ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「ドル弱い。円高株安。日本の2024通年成長率はプラスかマイナスか」

ドル円=149-154、ユーロ円=157-162、ユーロドル=1.02-1.07

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨首位(首位)、株価18位(15位)、円高株安。2024年成長率はプラスかマイナスか」
(円最強維持も株価はマイナス圏)
 円は依然年間首位だが、先週はその差を詰められた。一方、円高の代償としては日経平均が年初来1.87%安の18位。10%高も多い欧州株に大きく引き離されている。10年国債利回りは1.35%。

(日本の成長率は、10-12月、2024年年間ではプラスかマイナスか)
 24年10月から12月までのGDP=国内総生産が本日発表される。食料品の値上がりで個人消費がマイナスに転じるなどとして、実質の伸び率は年率換算で1%台の予測が多くなっている。
物価の変動を除いた実質の伸び率が前3か月間と比べていずれもプラスになると予測。年率に換算した伸び率はプラス0.5%からプラス1.7%の間となっていて、12社のうち8社が1%台の予測で、残り4社は1%未満の予測。
 項目別では、GDPの半分以上を占める「個人消費」は、12社のうち10社が伸び率が前回のプラスからマイナスに転じるとみている。コメや野菜といった食料品の値上がりが続き、節約志向が強まっていて、物価の上昇に賃金の上昇が追いつかず、消費が伸びていない。また「設備投資」は、12社すべてがプラスと予測していて、人手不足を背景にソフトウエアなどへの投資が堅調だ。
一方、今回は、去年1年間のGDPも発表されますが、個人消費が振るわなかったことなどから実質で4年ぶりにマイナスになるのではないかという予測もあり、結果が注目される。

(日本の需給は大きく変わらず)
 今週発表される1月貿易統計は2兆円の赤字予想だ。1月は常に大幅赤字なので驚くことはない。1月の外貨投信残高は90.31兆円。12月の89.05兆円から1.26兆円増加している。
需給が変わらずも円高推移しているのは米国の景気減速が短期的に影響している。

(今週は消費者物価)
 1月消費者物価の予想は4.0%、コアが3.1%、コアコアが2.5%の予想。上昇要因はコメの高価格やガソリン補助金の廃止だろう。金利操作どうなるものではない。官製のインフレ上昇だ。

(日銀植田総裁)
 日銀の植田総裁は先週、政策金利の調整幅はその時の経済・物価・経済情勢次第であり、今後とも情勢をしっかり見極めて適切な金融政策を実行していきたいと述べた。これまでの政策金利の上げ幅は適切だったとの認識も示した。桜井周委員が、米国のトランプ政権の政策が経済に与える影響が不透明な中、日銀が金融政策運営の柔軟性と機動性を高めるため、今後の利上げ幅を0.1%などに小さく刻むことも一つの方法ではないかと指摘していた。

*米ドル「通貨11位(8位)、株価(NYダウ)11位(9位)、ドルは弱くなってきた。景気減速はトランプ政策のせいか」
(ドルは弱い)
 ドルは弱い。12通貨中11位、下にはトルコリラがいるだけだ。株価は弱くもないが10%超の強さを見せる欧州株からは引き離され、NYダウが4.71%高、ナスダックが3.71%高、S&Pが3.96%高。日経の1.87%安は上回っている。10年国債利回りは4.48%で1月の4.9%からは低下している。

(景気減速、大量解雇)
 アトランタ連銀GDPナウは2.3%で前回の2.9%から低下している。弱い雇用統計、ミシガン大景況指数、小売売上などを反映している。鉱工業生産は強かったが、関税引き上げの話題の中心である自動車生産は落ち込んでいる。トランプ政権が早々に実施している公務員の大量解雇も気になるところだ。

(CPIナウは低下中)
 2月CPIナウは2.81%、コアは3.16%。1月のCPIが3%、コアが3.3%だったことからすると小幅低下している。

(今週はPMIにFOMC議事要旨など)
今週も指標が多いが、金利敏感なのは製造業など各種PMIか。その他NY連銀製造業景気指数、住宅着工、FOMC議事要旨、ミシガン大学消費者態度指数・確報などを注目したい。

(通貨政策)
 トランプ米政権は、対ドルで自国通貨を安く誘導する国をけん制した。外国が米製品にかける関税と同水準まで米国の税率を引き上げる「相互関税」の命令文書で、為替操作の有無を調査することを盛り込んだ。通貨政策を巡る発言は閣僚間で温度差があるが、政権は中長期的にはドル安を目指す姿勢を崩していない。ベッセント財務長官は「我が国の強いドル政策は、他国が弱い通貨政策をとることを意味するものではない」と強調した。

(トランプ政策は目新しいものではない)
 トランプ大統領の壮大な実験に見える関税引き上げ、対外援助打ち切り、物価低下政策、為替操作改善などはけっして新しいものではない。
50年以上も前のニクソンショックの政策も同じで、関税引き上げ、物価低下、対外援助の削減、ドル安だった。
 貿易赤字を削減したいようだが、小宮理論通り、貿易赤字は悪でもない。米国は貿易赤字のままで強い国となった。最適の経済効率が米国の貿易赤字を生んでるがそのメリットも大きい。
無理に調整すると経済の流れが変わる。現在の景気減速もその始まりかもしれない。
一方、貿易黒字を出し続けた日本は苦しみ、最近は貿易赤字による円安で少し持ち直している。

*ユーロ「通貨7位(9位)、株価首位(首位)DAX)、ウクライナ和平の動きを好感、欧州株強い、ユーロも少し回復、米とは対立軸」
(ウクライナ和平交渉進展は先ずは株上昇から)
今年目立つの欧州株の上昇だ。年初来で日経平均は1.87%安に対し、独DAXは13.08%高、仏CACは10.81%高、伊MIBは11.09%高。英FTやスイスも高い。ウクライナ和平が進んでることを好感しているのだろう。
ユーロも年初来では回復しつつあり、ドルを抜き12通貨中7位。

(ただ米国との亀裂が深まる)
欧州首脳は米国主導かつ欧州抜きのウクライナ和平交渉で緊急首脳会議を開催する。欧州各国の首脳は、米国がロシアとの和平交渉を進め、欧州大陸を締め出すことになるのではないかという懸念を受けて、ウクライナ戦争に関する緊急首脳会議に集まる予定だ。
スターマー英首相は、これは「我が国の国家安全保障にとって一世代に一度あるかないかの瞬間」であり、欧州がNATOでより大きな役割を果たさなければならないのは明らかだと述べた。英首相は今月末にホワイトハウスでトランプ米大統領を訪問し、欧州首脳の見解について協議する予定だ。

(独も米と対立)
 ショルツ独首相はミュンヘン安全保障会議で、ヴァンス米副大統領による「独のための選択肢」党支持の発言は「不適切」であり、独政治への外部からの介入は「不適切」だと述べた。ショルツ氏は、独は「我が国の民主主義、選挙、民主的な意見」に外部者が干渉することを容認しないと述べた。独総選挙は2月23日に行われる。

(ウクライナのレアアースは)
トランプ政権がウクライナに対し、米国にレアアース鉱山の所有権50%を付与するよう提案したことを明らかにした。ウクライナ紛争勃発以来ウクライナに提供してきた米国による数十億ドル規模の武器や支援に対するウクライナの返済手段となるだろうとしたた。

(ユーロ圏GDP)
 24年4Qのユーロ圏GDP改定値は前期比0.1%増と、速報値の前期比横ばいから上方修正された。ただエコノミストは、ユーロ圏経済の停滞が当面続くと予想している。

(最近のラガルドECB総裁の発言など)
ラガルド総裁は「インフレ見通しは米国との貿易摩擦によってより不透明になってくる。ただインフレは年内に2%に戻るだろう。ECBは特定の金利経路を事前にコミットすることはない」述べた。ブイチッチ・クロアチア中銀総裁は「今年さらに3回の利下げが行われるとの市場の予想は不合理ではない。利下げの前提は、今後数カ月間にサービス部門のインフレが急速に低下することだ」と述べた。

*ポンド「通貨10位(11位)、株価7位(4位)、ドルを抜く、GDP改善で」
(米ドルを抜いて10位へ浮上、株価は好調)
 年初来、ポンドは最下位か11位をさまよっていたが、先週のGDP、鉱工業生産の改善を受けて、10位のドルを抜いた。株価は好調でFT100は年初来6.84%高、10年国債利回りは年初の5%近くから先週末は4.51%

(4Q・GDP、12月GDPが予想を上回りドルを抜く)
 24年4Q・GDPは前期比0.1%増と、予想外のプラス成長となった。予想は0.1%減。12月のGDPは前月比0.4%増。予想の0.1%を大幅に上回った。ただ消費や企業投資を通じた内需が予想より弱かった。
12月の経済成長はサービス業がけん引。卸売業、映画配給会社、パブ、バーのほか、機械メーカーや製薬会社が好調だった。 ただ、政府支出や一時的とみられる企業在庫の増加も寄与しており、企業投資は前期比3.2%の大幅減、家計支出は横ばいだった。企業投資の減少は輸送部門が主因。 英国は24年上半期に緩やかな経済成長を記録したが、下半期に入り景気は鈍化。3Qはゼロ成長だった。
企業は昨年10月末発表の予算案に国民保険料の雇用主負担引き上げが盛り込まれたことを受けて、人員削減や値上げの計画を発表している。

(インフレ抑制の長期的プロセスがまだ完了していない、英中銀エコノミスト)
 英中銀首席エコノミストのピール氏は、インフレ抑制の長期的プロセスがまだ完了していないため、利下げに慎重になる必要があると述べた。英中銀は今月金利を引き下げたが、ピール氏は、全体的な状況としてはインフレ率は目標である2%に向かっていると述べた。しかし、ピール氏は、根底にある物価圧力は依然として残っていると述べ、英国の経済成長が鈍化する中で金利引き下げに慎重な姿勢を求めた理由を説明した。「インフレ抑制のプロセスは進んでいるが、まだ完了していない。一部の制約は取り除くことができる」とし、「金利は今後さらに引き下げられると予想しているが、ペースは緩やかになるだろう」と述べた。 トランプ米大統領の関税引き上げについてピール氏は、関税が自動的にインフレ率の上昇につながるわけではないが、特に長期的には「かなり大きな影響」を与える可能性があると述べた。

(鉱工業生産改善)
12月鉱工業生産は前年比0.7%増、前回の0.3%減、予想の0.1%減を大きく上回った。

(今週も重要指標多い)
 今週は12月雇用統計、1月消費者物価、 小売売上 、2月PMIと重要指標の発表が多い。

*豪ドル「通貨3位(4位)、株価10位(8位)、4年振りに利下げか。RBA総裁発言に注目」
(豪ドル、豪株はまずまずの推移)
 豪ドルは年初来3位、株価指数(全普通株)は4.8%とまずます。10年国債利回りは4.45%と米国とほぼ同じ。

(4年振りに利下げか)
 RBAは2月18日、政策金利を0.25%引き下げる予想だ。利下げすれば4年ぶり。 インフレ率の伸びは昨年4Qに2.4%まで鈍化し、インフレターゲットの2-3%の範囲に収まってきた。経済成長率が若干鈍化し、インフレ率も和らいだことにより、RBAが長期にわたって抑制的な水準に維持する必要性が薄れた。 ただ、労働市場は堅調で賃金インフレも根強い。住宅市場は過熱しており積極的な利下げに転じる必要性は弱いという面もある。 今後の利上げペースはゆっくりで、かつデータ推移を見極める必要がある。これまで、利下げを拒んできたブロック総裁の会見にも注目したい。

(今週の他の重要指標)
 今週の4Q賃金指数は3.2%上昇の予想、前回は3.5%。1月雇用統計もある。失業率は4.1%の予想、前回は4.0%。雇用者は2万人増の予想、前回は5.63万人増。

(先週の指標は、弱いわけではない、)
 2月消費者インフレ期待は4.6%上昇、前回は4%上昇。1月企業信頼感指数は4で前回はマイナス2、2月消費者信頼感指数は92.2で前回は92.1.総じて弱いわけではない。

(トランプ関税引き上げ圧力は弱いだろう)
 豪は米国が貿易黒字を出している数少ない国だ。従ってトランプ関税引き上げ圧力は低いだろう。アルバニージー首相は先週、トランプ大統領と電話会談し、鉄鋼・アルミニウムの追加関税の対象から豪を除外するよう求めた。トランプ氏は対豪貿易で大幅な黒字を確保していることを理由に「大いに検討している」と伝えた。
 豪は第1次トランプ政権でも鉄鋼・アルミの関税を免除されていた。アルバニージー氏は、米国との協議について「建設的に対応していく」と強調した。米国の輸入に占める豪製品の割合は、鉄鋼が1%、アルミが2%。

*NZドル「通貨5位(5位)、株価17位(18位)、今週は0.5%利下げか。政府は動き出している」
(NZドルは今年は安定推移)
 リセッション、失業率悪化と経済のファンダメンタルズは弱いが、先週は持ち直した。1月企業信頼感指数が51.4と前月の45.9から上昇、食品インフレも2.3%上昇と前月の1.5%から上昇したからだろう。
先週は4位、今月はここまで5位、年初来では5位。ただ株価指数(NZ50)は弱く年初来0.93%安。10年国債利回りは4.62%で僅かだが米英豪より高い。チャート的には対ドルで1月陽線、2月もここまで陽線。

(政策金利は0.5%引き下げか)
 2月19日に政策金利決定。予想は0.5%引き下げだ。ロイター調査では33人のエコノミストのうち32人が、0.5%引き下げ、1人が0.25%利下げと予想している。 リセッション、失業率の悪化、インフレターゲット内に収まっているインフレ(2.2%)などが0.5%引き下げの要因だ。

 ただもう少し先を見ると3月に予定されている4Q・GDP予想では前期比0.2%上昇の予想でリセッションを抜け出す可能性もある。

(人と投資流入の促進政策)
 リセッションを考慮しNZ政府は人と投資流入の促進政策を打ち出している。

・海外投資のワンストップショップとして政府内に「インベスト・ニュージーランド」を設立
・裕福な移民を誘致し、経済回復を促進するため、英語能力要件の削除など、いわゆる「ゴールデンビザ」プログラムを簡素化
・ビザ規制を緩和し、観光目的で同国を訪問した人が滞在中にリモート勤務ができるようにする