「ポケモンパン」を製造販売するパン業界中堅の第一屋製パン<2215>が7期ぶりに営業損益が黒字化した。
2023年7月に行った値上げや2022年12月末に横浜工場(横浜市)を閉鎖し生産拠点を集約した効果が現れたほか、エネルギー価格高騰の影響が想定よりも少なかったことなどが要因だ。
同社は2022年12月期に、6期連続の営業損失に陥り、流動負債が流動資産を超過したため「継続企業の前提に関する重要な疑義が生じた」としていたが、2024年12月期に2期連増の営業黒字となる見込みのほか、横浜工場跡地の賃貸収入や保有資産の流動化などにより、こうした疑義が解消されるとしている。
パン業界最大手の山崎製パン<2212>は、2024年12月期に4期連続の増収増益を見込んでいるほか、北海道を中心に展開している中堅の日糧製パン<2218>も、2023年3月期は25.0%の営業減益だったが、2024年3月期は3.5%の増収、27.9%の営業増益と堅調な業績を見込む。
開く一方だった山崎製パン、日糧製パンの両社と、第一屋製パンの差は、このまま縮小の方向に進むだろうか。
本格回復には今少し時間が
第一屋製パンの2023年12月期の売上高は264億4200万円で、前年度比7.7%の増加となった。営業損益は5億9700万円 (前年度は5億4700万円の赤字)で、黒字に転換した。
同社は人件費や物流費、原料価格、エネルギー価格などの上昇に、コロナ禍が加わり、2017年から6期連続で営業赤字に陥っていたが、ようやく水面上に浮上。2024年12月期も2期連続の営業黒字を見込む。
ただ、営業利益額は、物流費や人件費の上昇に加え、生産性向上のための設備投資などがかさむため、4.7%減少する見込みだ。
このため配送コースの再編や、遠方のエリアでは共同配送を推進するほか、横浜工場跡地の賃料収入などを見込むものの、本格回復には今少し時間がかかりそうだ。
山崎製パンは4期連続の増収増益に
一方、山崎製パン<2212>は、菓子パンを中心に業績が好調に推移しているのに加え、YKベーキングカンパニーを新たに連結対象にしたことなどから2023年12月期は9.2%の増収、90.5%の営業増益となった。2024年12月期も増収営業増益を予想しており、実現すれば4期連続となる。
日糧製パンも増収増益に
日糧製パンは在庫の棚卸数値を過大計上する不正行為があったため2023年3月期の決算発表が遅れたものの、食パンや菓子パン、調理パンなどが好調だったため、売上高は3期ぶりに増加(1.3%増)に転じた。
一方、営業利益は原材料価格やエネルギー価格の上昇などの影響で3期ぶりに減少したが、2024年3月期は増益に転じる見込みだ。
物価高の影響で消費者の節約志向や低価格志向が強まっており、パン業界にもその波が押し寄せている。消費が低迷する中でも業績を伸ばす同業者に対し、第一屋製パンはポケモンという武器をうまく使いこなすことはできるだろうか。
文:M&A Online