光検出器や半導体レーザーなどの光関連機器を手がける浜松ホトニクス<6965>は、レーザーの装置や部品を製造するデンマークのNKT Photonicsの全株式を取得し子会社化した。

当初、2023年3月末に株式の取得を終える予定だったが、デンマークの産業・ビジネス・金融大臣が難色を示し一旦は株式取得申請を却下(2024年5月に申請を承認)したため、1年2カ月遅れとなった。

この間、有利子負債額が増加したほか円安が進み、取得金額は2022年6月に発表した当時の約295億円(約2億500万ユーロ=現在の為替レートでは約348億8000万円)から、約420億9400万円(約2億4700万ユーロ=現在の為替レートで計算)に増加した。

浜松ホトニクスでは2024年9月期の業績予想に変更はないとしている。NKT Photonicsとはどのような相乗効果を見込んでいるのだろうか。

両社の技術を活用し高付加価値製品を開発

NKT Photonicは、ファイバーレーザー(希土類元素を添加した光ファイバーをレーザー媒質として利用するレーザー)製造技術を保有しており、顕微鏡の白色光源や、半導体の検査用光源、眼科手術用光源、量子コンピューター用レーザーなどへと用途が広がっている。

一方、浜松ホトニクスは、化合物半導体製造技術をベースとした半導体レーザーを得意としており、ファイバーレーザーを得意とする NKT Photonics社とは相補的な関係にある。

このため両社の技術を活用することで、化合物半導体製造技術を応用したイメージセンサーやカメラを組み合わせた提案など、新しいソリューションが可能になるという。

今後は、浜松ホトニクスが主力とする光検出器の視点から次世代のレーザーに求められる機能や、レーザーの視点から開発すべき光検出器などを整理し、付加価値の高い製品の開発を進める。

浜松ホトニクスの丸野正社長は「NKT Photonicsがレーザー事業の中核を担い、NKT Photonicsのファイバーレーザー技術と当社の光検出器に関する専門知識とを組み合わせることで、独自のソリューションを提供することができる」としている。

2024年9月期は減収減益の見込み

浜松ホトニクスは2022年6月にNKT Photonicsを子会社すると発表したものの、デンマーク政府は2023年5月に、国家安全保障上の理由により株式取得を承認しないことを決定。

その後、2023年7月に再度、NKT Photonicsの子会社化の申請を行った結果、2024年5月になって、デンマーク政府が株式取得を承認した。

浜松ホトニクスが業績予想を変更しないとしている2024年9月期は、売上高2111億円(前年度比4.7%減)、営業利益375億円(同33.8%減)の減収減益の見込み。

2024年5月9日に発表した2024年9月期第2四半期決算で、市場環境と直近の業績動向を踏まえ、売上高を132億円、営業利益を109億円引き下げる下方修正を行った。

一方、2022年6月に公表したNKT Photonicsの2021年12月期の売上高は115億2600万円(8010万ユーロ)、営業損益は10億2100万円の赤字(710万ユーロの赤字)だった。

【NKT Photonicsの業績推移】

決算期2019年12月期2020年12月期2021年12 月期
売上高 7460万ユーロ
(107.34億円)
6990万ユーロ
(100.58 百万円)
8010万ユーロ
(115.26億円)
営業損益 470万ユーロ
(6.76億円)
△950万ユーロ

(△13.67億円)
△710万ユーロ

(△10.21億円)
当期損益 250万ユーロ
(3.59億円)
△1100万ユーロ

(△15.82億円)
△780万ユーロ

(△11.22億円)

※業績は2022年6月の発表時の数字

文:M&A Online