TCNプライム(東京都文京区)は神戸大学発の医療機器開発ベンチャー。同大医学部附属病院の小西明英臨床研究推進センター特命准教授と循環器内科の岩崎正道医師が進めてきたバルーン大動脈弁形成術(BAV)用のバルーンカテーテルシステムや、人工肺とポンプを用いた体外循環による治療(ECMO)用の順行性カテーテルの商品化に取り組むため、2023年10月に設立した。
出資企業と「二人三脚」の成長戦略
滋賀県草津市に滋賀研究所を開設して、患者の身体への負担が小さく、簡単な操作で安全性が高い、医療従事者に信頼してもらえる医療機器の研究開発を進めている。同12月には「神戸大学認定ベンチャー」に選ばれた。設立に当たり、医療機器製造・販売を手がけるニューロシューティカルズ(同)から出資を受けている。同社は急性心筋梗塞などの診断用や温度監視モニター用のカテーテルを手がけており、TCNプライムのカテーテル技術に注目した。
ニューロシューティカルズは心不全治療での迷走神経刺激による心筋保護を目的とした迷走神経刺激カテーテルシステムや、サイズの違う様々なタイプのPTAバルーンカテーテルに装着できるスコアリングカテーテルデバイスなどを手がける複数の医療機器ベンチャー企業に出資している。同社出資先の中には、2024年1月に大塚製薬グループの母体企業である大塚製薬工場(徳島県鳴門市)へ26億5000万円で売却したニューロシューティカルズ沖縄(沖縄県うるま市)もあり、オープンイノベーションの司令塔としての役割を果たしている。
同社から出資を受けたTCNプライムは、同じカテゴリーでの製品開発・販売でのシナジー効果と共に、オープンイノベーションによるイグジット(出口)という選択肢も得たことになる。誕生したばかりの大学発ベンチャーであるTCNプライムだが、出資企業と「二人三脚」で着実な成長を目指す。
文:M&A Online