「1000億円」企業にリーチ

TKPはリリカラの子会社化に伴い、2025年2月期業績予想を上方修正した。下期段階から連結ベースでリリカラが寄与するためで、売上高を当初予想の450億円から620億円、営業利益を73億5000万円から82億円に引き上げた。

続く2026年2月期からはリリカラ、ノバレーゼがともに連結業績にフルに反映することから、単純合算で売上高は1000億円規模となる決算だ。

ただ、節目の「1000億円企業」への道のりは決して平たんではなかった。右肩上がりの成長を続けていたTKPにコロナ禍が立ちはだかった。

2021年2月期は売上高が431億円と20%超落ち込み、営業損益も2017年の上場以来初の赤字(25億円)に転落。翌22年2月期も売上高は微増で、9億円近い営業赤字を継続した。

M&A Online

(画像=「M&A Online」より引用)

「リージャス事業」を三菱地所に売却

2023年2月には傘下のレンタルオフィス大手、日本リージャスホールディングス(東京都新宿区)を三菱地所に約380億円を売却した。

日本リージャスはレンタルオフィスの世界的大手スイスIWGのグループ企業で、TKPが2019年に約430億円で買収した。買収額は当時のTKPの売上高を上回り、社運を賭けた大型M&Aだった。レンタルオフィス事業に本格進出し、貸会議室事業と並ぶ経営の両輪とすることを狙いとした。

コロナ禍が直撃する中、共倒れのリスクを避け、貸会議室事業に経営資源を集中させるため、レンタルオフィス事業を手放したのだ。この決断は財務の健全化にも功を奏した

2024年2月期はいったん500億円台に戻していた売上高が365億円に低下した。ただ、リージャス事業売却の影響を除いた売上高は折からのアフターコロナの到来を背景に2割近く増加し、貸会議室事業の復調ぶりを示した。

300億円以上の戦略投資枠を設定

TKPのビジネスモデルは貸会議室(2103室、8月末)を起点に、映像・音響機材のレンタル、同時通訳、仕出し弁当、研修、懇親会、宿泊手配などの付帯サービを幅広く提供している点に特徴がある。

売上構成をみると、貸会議室の室料は4割程度で、宿泊が2割、残りをオプション、料飲が分け合う。宿泊では2014年からアパホテルをフランチャイズ展開し、現在、15棟(客室数約2900)を運営する。

間もなく2年目を終える中期経営3カ年計画(2023年3月~2026年2月)では期間中、300億円以上とする戦略投資枠を設定。既存事業の拡張と周辺事業への展開を旗印に、事業提携や出資、M&Aを取り組む方針を打ち出している。

昨年、組織コンサルティング事業の識学に約10%を出資。企業研修の共同開発や、共同組成したファンドを通じたスタートアップ企業への投資に取り組んでいる。また今年、約14%を出資した賃貸仲介のAPAMANとは同社運営するコワーキングスペースへの共同出店、法人顧客との相互送客などを推進中だ。

今後の見どころになりそうなのが海外事業。コロナ禍で事実上、ゼロベースに戻っており、本格的に再開を目指す場合、M&Aの出番が十分に考えられる。

◎ティーケーピーの主な沿革

出来事
2005 ティーケーピーを都内に設立
2012 直営貸会議室数が1000室を突破
2013 仕出し弁当の常盤軒フーズを設立
2014 アパホテル第1号店として、アパホテルTKP札幌駅前を開設
2017 東証マザーズに上場(2022年4月に東証グロースに移行)
マーケティングリサーチのメジャース(現イチガヤ)を子会社化
2018 直営貸会議室数が2000室を突破
2019 レンタルオフィスの日本リージャスホールディングスを子会社化
品川配ぜん人紹介所を子会社化
レンタルオフィスの台湾リージャスを子会社化
2023 識学に出資
日本リージャスホールディングスを三菱地所に譲渡
台湾リージャスをスイスIWGに譲渡
2024 2月、APAMANに出資
6月、リリカラをTOBで子会社化
11月、システムソフトとAPAMANからレンタルオフィス事業「fabbit」を取得
12月、ノバレーゼをTOBで子会社化

文:M&A Online