住宅資材大手の大建工業<7905>は、空調工事大手の高砂熱学工業<1969>の子会社で空調設備工事を手がける清田工業(東京都中央区)の株式の80%を取得し子会社化した。

ふく射(高い温度から低い温度に熱移動する現象)で空間全体をむらなく冷暖房できる「ユカリラ」の事業拡大が狙いで、清田工業をグループ内に取り込むことで、システム全体を責任施工できる空調工事の体制を整え、避難所として利用される体育館などへの売り込みを強化する。

能登半島地震をはじめ東日本大震災など多くの地震で避難所となってきた体育館では「冬場の底冷え」や「仕切り板設置による冷暖房気流の遮り」などが起こり、空調効果が避難者全員に行き届かないことが問題視されている。

「ユカリラ」は床からのふく射を利用するため、仕切り板などの影響を受けずに空間全体を冷暖房できるため、避難所での生活の質を高めることが可能だ。

また近年、熱中症対策として体育館への空調設備の設置が推奨されており、体育館空調の需要拡大が見込まれている。大建工業はM&Aによってどこまで事業を伸ばすことができるだろか。

空調の設計から工事までトータルで提案

大建工業は2018年に「ユカリラ」事業を始め、幼稚園や高齢者施設、戸建てやマンションなどの住宅向けの事業を拡大してきた。

これまでは材料と床工事の提案に留まっていたが、体育館などの大規模な施設に対応するためには、空調の設計から工事までを含めたトータルでの提案が必要と判断。空調設備工事で実績のある清田工業の子会社化に踏み切った。

大建工業は2024年3月26日に清田工業の株式を取得(80%)しており、同社取得分を除く残りの20%は高砂熱学工業が引き続き保有する。

バドミントン競技でも効果

「ユカリラ」は空調機の暖気や冷気を床下に送ることで、床表面の温度をコントロールするもので、室内の気流を抑えられるため、ほこりを巻き上げにくく、肌の乾燥などを防ぐことができる。また気流が抑えられるため、気流の影響を受けやすいバドミントン競技などでも効果が見込める。

清田工業は1946年の設立以来、オフィスビルや病院、マンションなどの空調設備の施工などを手がけてきた。

帝国データバンクによると2023年3月期は売上高21億7400万円(前年度比22.7%減)で、当期損益は200万円の赤字(前年度は8400万円の黒字)だった。

今後は空調工事に加え、設計提案や材料供給、施工、アフターサービスまでをワンストップで対応する新しいビジネスモデルを構築し、事業を拡大する。

災害時に避難所となる体育館の改修の波に、うまく乗ることはできるだろうか。

M&A Online
(画像=帝国データバンク調べ、「M&A Online」より引用)

文:M&A Online