
総括
FX「世界から逃げ腰の米国、老体に鞭打つ欧州、市場の精彩欠く日本」
ドル円=146-151、ユーロ円=160-165、ユーロドル=1.06-1.11
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨首位(首位)、株価18位(16位)、為替・株に変調。物価上昇も成長弱し」
(強い円は弱い株に影響。弊害も大きい)
円はここ2週間はユーロと激しく首位争い。先週末では円が僅差(0.34%)で首位を維持。円高にはつきものだが日経平均は弱い。年初来6.95%安。主要市場ではナスダックの次に弱い。石破政権では株に興味がないのか株に優しい政策は打ち出されていない。このまま円高株安が続くと企業収益減少、税収減にも繋がり、目指すところの賃上げも持続性がなくなる。
(今週は短観と家計調査に注目)
今週は短観、2月鉱工業生産、小売業販売額、住宅着工、全世帯家計調査・消費支出などの発表がある。成長を高めるのは消費だ。全世帯家計調査を注目したいが、前年同月比%減と弱い
(過去4年の円安需給に変調)
過去4年の円安を主導したのは貿易赤字と外貨投信などの資本の流出だ。ただ今年は円高推移している。2つの円安要因に変調がある。
貿易統計では2022年の19兆円、23年の9兆円、24年の5兆円の赤字から、25年は1月は2.74兆円の赤字(例年1月は大規模赤字)。2月は5905億円の黒字、3月上旬は393億円の赤字。2月の黒字は4年ぶりだが
米国関税発動前の駆け込み需要か。1-2月で2.1兆円の赤字。
外貨投信は2024年は28.5兆円の増加であったが、1月は1.2兆円の増加、2月は3.5兆円の減少と1-2月で2.3兆円の減少。貿易統計と外貨投信で1-2合計は0.2兆円の黒字。過去4年の貿易赤字、外貨投信増の円安要因とはリズムが異なってきた。
(日銀の金融政策は物価より株と為替を動かす)
日銀の金融政策とインフレは関係があるのだろうか。バブルのインフレを崩壊させたのは大蔵省の総量規制、デフレにとどめをさしたのは原発停止とコロナ。
ガソリンや学費を下げたのは補助金、コメは利上げしても補助金が出ないので下がらない。日銀はどちからといえば本来業務の物価安定より、管轄外の為替と株を動かす。これは常時気をつけたい。
(防衛費増額はGDP上昇か、欧州では通貨高)
中谷防衛相は、ヘグセス米国防長官と会談し、日米同盟の抑止力、対処力強化へ緊密に連携する考えを伝えた。ヘグセス氏は「日本がどのように抑止力を強化し、軍事的な投資を進めているのかを知りたい」と述べ、防衛費増額が重要との考えを示唆した。
中谷氏は在日米軍司令部を「統合軍司令部」に再構成する米側の計画の実施を確認したい考えだ。米メディアは今月、トランプ米政権が政府支出削減策の一環として、在日米軍の強化停止を検討していると報じた。
防衛費増強は財政支出の拡大、金利上昇で通貨高に繋がっているのがユーロ圏や北欧の状況だ。
*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)14位(12位)、MAGAの気配なく弱いドル・株。公務員解雇の影響は雇用統計に出るのか」
(弱いドル、弱い株)
2025年のドルは12通貨中で11位。NYダウは2.26%安、S&Pは5.11%安、ナスダックは主要市場最弱の10.29%。Fear&Greed指数(恐怖と欲望指数)も2025年に入って50以下が続いている。現在は22。
アトランタGDPナウはマイナス2.8%(後述)。政策金利については市場は5月も据え置きを予想している。
財政赤字についてはマスク氏が5月末までに1兆ドルを削減できるとしているがムーディーズは財政赤字の拡大と金利上昇で格下げを示唆している。
(GDPナウはマイナス2.8%だが)
アトランタ連銀1Q・GDPナウは関税発動を前に世界からの駆け込み輸出があり米国の貿易赤字が膨らんだため大きなマイナス(-2.8%)となっている。ただ貿易赤字黒字では景気の強さが分からないために
他の指標も見なければならない。民間最終消費支出,民間住宅,民間企業設備,民間在庫品増加,政府最終消費支出,公的固定資本形成,公的在庫品増加なども見なければならない。ただそれらも最近のデータでは強くはない。もう少し見続けないといけない。
(雇用統計に解雇の影響は出るのか)
今週は3月雇用統計の発表がある。非農業部門雇用者数は13.5万人増の予想で2月の15.1万人増から減少、失業率は4.1%の予想で2月と変わらず。一連の公務員の解雇の影響が出るかどうか。退職の条件として8か月分給与が得るならば、それがどう計上されるのか。平均時給は前年比で3.9%増の予想、2月は4.0%増であった。
(米経済の3分の2以上を占める個人消費が予想を下回る)
2月の個人消費支出価格指数は、前年比2.5%上昇した。1月の伸びと同じで、予想と一致。物価の「瞬間風速」を示す前月比も0.3%上昇した。
2月はまた、米経済の3分の2以上を占める個人消費が予想を下回る回復にとどまるとともに、基調的な物価圧力の高まりが示された。貿易摩擦が激化する様相を呈する中、景気停滞とインフレが同時に起きる「スタグフレーション」への懸念が強まる可能性がある。個人消費は0.4%増と、前月の0.3%減からプラスに転じたものの、予想の0.5%を下回る伸びにとどまった。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は前月比0.4%上昇と、昨年1月以来の大幅な伸びを記録した。1月は0.3%上昇だった。スタグフレーション懸念が高まる内容であった。
(自動車業界から不満。自動車関税は消費者に打撃)
GMやトヨタなど主要自動車メーカーが加盟する業界団体、米国自動車イノベーション協会(AAI)は、トランプ大統領が発動を表明した輸入自動車に対する25%の関税措置で、米国の消費者が打撃を受けると警告した。「追加関税措置の発動で米国の消費者のコスト負担が増大し、国内の自動車販売台数が減少するほか、自動車輸出も減少する。こうしたことは全て、国内で新たな製造や雇用が生み出される前に起こる」とした。
*ユーロ「通貨2位(2位)、株価3位(3位)DAX)、世界から逃げ腰の米国、老体に鞭打つ欧州」
(円と通貨首位争う)
先週も前々週もユーロは一時円を上回るも週末には抜き返され2位。独DAX株価指数は4月2日予定の米関税発動の影響で先週は1.88%下落も年間では12.82%高。今年は欧州各国の株価が強い。独10年国債利回りは2.73%、年初の2.36%からは上昇。
(独IFOの企業景況感が改善、歳出計画に期待)
独IFOの3月の期待指数は87.7と、前月の85.6から上昇した。予想は87.3。IFOは「歳出計画は大きな変化だ。他の改革と組み合わせる必要がある。そうでなければ、恐らく主にインフレに影響が及ぶだろう」と慎重な見方を示した。
(今週は消費者物価)
今週はユーロ圏と独の3月消費者物価の発表がある。予想はそれぞれ2.2%、2.3%。2%前半が続けば利下げへの支援となる。
(4月利下げ観測高まる)
米国が4月2日に相互関税を発動する見込みであることに加え、3月のフランスとスペインのインフレ率が予想を下回ったことを受け、ECBが4月に利下げに踏み切るとの観測が強まった。
4月に0.25%の利下げを実施する確率は80%となり、1週間前の約50%から上昇した。貿易摩擦激化による下振れリスクが現実味を帯びてきた。
(一方、タカ派の独連銀は)
ナーゲル独連銀総裁は、ユーロ圏諸国でみられる足元のインフレ率データに勇気づけられているとの認識を示した。同時に、インフレ2%目標への回帰に取り組む中、過度の楽観論には注意が必要との見方を示した。「インフレ対策のラストマイルは慎重さを要する区間でもある」と指摘。目標が手の届くところにあると、過度の楽観主義に陥る傾向がよく見られるとし「こうした見方に警告を発したい」と警戒感を示した。
(独の財政拡大)
シュタインマイヤー大統領が連邦議会と連邦上院で可決された基本法改正に署名し、「債務ブレーキ」条項の規制を緩和し、国防やインフラ建設への投資のため政府が多額の借り入れを行うことを可能にしたと発表した。この修正案は、連邦政府の追加債務を制限する「債務ブレーキ」条項を緩和し、防衛費がGDPの1%を超える場合、基本法で規定された債務上限にカウントされずに、連邦政府が借金で資金を調達できるようにする。さらに連邦政府は、交通や電力網などのインフラ整備に充てるため、「債務ブレーキ」条項の対象外となる5000億ユーロの特別基金を設立することが認められている。このうち1000億ユーロは既存の気候・移行基金に投入される。
ただ格付け会社は早速、財政赤字の拡大に警鐘を鳴らしている。持続的な成長の改善につながらない場合、独の最高ランクの信用格付け「AAA」が長期的には圧力にさらされる可能性があると指摘した。
*ポンド「通貨3位(4位)、株価9位(9位)、指標の一部に明るさ。インフレは警戒」
(ポンドは今月2位、年間3位)
今月は対円2.41%高と健闘し年間でもユーロに続き3位。FT株価指数は年初来5.94%高とまずまず。10年国債利回りは4.71%で先進国では一番高い。
(最近の指標にやや明るさも)
*2月の小売売上は前月比1.0%増と予想の0.4%減を大きく上回った。2月は、家庭用品店の売上高が2021年4月以来の大幅な伸びとなった。昨年4Qの家計貯蓄率は12.0%と、3Qの10.3%から上昇した。高水準の貯蓄が消費に回れば、低迷している経済成長が今後回復する可能性がある。
*3月PMIでは製造業が前月の46.9から44.6へ悪化。サービス業は51から53.2へ改善した
(2025年の成長見通しを1.0%へ半減)
英予算責任局(OBR)は2025年の英国内総生産(GDP)成長率見通しを1.0%とし、昨年10月の前回見通しの半分に引き下げた。 また、25年のインフレ率見通しは平均3.2%になると予想。昨年10月時は2.6%。
OBRは、トランプ大統領が来週に発動を予定する相互関税を背景に、英経済の規模は最大1%縮小する可能性があると指摘。
(2月消費者物価低下もインフレ警戒続く)
2月の消費者物価は前年比上昇率が2.6%となり、予想の2.9%、前月の3.0%から低下した。ただ来月のエネルギー代と国民保険料の急上昇により、インフレ率は4%に近づく可能性があるとされている。
英中銀は物価上昇圧力に引き続き警戒しているとし「5月の緩和可能性は残るが、利下げに踏み切る前に、4月の大幅な企業コスト上昇と春季財政報告で発表される措置の影響を見極めたいだろう」と述べた。
*豪ドル「通貨8位(8位)、株価15位(14位)、政策金利は据え置きか。先週末は対円で急落」
(3月は対円で持ち直していたが先週末は急落。トランプ関税でも株価は下がらず)
豪ドルは年初来8位、円より弱いがドルより強い。3月は対円で持ちなおしているが先週末は米株下落のリスク回避で豪ドルも対円で大きく下げた。
豪全株指数は15位で年初来2.67%安。トランプ関税宣言も先週の株価は0.45%高となった。10年国債利回りは4.45%。
引き続き、豪の最大貿易相手国の中国が米国の関税圧力をどうこなすかも焦点だ。
(政策金利は据え置きか)
RBAは4月1日に政策金利を4.1%で据え置く見通し。インフレ軟化傾向を様子見すると見られる。2月の消費者物価は前年比2.4%上昇した。伸び率は1月の2.5%から低下。電気料金が下落したほか、住宅インフレが鈍化した。トリム平均値は前年比2.7%上昇。1月の2.8%上昇から低下。2月に約4年ぶりに金利を引き下げたが、追加緩和の見通しについては慎重な姿勢を示している。次の利下げは5月と予想されている。
一方、3月製造業、サービス業、総合PMIはいずれも50以上でかつ前月から上昇し力強さを示した。
(予算はインフレを引き起こすか)
政府は、新たな減税や生活費支援措置を盛り込んだ予算案を発表し、財政収支の赤字を見込んだ。予算案は財政政策と金融政策が引き続き矛盾していることを示しており、幾つかの措置は若干のインフレを引き起こす可能性がある。
(総選挙、5月3日実施)
アルバニージー首相は、総選挙を5月3日に行うと発表した。選挙戦では生活費高騰への対応が争点になる見通しだ。労働党は、最近の世論調査では、野党の自由・国民連合と拮抗している。
首相は予算案に盛り込んだ減税を含め、家庭や企業の支持獲得を狙った施策を打ち出した。ただ支持率は 保守連合を率いる自由党のダットン党首と拮抗。
自由党のダットン党首は法と秩序重視を打ち出すとともに、労働党が進める再生可能エネルギーへの移行に反対し、原発導入計画を掲げている。
*NZドル「通貨7位(7位)、株価17位(17位)、リセッション抜け出すも、利下げ観測残る」
(NZドルは強くもなく弱くもなく)
通貨は年初来7位。対円で2.6%安、対ドルで2.18%高。週足が2週連続で上ヒゲが長い。対円年足は昨年は陰線、今年もここまで陰線。NZ50株価指数は年初来6.28%安と弱い。10年国債利回りは4.67%で先進国では高い。
(4月9日に政策金利決定)
今週は3月企業信頼感指数、そして4月9日に政策金利決定となる。4QのGDPはリセッションを免れたが、中銀は4月と5月に0.25%の追加利下げを予想。年内にさらにあと1回の利下げを実施する可能性もある。
ウエストパック銀行は、GDP統計は利下げがあと2回になる見通しを支持すると指摘した。景気回復の第一歩で、その兆候が出始めたが、建設業など依然としてかなり弱い分野もあるからだ。
(消費者信頼感、経済不安で3月に低下)
3月消費者信頼感は2月の96.6から93.2へ低下した。昨年10月以来の最低水準となった。ここ数カ月で若干の回復が見られたが、経済の楽観への道は困難なものになりそうだ。
主要な家庭用品を購入するのに良い時期だと考えている世帯の純割合を反映する小売業の主要指標は、1ポイント減少して-16となった。
消費者のインフレ期待はわずかに上昇し、現在は2024年半ば以来の高水準となる4.2%となっている。この上昇は生活費に対する懸念が高まっていることを示しており、これが消費習慣や貯蓄に影響を与えている可能性がある。今後1年の期待を測る将来状況指数はわずかに低下して100.7となり、消費者の慎重な楽観主義を示している。
直近の経済情勢を反映する現況指数は5ポイント下落して81.9となり、現在の経済情勢に対する消費者の不安が高まっていることを示唆している。
個人の財務状況に関する認識の低下は続いており、9ポイント低下して-21となった。
昨年よりも経済的に豊かになったと感じている人はわずか24%で、以前の数字より減少している一方、44%は経済的に悪化したと感じており、経済的不満が増加していることが示されている。
NZの29%は、主要な家庭用品を購入するのに良い時期だと考えているが、これは前月からほとんど変わっていない。一方、44%は悪い時期だと考えている。これは否定的なセンチメントの高まりを反映している。
住宅価格上昇の予想は3.2%から3.4%へと小幅上昇しており、不動産市場に対する楽観的な見方が若干高まっていることを示唆している。
(IMFの成長見通し)
IMFの2025年の成長見通しは1.4%、2026年は2.7%。2024年はマイナス0.5%だった