中国の自動車輸出台数が2023年に初めて日本を追い抜き、世界一が確実な情勢になっている。中国自動車工業協会の発表で明らかになった。それによると2023年の中国からの自動車輸出台数は前年比57.9%増の約491万台と過去最高を記録した。一方、日本は同年11月までの累積輸出台数が399万台と100万台近い差がついていることから、追いつけない見通しだ。

中国車輸出増の原動力となったEV

中国車の輸出が好調な理由には、ウクライナ侵攻の経済制裁で西側諸国の新車が販売できなくなったロシア向けの輸出増もあるが、電気自動車(EV)の成長が大きい。

再生エネルギー情報サイトのクリーンテクニカによると、2023年1〜11月のEV販売台数で中国の比亜迪(BYD)は255万6504台。米テスラの161万3465台を大きく引き離し、初めて世界一のEVメーカーとなるのは確実だ。

中国では景気停滞に伴いEV市場の成長が鈍化したことから、内需から輸出へシフトする動きが強まっている。EVの普及が進むEUでのEVシェアは、金額ベースで2019年から2022年までの3年間で0.4%から3.7%に上昇した。2023年にはBYDの躍進もあり、さらに存在感を高めているはずだ。

かつて中国製EVは低価格車が中心だったが、現在では500万円を超える中・高級EVも生産・販売している。蔚来汽車(NIO)のように約80万元(約1630万円)の超高級EVを発売しているメーカーも。1980年代に大衆車から中・高級車とシフトして世界一になった日本と同様のやり方で、中国車がキャッチアップしたことになる。

日本車は燃費が良く排ガスがクリーンなエンジンで欧米車を凌駕(りょうが)したが、中国車はEVだった。両国とも、環境対応で自動車業界の主導権を握ったわけだ。


EVの内需拡大が輸出を増やすカギ

国内需要で量産体制を整えてから、輸出に振り向けるのが自動車産業の「成功パターン」だ。輸出で存在感を示すには、EVの内需を高める必要がある。中国国内での2023年のEV販売シェアは約25%に達した。

日本は国内メーカーのEV投入が遅れており、2.2%と10分の1未満。しかも、国内で販売されたEVの約4割が日本規格の軽自動車「サクラ」で、国際競争力がない。しばらくは日本製EVの輸出が増加する可能性は低いだろう。

EVの内需が高まっているのは中国だけではない。EU主要国でも2023年の新車販売に占めるEVのシェアは30%程度に上昇しており、内需が好調なことから欧州のEV量産体制は整いつつある。これに伴いEUからのEV輸出も、さらに増えるとみられる。

2023年にはドイツのメルセデス・ベンツやBMWなどが2万2890台のEVを日本に輸出した。日本国内でのEV販売に占める輸入車のシェアは25.8%に達しており、高価格帯のモデルが多い。

幸いなことに円安もあり、日本車メーカーの業績は好調を持続している。日本車メーカーは豊富な資金力を活かして海外のEVメーカーを買収し、生産規模の拡大と開発時間の短縮を実現する必要がありそうだ。日本が逸(いち)早く自動車輸出世界一の座を取り戻すには、M&Aしか方法はないだろう。

文:M&A Online