退職金は定期預金として預けるのがおすすめ?ベストな運用方法を解説
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退職金は老後の生活にとって貴重な財源になります。

退職金で資産運用する場合は、増やすことを目指すと同時に減らさない工夫も必要です。

そこで注目されるのが、退職金専用定期預金です。

本記事では、退職金専用定期預金について詳しく解説し、併せて他の投資との比較もおこないます。

退職金が支給される予定の方は参考にしてください。

この記事でわかること
  • 退職金を安全に運用できる退職金専用定期預金の特徴やメリット・デメリットを解説。
  • 株式投資や投資信託など、他の運用方法と比較し検討する。
  • 後の生活資金となる退職金を減らさないように、安全性を重視した運用を心がける。

目次

  1. 退職金専用定期預金の基本
  2. 退職金専用定期預金を選ぶポイント
  3. 退職金を定期預金で運用するメリット
  4. 退職金を定期預金で運用するデメリット
  5. 定期預金と他の運用方法との比較
  6. まとめ|退職金は減らさない運用を心がけよう

退職金専用定期預金の基本

退職金は定期預金として預けるのがおすすめ?ベストな運用方法を解説
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退職金専用定期預金は、退職金を受け取った個人が退職金を原資として各種定期預金への預け入れを申し込んだ場合、所定の金利が上乗せされる定期預金です。

はじめに定期預金の概要と、退職金専用定期預金の特徴を確認しておきましょう。

1.定期預金とは何か

定期預金とは、一定期間銀行に預けることを条件として、普通預金よりも高い利息を得られる金融商品です。

原則として満期までは引き出せませんが、中途解約することは可能です。

満期になったら、自動継続または解約を選択します。

自動継続にする場合、「元利継続」と「元金継続」の2つの選択肢があります。

元利継続は、元本+利息が継続した定期預金に預けられるので、複利運用になります。

一方の元金継続は、元金のみ継続され、利息は普通預金に入金されるため単利運用になります。

定期預金の利息には原則として20.315%の源泉所得税がかかります。

【定期預金の元利継続と元金継続の違い】

項目 元利継続 元金継続
満期時の取り扱い 利息を含めた元利合計を自動的に継続 元金のみを自動的に継続し、利息は払い戻し
メリット 元金が増えるため、複利効果が期待できる 満期ごとに利息を受け取れる
デメリット 満期まで利息を受け取れない 元利継続に比べ、複利効果は小さい

2.定期預金の金利の仕組みと影響要因

定期預金の金利は、預入期間によって異なります。

通常の定期預金の金利は店頭表示金利が適用されます。

利払いの方法は単利型と複利型があり、単利型の預入期間は1ヵ月から10年、複利型は3年から10年など金融機関ごとに設定されています。

単利型の利払いは、中間利払い日と満期日に分割して支払われます。

一方の複利型は、満期日に一括して利息が支払われます。

中途解約した場合は各行所定の減額された金利が適用されます。

【定期預金の単利型と複利型の違い】

項目 単利型 複利型
利息の計算方法 元金に対してのみ利息を計算 元金と利息を合わせた金額に対して利息を計算
適用される預金 短期の定期預金 長期の定期預金
メリット 計算がシンプルでわかりやすい 長期運用で大きな利息が期待できる
デメリット 長期運用には向かない 短期では効果が実感しにくい

定期預金の金利は日本銀行(以下、日銀)の金融政策によって影響を受けます。

2025年1月24日の日銀金融政策決定会合で政策金利を0.5%に引き上げることを決定しました。

これを受けてメガバンク3行は3月から普通預金金利を0.1%から0.2%へ引き上げることを決定しました。

定期預金金利も連動して引き上げることが予想されます。

したがって、退職金専用定期預金の預入期間が2025年3月31日までの金融機関で申し込む場合は、金利が上がったらすぐに申し込んだほうが無難です。

3.退職金専用定期預金の特徴

退職金専用定期預金は、退職金を預け入れることによって、普通の定期預金よりも多くの利息を得られる金融商品です。

退職金を受け取った日から一定の期間内(1~3年等金融機関によって異なる)に預け入れる必要があるので、早めに申し込むことが大事です。

預入期間は金融機関によって異なりますが、3ヵ月に設定している銀行が多いです。

3ヵ月間は特別優遇金利が適用されますが、自動継続された3ヵ月以降は通常の店頭表示の定期預金金利に変わります。

退職金専用定期預金は、原則として1金融機関につき1人1回のみしか利用することができません。

4.退職金専用定期預金の申込み方法

退職金専用定期預金は、取り扱い期間中に金融機関を訪れて申し込みます。

申し込む際は、退職所得の源泉徴収票、退職金支払明細書、受け取り口座の預金通帳(金融機関によって異なる)を持参する必要があります。

申し込みは店頭でのみ受け付けているため、ネット銀行で直接申し込むことはできません。

たとえば、住信SBIネット銀行の公式サイトで募集している場合でも、系列の三井住友信託銀行の店頭に出向いて申し込む必要があります。

退職金専用定期預金を選ぶポイント

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退職金はボーナスよりも大きな金額を受け取ります。

運用資金が多ければ、運用次第でより多くの利息収入を得ることが期待できます。

そのためには、運用商品や運用先の選択が大事です。

退職金専用定期預金は以下のようなポイントに留意して選ぶようにしましょう。

1.固定金利と変動金利の違いを把握する

金融商品には「固定金利」と「変動金利」があります。

固定金利は預け入れたときの金利が満期まで保証されます。

受け取る金利が満期まで変わらないため資金計画が立てやすい半面、金利が上昇しても恩恵を受けられないというデメリットがあります。

変動金利は政策金利の見直しによって受け取り利息が変わる可能性があります。

低金利下では上昇する可能性が高いですが、経済状況によっては金利が低下する可能性もあるので適切な判断が必要です。

退職金専用定期預金は、金融機関によって固定と変動のどちらかに指定されている場合と、どちらかを選択できる場合があります。

【固定金利と変動金利の違い】

項目 固定金利 変動金利
金利 一定期間、金利が変わらない 金利情勢によって金利が変わる
メリット 将来の返済額が確定しており、返済計画が立てやすい 一般的に、当初の金利が固定金利よりも低い
デメリット 金利上昇時に返済額が増えない 金利上昇時に返済額が増える可能性がある
向いている人 返済額を安定させたい人、金利変動のリスクを避けたい人 金利動向に敏感な人、当初の返済額を抑えたい人

2.金利の高い金融機関を選ぶ

金利は一律ではないので、少しでも高い金融機関を選ぶことが受取利息を多くすることにつながります。

退職金専用定期預金を扱っている主な金融機関の金利は以下のとおりです。

定期預金のみで運用するスタンダードなコースの金利で、投資信託とセットになっている商品は除いています。

金融機関名 コース 預入期間 税引前利率 税引後利率
三菱UFJ信託銀行 定期預金コース 3ヵ月 年1.3% 年1.03%
三井住友信託銀行 スーパー定期 3ヵ月 年1.2% 年0.956%
鹿児島銀行 3ヵ月 年1.0% 年0.79%
横浜銀行 定期コース 3ヵ月 年0.5% 年0.398425%
八十二銀行 3ヵ月 年0.5% 年0.398425%
千葉興業銀行 定期預金コース 3ヵ月 年0.3% 年0.239055%
京都銀行 ファーストステップ 3ヵ月 年0.3% 年0.239055%
東京スター銀行 スターワン定期 3ヵ月 年0.25% 年0.199%
関西みらい銀行 特別円定期 1年 年0.2% 年0.159%
銚子信用金庫 1年・3年 年0.165% 年0.131%
※コースは複数のコースの中で代表例を記載しています。銚子信用金庫は1年ものの利率です。

メガバンク系銀行の金利が高い傾向がうかがえます。

また投資信託とセットになっている商品は横浜銀行の例で、金利が年5.0%(税引後年3.98425%)と高金利ですが、投資信託の運用結果によっては元本を下回るリスクもあるので慎重に判断する必要があります。

3.中途解約したときの手数料に注意する

退職金専用定期預金を中途解約した場合、2つのペナルティがあるので注意が必要です。

1つは満期前に解約すると、中途解約利率によって計算されるため、受取利息が減ってしまいます。

もう1つは投資信託とセットになっている商品の場合は、中途解約すると定期預金の利息減額に加えて投資信託の解約手数料もかかります。

中途解約しなくて済むような資金計画を立てて申し込むことが大事です。

4.特別金利キャンペーンの適用条件を確認する

金融機関によっては、特別金利キャンペーンをおこなっている場合があります。

初回3ヵ月のみなどの条件があるので、ずっとその高金利が続くわけではありません。

適用条件は、「当行で初めて運用商品を申し込む」「当行所定のアカウントを持っている」などです。

適用条件を多くクリアしているほど金利が高くなるシステムになっています。

5.退職金の使いみちによって預入期間を選ぶ

退職金が支給されたら、どのように使うかも大きな問題です。

老後資金を運用するなら預入期間はある程度長いほうがよいでしょう。

一方で旅行費用にするのであれば、何年後に行くかスケジュールを立てて預入期間を決めることになります。

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退職金を定期預金で運用するメリット

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退職金を投資よりも定期預金で運用するからには、選択するメリットがなければなりません。

退職金を定期預金で運用するには、以下のようなメリットがあります。

1.元本保証で安心

定期預金は1,000万円以下であれば元本保証されるので安心です。

預け入れていた金融機関が万一経営破綻した場合、預金保険機構が1金融機関につき1,000万円までの元本と利息を保証してくれます。

したがって、退職金が2,000万円の場合、2つの金融機関に1,000万円ずつ預け入れれば、どちらも元本が保証されることになります。

2.運用方法がシンプル

定期預金は預け入れたらそのまま満期まで保有すればよいので、運用方法がシンプルです。

退職金専用定期預金は基本的に「スーパー定期」など既存の定期預金に金利を上乗せする仕組みなので、商品としてもわかりやすいです。

ただし、投資信託とセットになっている商品の場合は、定期預金のみの運用とは異なるので、窓口で説明を受けたほうがよいでしょう。

3.計画的に資金を管理できる

定期預金は運用期間が決まっているので、計画的に資金を管理できます。

売却益を狙う商品の場合は、いつ利益が出るかわからないので、相場次第で資金計画が変化してしまいます。

退職金を目的を決めて計画的に使いたいなら定期預金が適しています。

4.他の運用方法に比べてリスクが低い

定期預金は他の運用方法に比べてリスクが低いです。

株式のような価格変動がないので、満期まで保有すれば元本は償還されます。

元本を減らすリスクがほぼないので、精神的にも落ち着いて資産運用できます。

退職金を定期預金で運用するデメリット

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一方で、退職金を定期預金で運用するにはデメリットもあるので、心得たうえでおこなう必要があります。

1.インフレリスクがある

インフレが進むと現金の価値が目減りしていきます。

たとえば、インフレが2%進むと、金利0.5%の定期預金に預けている場合、年に1.5%ずつ実質的に元本が目減りする計算になります。

逆にいえばインフレを定期預金の運用で0.5%緩和すると考えることもできますが、資産の目減りを防ぎたい人は株式投資や投資信託などと併用して運用することも1つの方法です。

退職金専用定期預金の中にも、金融機関によって投資信託と併用するコースもあるので検討するのもよいでしょう。

2.低金利下で収益性が低い

日本の金融情勢は長らく低金利が続いています。

先に述べたように日銀の政策金利が0.5%になったため、多少預金金利が上昇しましたが、株式や投資信託に比べると収益性が低いです。

株式の東証プライム市場全銘柄の平均配当利回り(前期基準、2025年1月31日現在)は2.26%となっており、定期預金金利との差が歴然です。

利回りだけの比較では株式での運用に軍配が挙がります。

3.他の運用方法に比べて資産増加効果が低い

定期預金は、株式など他の運用方法に比べて資産増加効果が低いのがデメリットです。

たとえば、100万円を0.1%の金利で5年間複利運用(半年複利)したとしても、満期で受け取れる金額は100万5,011円(半年複利、税引前)にしかなりません。

4.金利変動リスクがある

金利は金融情勢によって変動します。

変動金利商品の場合、金利が高い時期に購入すると、金利が低下したときに利息も連動して少なくなるリスクがあります。

日本は長らく低金利が続き、円安もあって現在は金利上昇局面なので金利が下がる心配はないと思われます。

金利水準が高くなったら固定金利商品を選ぶことも選択肢に入れたほうがよいでしょう。

5.優遇金利は一定期間のみ

金融機関では優遇金利キャンペーンをおこなうことがあります。

そのときに公式サイトを見ると高金利のように感じますが、優遇金利が適用されるのは一定期間のみです。

適用期間が過ぎれば通常の金利に戻るので、キャンペーン期間の金利だけで判断しないようにしましょう。

先に見たように、退職金専用定期預金も高金利が適用されるのは3ヵ月というケースが多いです。

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定期預金と他の運用方法との比較

退職金は定期預金として預けるのがおすすめ?ベストな運用方法を解説
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退職金を定期預金で運用するのと、他の運用方法で運用した場合を一覧で比較してみましょう。

預貯金や債券の利息が非課税になる「マル優制度」は、障害者や寡婦など限定された人への税優遇制度のため、評価を△としています。

安全性 収益性 流動性 保険機能 税優遇
定期預金 × ×
株式投資 ×
投資信託 ×
債券投資 × ×
不動産
個人年金保険 ×
※一般例であり、個別の商品や銘柄によっては評価が異なる場合があります。

株式投資

株式投資は、上場企業の株式を原則として100株単位で購入し、インカムゲインまたはキャピタルゲインを狙う投資方法です。

値上がりした場合の売却益のほか、配当金や株主優待など収益を得る機会が多いのがメリットです。

半面、値下がりリスクや倒産リスク、上場廃止リスクなど損失を被る機会も多いというデメリットがあります。

投資信託

投資信託は、運用のプロであるファンドマネージャーなどが組成したファンドを購入して分配金や売却益を得る金融商品です。

ファンドには多くの銘柄を組み入れるため、個別株の影響を受けにくいというメリットがあります。

半面、組み入れた銘柄の株主として登録されないので、株主総会に出席できない、株主優待をもらえないなど、株主としての権利が制限されるのがデメリットです。

債券投資

債券投資は、国や自治体、企業などが発行する債券を購入して、利息収入を得る投資方法です。

主な商品に個人向け国債、社債、地方債などがあります。

メリットは、国や地方自治体、大企業が発行するので、新規発行の債券を満期まで保有する限り、元本割れの心配がほぼないことです。

デメリットは株式や投資信託に比べて大きな利益を得ることが難しい点です。

不動産投資

不動産投資は、家賃収入でローンを返済し、完済後に純資産になる現物投資商品です。

他人資本(ローン)を使ってより多くの収益を得ることができるのがメリットです。

ローンを組んだ場合、団体信用生命保険に加入して保険代わりになることもよく知られています。

デメリットは多額の投資資金が必要なことです。

マンションの場合、中古物件でも数百万円、新築物件なら3,000~5,000万円程度する物件もあります。

また空室リスク、災害リスク、金利上昇リスクなどリスクの数が多いのもデメリットです。

個人年金保険

個人年金保険は、個人が任意で加入する私的年金です。

60歳や65歳など所定の年齢まで保険料を払い込み、受取開始年齢になったら一定期間または終身にわたって年金を受け取る仕組みになっています。

メリットは保険機能と貯蓄機能の両方を備えていることです。

また掛金を社会保険料控除できます。デメリットは、収益性が低いことです。

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まとめ|退職金は減らさない運用を心がけよう

退職金は定期預金として預けるのがおすすめ?ベストな運用方法を解説
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退職金は公的年金だけでは足りない老後資金を補う貴重なお金です。

増やすことは大事ですが、同時に減らさない運用を心がける必要があります。

退職金専用定期預金は、退職金として受け取った金額の範囲内であれば、通常の定期預金よりも優遇された金利で預け入れることができます。

価格の変動もないので、満期まで待てば確実に利息を受け取ることができます。

もし、勤務先から退職金が支給される予定なら、退職金のベストな運用先として、退職金専用定期預金の活用を検討してはいかがでしょうか。

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丸山優太郎
丸山優太郎(著者)
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。企業系サイトを中心に執筆し、得意執筆領域は金融・経済・不動産。市場分析や経済情勢に合わせたトレンド記事を、毎年約200本執筆している。主な掲載媒体は「YANUSY」「THE Roots」「Dear Reicious Online」「auじぶん銀行お金のコラム集」「ZUUonline」など。

(提供:ACNコラム