期費用
不動産投資を始めるにあたっては、物件購入価格のほかにも初期費用としてかかる以下の諸費用についても押さえておく必要があります。それぞれについて、詳しく解説します。
・印紙税
・登録免許税
・不動産取得税
・損害保険
・ローン関連費用
・管理費用
・修繕積立金
・固定資産税
1-1.印紙税
物件を購入するときは、不動産売買契約書に印紙を貼ることで、印紙税を納付します。税額は契約金額によって下表のように細かく規定されているため、金額に合った印紙を購入しましょう。
▽印紙税税額表(不動産)
記載された契約金額 | 税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下のもの | 6万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
1-2.登録免許税
不動産を購入したら名義を書き換えないと正式に自分が持ち主になったことになりません。不動産の登記は各都道府県にある法務局で行います。登録免許税はこの登記にかかる税金で、市町村が定めている固定資産税評価額に基づき決定されます。税率は、土地所有権の移転登記が「不動産価額×2%」、建物の所有権保存登記が「不動産価額×0.4%」です。
1-3.不動産取得税
不動産取引において土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などによって不動産を取得した際に課税される税金です。基本的には固定資産税評価額の4%がかかり、物件を購入してから約半年経つと物件のある都道府県から購入者に納付書が送られてきます(取得時期や適用される軽減税率で料率は変わります)。なお、固定資産税評価額は、物件の購入価格と同じというわけではなく、物件によって異なります。少なくとも数十万円はかかると思っておいたほうがよいでしょう。
1-4.損害保険
火災保険は加入しないと融資が受けられませんので必ず加入します。地震保険も万が一に備えて、多くのオーナーが加入しているものです。また、物件の敷地内で何かしらの事故が起こり、損害賠償請求された場合に対応してくれる施設賠償保険に入っておくとさらに安心です。損害保険料の払い込み方法は主に以下の3つがあります。
・一括払い
3年間、5年間など長期の保険料を一括して支払う方法です。数年以上の保険料を支払った場合は、いったん前払い費用で資産計上したあと、年ごとに分割して経費計上するかたちになります。
・年払い
1年契約の保険料を一括して支払う方法です。1年分をまとめて経費に計上できます。
・月払い
長期または1年契約の保険料を毎月支払う方法です。こちらも1年分をまとめて経費に計上できます。
それぞれメリット・デメリットがあるので、契約時に保険会社と相談して決めるとよいでしょう。
1-5.ローン関連費用
不動産の取得にあたり、銀行から融資を受けた場合、事務手数料や保証料などがかかります。
事務手数料は、三井住友銀行の例でWEB申込専用住宅ローンが融資金額×2.2%、直担住宅ローンの手数料が11万円(いずれも税込)となっています。その他の金融機関も2.2%の料率がほとんどです。
保証料の金額は金融機関や保証会社ごとに異なります。保証料の支払方法は、以下の2つの方式があります。
・一括前払い型(外枠方式)
契約時に一括して支払う方法で、金利に上乗せせずに支払うため、外枠方式と呼ばれます。一括払いのため保証料に利息が付かず支払総額を抑えられる半面、契約時の諸費用が多くなります。
・金利上乗せ型(内枠方式)
月々のローン適用金利に保証料分の金利を上乗せして支払う方式です。ローン金利に含まれるので内枠方式と呼ばれます。契約時の諸費用を抑えられる半面、保証料の支払総額は大きくなります。
なお、保証料の相場は0〜2%で保証料がかからない銀行が多い傾向です。事務手数料、保証料ともに融資を受けたい金融機関のホームページで詳細を確認する必要があります。
1-6.管理費用
分譲マンションを購入した場合は管理組合が存在します。マンションの清掃や保守・点検は管理組合が管理会社に委託し、その費用を戸数の頭割りでオーナーが支払います。
ただし、一般的には管理費は入居者が家賃と一緒に支払うことがほとんどで「家賃13万円、管理費1万円」などと不動産広告に記載されています。そのため、管理組合に支払う管理費と入居者負担の管理費を同額にすれば実質的なオーナーの負担はありません。
1-7.修繕積立金
修繕積立金は、分譲マンションの共用部分(外壁、屋根、エントランス、エレベーターなど)の維持管理や修繕工事のために、区分所有者全員が負担する積立金です。分譲マンションでは管理組合が15年や30年などの長期修繕計画を立て、維持管理や修繕工事を実施します。
区分所有オーナーが行う修繕は、貸している居室内で発生した故障や不具合のみで、長期修繕の中には含まれません。管理費と異なり、修繕積立金はオーナーが負担します。
1-8.固定資産税
固定資産税は毎年1月1日に物件を所有している人に課されます。納税通知書は4〜6月の間に届き、6月、9月、12月、翌年2月の年4回に分けて支払うのが一般的です。固定資産税は「課税標準額×1.4%」で求められますが、各市町村の条例によって税率が異なることもあり、また軽減措置による料率の変更もあるため、物件購入の際、事前に確認しておきましょう。
また、固定資産税の支払いに合わせて、都市計画税を納める必要がある場合もあります。対象になるのは、市街化区域内にある土地と建物です。物件の立地が市街化区域外の場合は都市計画税がかかりません。都市計画税の税率は「固定資産税評価額×0.3%」です。
2.不動産投資の収支計算方法
不動産投資では初期費用の他に、毎月定期的にかかる費用もあります。2年目以降は初期費用がかからないので、毎月の収支計算はほぼ一定になります。シミュレーションで確認しておきましょう。
【前提条件】
東京都中央区の新築ワンルームマンション、専有面積25㎡、物件価格5,000万円、借入額3,500万円(頭金30%)、元利均等払い、金利1.0%、返済期間35年、家賃13万円
収入の部 | 支出の部 | ||
家賃収入 | 130,000円 | ローン返済額 | 98,799円 |
管理費 | 10,000円 | 管理委託料※1 | 6,500円 |
保険料※2 | 458円 | ||
管理費 | 10,000円 | ||
修繕積立金※3 | 5,450円 | ||
固定資産税※4 | 16,333円 | ||
計 | 140,000円 | 計 | 137,540円 |
利益 2,460円 |
シミュレーションは一例ですので、実際の収支は個々の物件により異なります。また、不動産投資ではローン完済後に金融機関の担保が解除されて物件が純資産に変わるため、出口戦略として売却したときにそれまでの家賃収入と売却代金を合わせて最終的な利回りが確定します。
したがって、シミュレーションのように月の利益が少なかったとしても、それだけでは不動産投資が儲からないとは断定できないことを理解しておきましょう。
3.マンション経営と節税
不動産投資では各種費用が発生しますが、経費として計上できるものも多数存在します。主な費目は以下のとおりです。
・租税公課(固定資産税・都市計画税)
・修繕費及び修繕積立金
・減価償却費
・ローン利息
・仲介手数料
・管理委託料
・広告宣伝費
・その他(弁護士報酬・税理士報酬、交通費など)
これらを上手に必要経費として計上できれば、節税に役立てることができるでしょう。例えば減価償却費は実際の支出を伴わないのに、建築費用を耐用年数で割った金額が、毎年計上できます。
また、資産運用のセミナー参加費用やテキスト代なども必要経費として計上可能です。「ちりも積もれば山となる」という言葉がありますが、コツコツとこまめに領収書を集め、経費計上していくことで、課税される所得金額やそれに伴う税額を抑えることも可能になるでしょう。
4.サラリーマン大家なら損益通算で節税可能
サラリーマンが不動産投資を行う場合、「損益通算」という税制優遇を利用できます。不動産を購入した初年度は初期費用が多くかかるため、利益が出ずに不動産所得が赤字になりやすい傾向があります。その場合、不動産投資の赤字分を給与所得から差し引くことが可能です。
例えば、不動産投資で50万円の赤字になり、給与所得が400万円あった場合は、差し引き所得が350万円となるため、所得税や住民税の節税につながります。給与所得者ならではの節税方法といえます。
5.不動産投資で成功したいなら収支計算は必須
不動産投資を始める際は、購入する物件価格だけでなく、税金や諸費用などすべてのコストを踏まえて資金計画を立てなければなりません。自己資金とコストを照らし合わせて、金融機関から受ける融資の金額を決めなければならないからです。
また、確定申告の際は経費にできるものは可能な限り計上することが大切です。経費を多くすることで所得が減り、支払う所得税や住民税の節税につながります。不動産投資の初期費用と毎月の収支計算を基礎から学んで、不動産投資の成功につなげていきましょう。
(提供:Dear Reicious Online)
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