ニデック<6594>がM&A戦略を転換した。これまでは、赤字企業を買収し経営を立て直すケースが多かったが、今後は経営状況が良くすぐに業績に貢献できる企業を対象にするとともに、大型の買収にかじを切り、取引価格が高くても買収に踏み切る方針だ。
同社創業者である永守重信氏が2024年4月24日に東京都千代田区の大手町サンケイプラザで開催した2024年3月期の決算説明会の場で明らかにした。
永守氏が2024年4月1日に、代表取締役会長(最高経営責任者)から代表取締役グローバルグループ代表に就任し、M&Aに専念できる体制となったのを機に、M&Aの人員を増やし、これまで以上にM&Aを積極化することにした。
また2023年に、敵対的となったTAKISAWA(岡山市の工作機械メーカー)の買収が成功したことで、どのような企業であっても買収が可能と判断したことも背景にある。
こうした取り組みで2030年には売上高の半分をM&Aで傘下に収めた企業で稼ぎ出すとしている。
日本の企業に対する敵対的買収のテキストになる
永守氏の発言は次の通り。
これまでに73社を買ってきた。なぜこの会社を買うのか、あまりシナジーがないのではないかという指摘を多く受けてきた。しかし、今見るとすべての企業で見事にシナジーが出ている。それはすべてモーターに関連しているからだ。
ニデックはモーターの世界ナンバーワンの会社だ。市場が飽和しているのであれば別だが、モーターを使うマーケットがどんどん伸びているのに、他の全く関係のない事業に出ていく意味はない。
伸びているマーケットの中で、何が足りないのかを考え、足りない部分はオーガニック(自社の経営資源を活用して成長すること)で補うのがコストが安いのか、それとも買収の方がコストが安いのかを判断する。買った方がいいとなれば、どこの会社が一番いいのかを考え、買収先を決める。
ニデックは、これからどういう分野に出ていくのか、それにはどういう技術が足りないのかは、すでにはっきりとしている。
ただ、今まで日本の場合は敵対的な買収が簡単にできなかった。昨年はTAKISAWAさんに対し完璧な買収を行った。このやり方は今後の日本の企業に対する敵対的買収のテキストになるだろう。
このやり方で大体の会社は買えると見ている。今後はどの会社でも買えるという点から見ると、対象企業の範囲が非常に広がってくる。どこの会社を買うか順番を決めてやっていく。
こうした取り組みで2030年の売り上げの半分はM&Aで達成する計画だ。このためにM&Aの人員を増強しており、本格的に大型の買収をやることにしている。
だからと言って、競争入札などで高い値段で買おうという気持ちは全くない。候補が10社あれば、買収は1社ほどで非常に慎重な形でやっていく。
ニデックのグループに入れば確実に15%の利益が得られるという企業を買う。今までは赤字会社を買い再建してきたが、このやり方では時間がかかる。今後は少し値段が高くてもすぐに業績にプラスになる企業を買う方向に変えた。
文:M&A Online