「M&A」が経済政策の大きなテーマになってきた。岸田文雄首相が提唱した「新しい資本主義」でも、日本経済を再び成長軌道にのせるため、M&Aを利用した中小企業の生産性向上や、オープンイノベーションが重要な役割を果たしている。そこでM&Aによる日本経済の再起動と国際競争力の向上について、政治が何を考え、どのような行動を起こしているのか、自由民主党新しい資本主義実行本部幹事長の平将明衆議院議員に聞いた。
M&Aは大企業よりも中小企業の方が難しい
-岸田首相が提唱する「新しい資本主義」で、M&Aはどのような役割を果たすのでしょうか?
「新しい資本主義」を実現するには、DX(デジタルトランスフォーメーション)やSX(サステナビリティトランスフォーメーション=企業と社会のサステナビリティを同時に推進する経営)といったイノベーションを起こす必要があります。その主役はスタートアップ。スタートアップが生まれやすいエコシステムを、しっかり作っていかないといけません。
国内スターアップのEXIT(出口)は株式公開(IPO)が主流。M&AがEXITとなれば、大企業がスタートアップを育てるだけでなく、アイデア豊富な起業家がEXIT後に新たなスタートアップを設立する循環型のエコシステムが実現できます。
-政府が推進するM&A促進策の一つに「中小企業の事業承継」があります。
かつて中小企業が破綻する理由の多くは資金繰りでしたが、今は圧倒的に人手不足。人手を確保するためには、賃上げを可能にするだけの付加価値を生み出さなくてはなりません。付加価値を生み出せる企業が、吸収合併による水平展開を進めるべきでしょう。その結果、経営体質が強化されれば、働く人の処遇も改善されると同時に、国内産業の生産性も向上します。
一方で進んでいるのが事業承継税制の改革。先代たちが会社を成長させて、いざ引き継ぐとなったら企業価値が高く評価されて、相続税が払いきれないという事態が起きています。そこで株の評価額を大幅にディスカウントして、事業承継しやすくする税制改正を実現しました。私も税制改正を進めてきましたが、最終的な目的は雇用の維持です。日本の中小企業は国内雇用の大部分を占めており、スムーズな事業承継は国内の雇用維持につながります。M&Aによる事業承継はますます必要になるでしょう。
ただ、中小企業のM&Aは大企業以上に難しいのが実情。国も中小企業M&Aのリスクをコントロールする仕組みも考えていくべきだと思います。国でガイドラインを作る方法もあるでしょうし、リスクをみんなで分担をする保険というやり方があるかもしれません。そうした包括的な政策パッケージを作る必要があります。
平 将明(たいら まさあき)
衆議院議員。自由民主党新しい資本主義実行本部幹事長、広報本部本部長代理、デジタル社会推進本部本部長代理兼AIの進化と実装に関するPT座長兼web3PT座長。1989年早稲田大学法学部卒。家業の青果市場仲卸会社社長を経て、2005年衆議院議員選挙で初当選。2012年経済産業大臣政務官兼内閣府大臣政務官、2014年内閣府副大臣(地方創生、国家戦略特区、クールジャパン戦略、沖縄関連政策、消費者政策、食品安全問題、公正取引委員会などを担当)、2019年内閣府副大臣(防災、行政改革、IT政策、科学技術・イノベーション政策、宇宙政策などを担当)などを歴任。
聞き手・文:糸永正行 M&A Online編集委員
インタビュー全文は発売中の「M&A年鑑2024」(M&A Online編・ダイヤモンド社刊)に掲載しています