投資詐欺の被害が急増している

SNS型投資詐欺は、SNSのやり取りで信用させたうえで「投資金」「投資の利益の出金手数料」などの名目でお金などをだまし取る詐欺のことです。また、SNS型投資詐欺と同じようにSNSでやりとりして恋愛感情や親近感を抱かせ、お金をだまし取る詐欺のことをSNS型ロマンス詐欺といいます。

SNS型投資詐欺やSNS型ロマンス詐欺の被害が、このところ急増しています。
警察庁「令和6年1月〜3月におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況について」によると、2024年1月から3月のSNS型投資・SNSロマンス詐欺の被害(認知状況)は、

  • SNS型投資詐欺:認知件数1,700件・被害額約219.3億円
  • SNS型ロマンス詐欺:認知件数603件・被害額約60.6億円

(合計)認知件数2,303件・被害額約279.8億円

となっています。

2023年からの発生状況の推移を見ると、特に2023年9月以降に被害が急増していることがわかります。

SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数・被害額(令和6年3月末・月別)

SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数・被害額(令和6年3月末・月別)
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)
引用:警察庁「令和6年1月〜3月におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況について」より

SNS型投資詐欺・SNS型ロマンス詐欺は1件あたりの平均被害額が大きいのが特徴。1件あたりの平均被害額はSNS型投資詐欺が約1,300万円、SNS型ロマンス詐欺が約1,000万円となっています。また、被害の最高額はSNS型投資詐欺が4億5,000万円、SNS型ロマンス詐欺が約1億2,000万円だというのですから驚きです。

また、「投資詐欺に引っかかるのはお年寄りだけ」でもありません。SNS型投資詐欺の被害者の半数は50〜60歳代ですが、その他の年代にも被害者は相応にいます。

SNS型投資詐欺の被害者の性別・年齢層

SNS型投資詐欺の被害者の性別・年齢層
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)
引用:警察庁「令和6年1月〜3月におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況について」より

ですから、「自分はだまされないから大丈夫」ではなく、手口を知ってだまされないようにしなければいけないのです。

SNS型投資詐欺の手口は?

SNS型投資詐欺の手口は、細部こそケースバイケースですが、おおよそ次のような流れになっています。

  • SNS上にある広告を開く
  • 犯人から別のSNSのグループに招待され、投資をするように迫られる
  • お金を振り込むと、当初は利益があるかのように示される(もちろん、偽の利益)。利益が出たからと少額を返金する場合もある
  • 「もっと利益を出すには追加入金が必要」などとさらなる振り込みを要求する(あるいは、「高額な利益を引き出すには手数料が必要」などと手数料を要求する)
  • 言われるがままお金を振り込むと被害が拡大。しかし引き出しはできず、やがて連絡が取れなくなる

警察庁の資料によると、SNS型投資詐欺の入口は、SNS上にある投資のバナー広告が約半数を占めています。「有名人の●氏があなただけに教える!リスクゼロで資産が倍になる投資先」のような広告のなかには、人々を安心させるために●氏の画像を勝手に使って掲載しているものがあります。なかには、AIなどの技術で●氏そっくりの動画や音声を作り、信用させるためのツールとして掲載している悪質なパターンも。巧妙に信じ込ませる仕組みがあるようです。

広告を開くと、詐欺師グループから連絡が届き、別のSNSのグループに招待されます。そしてそこで、お金を振り込んで投資をするように迫られます。同じグループの仲間(サクラ)から「私も儲かったから一緒に頑張ろう」などと声をかけられて、その気になってしまうようです。

お金を振り込むと、最初は利益が出るように見せかけられます。求めに応じて少額を返金するなどして、詐欺ではないと安心させるのは巧妙です。ただ、その後さらなる振り込みを求められたり、出金には手数料が必要などと言われたりします。ここで素直にお金を振り込んでしまう人もいるようですが、もちろんお金は戻ってきません。おかしいと思ったときには、もう連絡もつかなくなり、お金も取り戻せないという事態になっているのです。

実は筆者である頼藤太希も勝手に名前と写真を使用されて、X、インスタグラム、Facebookなどに広告が出されています。誘導先は概ねLINEグループのようです。私は、LINE誘導を含め、投資先の斡旋、有料コミュニティやサロンは一切やっておりません。見つけたら通報を都度していますが、後を絶ちません。皆様も見つけたら通報のご協力をお願い致します。

警察庁の資料によると、投資詐欺広告を見たサイト(当初接触ツール)でもっとも多いのは、男性がフェイスブック、女性がインスタグラム。フェイスブック・インスタグラム・LINEで6割を占めます。そこからほとんどの場合、LINEグループに誘導され、詐欺に遭っています。

投資詐欺の経路

投資詐欺の経路
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)
引用:警察庁「令和6年1月〜3月におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の被害発生状況について」より

知っておけばだまされない「投資にはないもの」5選

SNS型投資詐欺に限らず、投資には次の5つのものがありません。うまい話は一見魅力的ですが、実際には嘘なのですから、くれぐれも飛びつかないようにしましょう。

1. 元本保証

元本保証とは、「預けたお金が減らないこと」を保証することです。銀行預金や個人向け国債には元本保証がありますが、株式投資や投資信託、FX(外国為替証拠金取引)などの投資には元本保証はありません。したがって、投資にもかかわらず「元本保証」「ノーリスク」「絶対にお金が減らない」といった文言があったら詐欺です。

2. 必ず儲かる(当たる)

投資には元本保証がないのですから、「必ず儲かる」「必ず当たる」もありません。どんな凄腕の投資家であっても、値上がりする株を選び続けたり、為替レートの動きを完全にとらえたりすることは不可能です。「必ず」「確実」「100%」という文言があったら詐欺です。

3. 他の投資では見られないハイリターン

「半年で元本が確実に2倍に」などと他の投資では見られないようなハイリターンをうたうものも詐欺の可能性が高いでしょう。投資のリターンは、リスクと表裏一体です。ハイリターンには、ハイリスクが伴います。「ローリスク・ハイリターン」はありえません。
米国で「伝説の投資家」として知られるウォーレン・バフェット氏の生涯の運用利回りは年約20%といわれています。伝説の投資家でも年約20%なのですから、「半年で元本が2倍」なんて、まず無理だとわかります。

4. 有名人があなたにだけ教える秘密の投資先

SNS型投資詐欺の広告では、有名人が勝手に使われています。産経新聞の報道によると、森永卓郎さん、堀江貴文さん、西村博之さん、村上世彰さん、池上彰さんなどが多く登場するそうです。
これらの有名人が「確実に儲かる秘密の投資先」のような情報をあなただけに教えることはありません。ここまでお話ししたとおり、確実に儲かる秘密の投資先はありませんし、あるなら誰にも教えずに自分だけで投資したほうがいいはず。そのことを忘れないでください。

5. 金融商品取引業の登録のないものからの投資の勧誘

金融商品の売買など、金融商品の取引をする場合には金融庁に「金融商品取引業」の登録が必要です。海外にある業者であっても、日本に住む人に対して金融商品の取引を行う場合には登録が必要です。怪しいと思ったら、金融庁のウェブサイト「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」に名前が載っているかを確認しましょう。載っていなければまず詐欺です。

SNS型投資詐欺への「自衛」が必要

政府もSNS型投資詐欺の被害を重く見ていて、対策に乗り出すという報道もありますが、詐欺広告や詐欺の被害がそれで減るかは未知数です。したがって、SNS型投資詐欺に遭わないよう自衛することが必要。そのためには、そもそもSNS型投資詐欺の広告を開かないこと、秘密のグループやコミュニティには入らないことが大切です。

SNSは、誰でも気軽に繋がることができて便利な反面、常に信用できる情報が掲載されているとは限りません。SNSのアカウントやウェブサイトは、偽の情報を載せて作成することだってできますし、いざとなればすぐに消せます。AIで動画や音声まで合成できる時代なのですから、安易に信じてはいけません。

ときには、SNS型投資詐欺の広告を信じてしまった家族や友人から秘密のグループやコミュニティに誘われることもあるかもしれません。近しい人だけに信用してしまいがちですし、断りにくいかもしれません。しかし、これらは詐欺でお金を減らす被害に遭いますので、きっぱりと断りましょう。また、金融庁の「金融サービス利用者相談室」や消費者庁の「消費者ホットライン」など、専門機関に相談しましょう。

繰り返しになりますが、誰でも絶対に儲かる投資の方法はありません。そのことを忘れずに、SNS型詐欺から身を守るようにしましょう。

この記事を書いた人

頼藤太希
証券アナリスト
(株)Money&You代表取締役。中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintechなどに関する執筆・監修、書籍、講演などマネーリテラシー向上に努めている。著書は「はじめてのNISA&iDeCo」(成美堂)など多数。日本証券アナリスト協会検定会員。ファイナンシャルプランナー(AFP)。