日本M&Aセンターホールディングス<2127>、M&Aキャピタルパートナーズ<6080>、ストライク<6196>、M&A総研ホールディングス<9552>のM&A仲介上場4社の決算(3月期1社、9月期3社)が2024年10月31日に出そろった。大手4社の業績と取り組みを見ていく。
M&A仲介事業大手4社の業績
後継者不足に悩む中小企業の事業承継ニーズの高まる中、大手4社は成約件数を伸ばし、業績を押し上げた。売り上げ、営業利益ともに伸びが最も大きかったのは、M&A総研(2024年9月期)で、売り上げは前年度比91.5%増の約165億円、営業利益は83.6%増の約84億円だった。M&Aキャピタルパートナーズが前期の大型案件の反動減で売り上げ、営業利益ともに減少したが、残る3社はいずれも増収増益を達成した。
各社コンサルタントを積極採用
成約案件ならびに売上増加に基調にあるのは、事業承継の旺盛なニーズに加えて、各社がコンサルタントを増員してきたことが大きな要因。M&A仲介事業の売上高は「コンサルタント数×1人当たり売上」で表現される。
このため各社とも、案件をとりまとめるコンサルタントの採用に積極的だ。2024年9月までにM&A総研が139人増員し一気に320人体制としたほか、ストライクが77人、M&Aキャピタルパートナーズが34人、日本M&Aセンターが23人増員した。コンサルタントは採用から収益貢献までに1年ほどの時間がかかり、期中の人員増ではなく、期初の人員を重視するほうが実態に近づくため、この増員が次期への収益に寄与していくことになる。
なお、日本M&Aセンターは子会社だったバトンズが持ち分法適用関連会社へ移行した影響で増加数が小さくなった。
今期も各社とも採用意欲は旺盛で、日本M&Aセンターが2025年3月期で120人の増員を計画しているほか、2025年9月期でストライクは61人、M&Aキャピタルパートナーズは51人を見込んでおり、前期に大幅増員したM&A総研は引き続き80~130人の増員(M&Aアドバイザー)を計画している。
成約件数、成約単価向上の工夫
コンサルタントの成果を左右する要因として成約数、成約単価がある。成約数を伸ばすために、拠点の拡大、地域金融機関との結びつきや税理士法人、団体との提携などが進んでいる。
日本M&Aセンターは2023年から「地方創生プロジェクト」と銘打ち、経営相談窓口を開設。同社コンサルタントが企業からの事業承継や成長戦略に関する相談に対応するもので、2024年6月に静岡県に16カ所目となるサテライトオフィスを開設した。また、成約単価の向上にむけて、成功報酬1億円以上が期待できるミッドキャップ企業の受託施策を推進。その一環として、オーナー経営者限定の少人数対話型カンファレンス、年60回開催予定の全国セミナーツアーなどのダイレクトマーケティングを実施、新規受託の獲得を目指している。
ストライクは2024年9月期に8つの税理士協同組合との業務提携を実施。業務提携先を全国22団体に拡大させ、新たな提携先からすでに8件の新規案件を受託した。さらに同期にシード・アーリー期のスタートアップに投資をするベンチャーキャピタルのEast Venturesと共同で京都市内に「京都イノベーションオフィス」を開設、イノベーション型M&A(スタートアップのM&A)創出と活性化に向けた新たな一手を打ち出した。
M&Aキャピタルパートナーズは、提携金融機関から買い手企業の紹介を受け、優良な買い手企業と売り手を結び付けるWEBマッチングプラットフォーム「BUYER MATCHING PLATFORM」(BMP)における提携を1年余りで18社増やし、提携金融機関を50社に拡大させた。2024年11月にBMPを提携金融機関から提供範囲を拡大、新プラットフォーム「BMP-CORPORATE」の提供を開始した。
M&A総研は国内拠点の拡充を進めた。沖縄オフィスを8月に、札幌オフィスを10月に設立、さらに10月にシンガポール現地法人を設立し、エリア拡大を行った。2024年度は地域密着型の税理士法人、会計事務所との提携を進め、案件獲得を進める。