【2月のM＆Aサマリー】98件と過去10年で最多に｜ドラッグストア業界に大きな動き

2024年2月のM＆A件数（適時開示ベース）は前年同月比21件増の98件となり、過去10年で最多を記録。取引総額は1兆775億円と2か月連続で1兆円を超えた。上位にはMBO（経営陣による買収）が並び、金額未確定・非公表ながらドラッグストアが関わる大型案件も連続した。

上場企業の適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM＆A（グループ内再編は除く）について、M＆A Online編集部が集計した。

（画像＝「M&A Online」より引用）

ルネサスが大型案件を発表

取引総額1位は、半導体大手のルネサスエレクトロニクスが米国のアルティウムを8897億円で買収すると発表した案件。2月の取引総額のうち8割超を占める大型案件となっている。ルネサスはこれまで海外の半導体メーカーの買収を複数手がけたが、対象になったアルティウムはソフトウエア会社となる。

同社は電子部品を取り付けて配線するプリント基板を設計するソフトウエアをクラウド上で提供する世界的大手で、ルネサスは自社のコンポーネントや顧客基盤、サポート力などを組み合わせることで、アルティウムの成長を加速できると判断した。

長期的には、外部と連携したオープンな設計プラットフォームを作り込み、複雑化する電子機器設計の世界をより低廉で、より容易な利用環境の構築を目指す。電子機器設計におけるプラットフォーマーと半導体メーカーの2つの顔を持つビジョンを描いているという。

MBO案件が続出

取引金額2～4位がMBOで占めた。広告・看板用の低溶剤プリンターを主力とするローランド　ディー．ジー．（2位）、キャンプ用品を扱うスノーピーク（3位）、障碍者の就職支援を行うウェルビー（4位）と続き、ローランド　ディー．ジー．とスノーピークが製品需要の停滞、ウェルビーがサービスの高度化への対応と人材確保を理由に挙げている。各社いずれも中長期的な経営環境を想定し、事業構造の改革を必要と判断してMBOを選択した。

MBOは2024年に入って、1月のアオキスーパーの案件を含めて、すでに5件（適時開示ベース）をカウント。2023年の10月以降、寺岡製作所、シダックス、ベネッセホールディングス、大正製薬ホールディングス、アウトソーシングなど立て続けにMBOが発表されてきたが、その流れが足元でも続いている。

ドラッグストア&調剤薬局の大型M＆Aが連続

ドラッグストアが関わる大型M＆Aが連続したのも2月の特徴。2月27日にスギホールディングスが関西を中心に調剤薬局を運営するI＆H（兵庫県芦屋市）の子会社化を発表。翌28日には、イオンがドラッグストア大手のツルハホールディングス（札幌市）、ウエルシアホールディングス（東京都千代田区）と資本業務提携し、2027年12月末日までにウエルシアを傘下に置いたツルハをイオンが子会社化すると発表した。

スギホールディングスはノウハウの相互利用による事業の質の向上や事業規模の拡大を目的にI＆Hの子会社化を目指す。一方、イオン、ツルハ、ウエルシアは3社連携を推進。店舗開発や調剤併設、商品や電力の仕入れ、物流効率化など多様な面で相互協力を進め、決済・ポイントシステムなどの提携や、プライベートブランド商品の共同開発や相互供給なども図るという。

スギの取引金額は非公表、イオンは未確定だが、いずれも業界大手が動いた案件。かねてより、ドラッグストアは調剤併設店の推進や生鮮食品の取り扱い拡大など付加価値向上に取り組み、M＆Aが活発に行われてきた業界であり、これら案件がドラッグストアならびに隣接業界を巻き込んでの新たなM＆Aを誘発する材料になるかが注目される。

◎2月M＆A：金額上位案件（10億円以上）

M＆A Online