不動産依存のサッポロにも圧力
物言う株主は非効率な経営が行われている企業を標的にする場合が多い。当該企業の株式を部分的に取得し、経営改善を迫り、株価が上がれば、売り抜けるパターンが一般的だ。
3Dインベストメント・パートナーズは香港投資ファンドのオアシス・マネジメントと並び、“強面”の物言う株主として日本での存在感が高まっている。
酒類事業への経営資源の集中を柱に構造改革を進めるサッポロホールディングスは8月半ば、東京・恵比寿や札幌を中心とする不動産事業のあり方に関し、外部資本導入に向けた提案を募集することを発表した。同社の筆頭株主は約16%の株式を保有する3Dだ。
3Dはサッポロに対し、不動産事業が生み出す利益が本業である酒類事業の不振を覆い隠し、必要な経営改革が行われていないとし、かねて不動産事業の切り離しを求めていた。
サッポロは2000年代後半、物言う株主との攻防戦を経験。米ファンドのスティール・パートナーズの買収提案を退けるため、経営体力を消耗した過去がある。
東北新社も非公開化を検討へ
3Dは今夏、映像大手の東北新社にも株式の非公開化を提案した。富士ソフトのケースと異なるのは3D自身が買収者として名乗りを上げている点だ。
東北新社は7月末、特別委員会を設置し、受領した非公開化提案についての検討を開始した。TOBに際し、1株600~650円とする旨の価格提案が含まれていたことを明らかにしている。
東芝、再起を期して上場廃止
富士ソフトと同様に、外部資本をスポンサーとして株式を非公開化し、物言う株主との決別を企図した事例としては何といっても東芝だ。
不正会計問題や米原子力事業の巨額損失で経営危機に立つ東芝は2017年に約6000億円の増資を行い、債務超過を解消し、上場を維持した。
増資を引き受けたのが海外の複数の物言う株主で、その持ち株比率は約30%に達した。3Dも東芝の大株主として名を連ねた。経営の主導権を奪われ、身動きの取れない東芝が最終的に選択したのが非公開化だった。
国内投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIC)による買収提案を受け入れ、昨年12月に74年にわたる上場企業としての歩みにピリオドを打った。買収額は2兆円規模に達した。
黒田電気、翻弄された末に
物言う株主といえば、国内勢では旧村上ファンド系の動きが常に注目を集める。過去にはその投資先企業が株式を非公開化した例もある。エレクトロニクス専門商社の黒田電気だ。
2017年にさかのぼる。旧村上系投資会社のレノ(東京都渋谷区)が黒田電気株の約23%を取得し、同社を揺さぶっていた。
そうした中、アジア系投資ファンドのMBKパートナーズが黒田電気の賛同を得て、TOBを実施。TOBは成立し、翌年春、黒田電気は東証1部での上場を廃止した。
3Dは今年6月にワコールホールディングス、8月には日鉄ソリューションズで、それぞれ5%を超える株式の新規保有が判明した。旧村上系でも8月中、イリソ電子工業株の5%超の新規保有が明らかになっている。
文:M&A Online