ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「人災的経済危機。解決方法はあるか? 今朝シドニーで145円台」

ドル円=143-148、ユーロ円=156-161、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨首位(首位)、株価18位(18位)、人為的な経済ショックで不確実性が増し投資家は一旦ポジションを手仕舞う」
(円最強、株最弱の日本窮乏型。いつか来た道)
世界的リスク回避での円高株安は日本の常道だが、今回は残念な流れだ。これまでの円高株安を導いた経済ショックは不良債権問題であったが、今回はトランプ大統領の自作自演だ。人為的に権力を使って経済ショックを生み出したのは悲しい出来事だ。今のところ米国民に選ばれているトランプ大統領は政策を変更するつもりはないらしい。これまでの経済ショックは世界が協調して問題国を支援していたがその筋書きとは異なったものとなっている。回復の見込みがない。米国民がトランプ大統領を拒否する迄続くので、覚悟はしたい。円急騰でも円売り介入は難しい。

投資家は不確実な状況となってきたので、一旦ポジションを手仕舞い様子見に移ろうとしている。

(円の位置)
円は最強、3月は軍需景気の思惑でユーロや欧州の株が買われ一時円を抜くことがあったが、株価暴落によるリスク回避で、円が再び抜き返した。
リスク回避に強いスイスフランも急騰している。日経平均は年初来15.33%安。日本国債利回りは1.5%から1.2%へ低下。引き続き貿易統計と外貨投信残高をチェックしていきたい。

(貿易赤字は悪ではない)
トランプ大統領は「貿易赤字は悪」という考えに立っている。世界のエコノミストは、そういう風に考えていないが、正誤よりも権力で押し切られている

(最近の指標は弱い。今週は植田日銀総裁の会見あり)
3月製造業・サービスPMIは悪化、短観の製造業業況指数も弱くなっている。2月鉱工業生産や小売売上も前年比で弱かった。これらは、まだトランプ関税発動前のもので、今後はさらに悪化するだろう。
今週は2月勤労統計、景気先行指数、3月景気ウオッチャー調査、消費者態度指数に注目したい。植田日銀総裁の講演もある。

(日銀は景気も見ないと)
日銀植田総裁は米国による広範囲にわたる関税の導入は日本と世界の経済に「下押し圧力をかける」ことになると述べた。
総裁は「周囲の環境が大きく変化すれば、経済や物価の見通しもそれに応じて変化する可能性がある」と述べた。
また「国内物価への影響については、さまざまなメカニズムを通じて物価が上昇することも下落することも考えられるため、予測は難しい。米国の政策に関連する不確実性の高まりにより、世界中の家計、民間企業、市場に悪影響が及ぶ可能性がある」と指摘した。
日銀は4月30日-5月1日に政策会合を開くが、機械的に金利を上げればさらに成長見通しが押し下げられる可能性がある。

*米ドル「通貨9位(11位)、株価(NYダウ)17位(14位)、人為的な経済ショックに耐える世界。是正は米国人次第」
(米株価は経済ショック並みの下落。ドルは小幅上昇)
先週ドルは浮上した。3月24日週の11位から9位へ浮上。株価は大幅下げで年初来NYダウが9.94%安、ナスダックが19.28%安、S&Pが13.73%安と経済ショック並みである。10年国債は4.005%、年初は4.572%。

ドルが上昇したのは以下の3つの要因

・3月雇用統計で、非農業部門雇用者数は22.8万人増加し、予想の13.5万人増を大幅に上回った。
・パウエルFRB議長は、新たな関税による経済的影響は想定よりも大きくなる可能性が高く、それがインフレの問題悪化につながらないようにする必要があると強調した。
・ベッセント財務長官が、米政権は「強いドル」政策を維持していると述べ、関税引き上げが米製品の世界市場での競争力を高めるために意図的にドル安を誘導する取り組みだという見方を否定した

(米国の世界貿易シェアーは10%)
米国の貿易シェアはどれくらいだろう。輸出では世界の約8.7%、輸入は13%。最悪でこの約1割の貿易取引が消えると考えてもいいが、その貿易取引の周辺産業もあり、銀行の貸付、債券での資金調達、株式投資も絡んでくるとショックは大きい。これまでの世界的経済ショックは中南米、メキシコ、アルゼンチン、エンロン、リーマンなどがあったが、いずれも不良債権に絡むものだった。関税戦争という人為的なものは珍しいし寂しいものだ。

(トランプ・ショックは終わるのか、痛みは続くのか)
世界的な経済常識人は一斉にトランプ関税を批判しているが、トランプ大統領は選挙で選ばれているのでその政策を変える必要もないかもしれない。変わるとしたら米国内からの突き上げ、中間選挙での敗退などだが、時間がかかり世界の常識人は我慢しなければならないかもしてれない。

(米国は既に強い)
米国は世界一のGDPを誇る。また一人当たりGDPは2023年、世界7位で約8.2万ドルだ。日本は34位で米国の半分以下で3.3万ドル。米国が比較優位論で海外に工場を造り、自ら安い商品を輸入し経済の効率化をス進めてきた。これを覆すことは「シャッター商店街やシャッター工場」を復活させることで非効率この上ない。

(今週はCPI。CPIナウは2.49%)
今週は3月消費者物価の発表、予想は前年比で2.6%の上昇、2月は2.8%。トランプ大統領はインフレ低下や原油下落を喜ぶかもしれないが代償は経済ショックだ。クリーブランド連銀のCPIナウは2.49%

*ユーロ「通貨2位(2位)、株価3位(3位)DAX)、通貨首位奪えず、利下げ観測高まる」
(ユーロは売られるも2位維持、株価は中国の報復関税で大幅下落)
3月は円と通貨首位争いをしていたが、米国の相互関税発表と中国の報復関税でリスク回避の動きが大きくなり、円に引き離された。リスク回避に強いスイスフランに追いつかれてきている。
ユーロは先週、対円で0.76%安で年初来では1.1%安で2位。対ドルでは先週1.24%高で、年初来では5.87%高。独DAX株価指数は先週は81%安と大きく下げ、年初来で3.68%高。独10年国債利回りは2.57%、年初は2.36%。

(米国との貿易関係は。マスク氏は関税ゼロ希望))
EUの米国相互関税は20%と10%グループからは高いのは対米黒字が大きいからだろう。黒字だけでなく取引量も多い。EUの対米輸出は全体の19.6%、輸入は13.8%で年間約1600億ドルの黒字がある。
対米赤字を出している英や豪の10%関税からは差をつけられた。ただマスク氏は一転、4月5日に将来的には欧米間は自由貿易で関税ゼロが望ましいと発言している。米国は不確実だ。

(米国翻弄されるEU)
米国からEUのNATO防衛費負担を求められEUは財政支出を拡大して応じた。ただそれが功を奏して軍需景気期待で金利が上昇、株価も上昇していたが、米国からの相互関税は20%とされ、かつ中国が報復関税を発表したためにリスク回避となりユーロと株価は下落している。

(EUの対応は)
米国から10%関税を賦課される国の対応は静かだがEUは不満が強い。欧州委員会のセフコビッチ委員)は、ラトニック米商務長官、グリア米通商代表部(USTR)代表と「率直な」協議を行い、米国の関税措置は不当であることを改めて訴えたと明らかにした。「米国の関税は有害であり、不当だ」と直言したと述べた。
また、「EUと米国の貿易関係には新たなアプローチが必要だ。EUは有意義な交渉に取り組む一方で、われわれの利益を守る用意もある」とし、双方が連絡を取り合っていると述べた。

(利下げ観測強まる)
ECBの利下げ期待が高まっている。米国の相互関税が経済成長に打撃となる一方、物価上昇への影響は緩やかなものになっていることもあり年末まで少なくとも3回の利下げが行われると見られている。これまでの見通しは2回だった。当局者からの明らかなサインはないものの、4月の政策委員会会合での金利引き下げに確信を強めている。
トランプ大統領による高関税が消費者物価を押し上げるより、景気拡大を損なう影響の方が大きいとの見方だ。ゴールドマンサックスは貿易を巡る打撃が成長やインフレへの下方リスクを伴うため、4月の会合での利下げは「とても可能性が高くなった」とした。

*ポンド「通貨4位(3位)、株価9位(9位)、英への相互関税は10%に留まるが、サプライチェーンが歪めば英国にも悪影響」
(英ポンド下落。対円では安いが、対ドルではまだ強い=年初来)
英ポンドも中国の対米報復関税の影響を受けて対円で下落、株価も大きく下落した

英ポンドは先週対円で2.44%下落し年初来3.82%安。対ドルでは先週0.45%下落し年初来2.97%高
 FT株価指数は先週6.97%下落し年初来1.44%安とマイナス圏へ。10年国債利回りは4.45%、年初は4.57%。

(今週は2月GDPの発表)
今週は2月GDPの発表、予想は前月比0.1%増。2月鉱工業生産は前月比0.1%増の予想。ただポンドはそれよりも関税戦争の流れに影響されよう。

(英利下げ観測強まる)
金利先物市場では、トランプ米大統領が相互関税を発表したことを受けて、英中銀の利下げ観測が強まった。 次回5月での利下げ確率は約77%に上昇した。英国に適用される関税率が最低限にとどまったが欧州の貿易相手国はより厳しい関税に直面することになり、その経済的な痛みの一部はサプライチェーンや共通市場を通じて間違いなく英企業に波及することになる。

(英国は米国の関税賦課に報復せず)
米国の相互関税で税率が10%となった国は即座に報復せず様子見している。豪やNZも同様だ。 レイノルズ・ビジネス貿易相は、米国が英国からの輸入品に10%の関税を上乗せすると発表したのを受け「影響を緩和するため経済協定の交渉に全力を尽くす」と述べた。報復措置には否定的な姿勢を示した。「米国は最も緊密な同盟国であり、我々は冷静さを保つ」と強調した。英国の対米貿易は英国の少額の貿易赤字、貿易総額は全体の10%程度。

*豪ドル「通貨11位(8位)、株価15位(15位)、中国の対米報復関税で豪ドル・豪株が大幅下落」
(中国の対米報復関税で豪ドルが急落)
米国が相互関税を発表したが、豪は直ちに報復をしないと表明していたが、中国が米国に報復関税を発動したことから、豪景気後退が懸念され豪ドル、豪株は下落。金利は低下した。
豪は中国貿易に依存、2023年で輸出は全体の36.6%、輸入は25.3%だ。一方対米輸出は3.8%、輸入は11.5%。対米は貿易赤字なのでトランプ流の「貿易赤字は悪だ」発言からは関税は除外される国だ。

(豪ドルは8位から11位へ後退)
豪ドルは前々週の8位から11位へ後退。年初来では対円で8.75%安、対ドルでは2.31%安。豪株(全普通株指数)は先週は4.24%下げて年初来6.8%安。10年国債は4.19%、年初は4.37%だった。
資源価格の下落も豪ドル売りを誘った。

(RBA政策金利据え置きもハト派的な姿勢を示す)
RBAは政策金利をを予想通り4.1%に据え置いた。見通しについて引き続き慎重だとした一方、追加利下げに慎重との文言は削除した。
米国の関税措置が世界経済の足かせになると予想される中、政策は国際情勢に対応できる適切な状況にあるとした。声明ではややハト派的な姿勢を示し、追加緩和に向けた一歩を踏み出した。

(2月小売売上は小幅増加)
2月の小売売上高は前月比0.2%増加。4年ぶりの利下げとインフレ鈍化が消費者心理と購買力を押し上げ、2カ月連続で小幅ながら増加した。 利下げとインフレ鈍化に加え、5月3日の総選挙に向け、与党が所得税減税と家計への支援拡大を約束していることも、見通しを明るくしている。

(今週はRBAブロック総裁講演)
今週はRBAブロック総裁講演、3月求人広告、4月ウエストパック消費者信頼感指数、3月NAB企業景況感指数、4月消費者インフレ期待指数、

(豪の米関税に対する対応)
アルバニージー首相はトランプ大統領は豪産牛肉の輸入禁止ではなく、全ての豪製品に10%関税を課した。なお、豪に輸入される米製品に関税は課されていない。
「トランプ政権の関税に論理的根拠はなく、両国のパートナーシップの根幹に反する。これは友好国の行為ではない」と述べた。 ただ、米国に相互関税を課せば豪国内の家計にとって物価が上昇するため、そうした措置は取らないと明言。「物価上昇と成長鈍化につながる底辺への競争には加わらない」とした。豪当局者は、インド太平洋諸国は米関税で最も大きな打撃を受けると述べ、首相はこうした状況が中国に有利に働く可能性があるとの見解を示した。

*NZドル「通貨8位(7位)、株価14位(17位)、今週は利下げか。中国の対米報復関税がNZ経済に影響するだろう」
(対米より対中貿易に依存するNZ)
豪ドル同様に中国の対米報復関税でNZドルは下落した。NZの貿易は対米より対中国に依存している。輸出の24.3%、輸入の19.8%が対中国。一方、対米は輸出は9.6%、輸入が10.1%だ。

(豪同様に米国に対して報復を求めない)
トランプ大統領がNZの対米輸出品に10%の関税を課したことを受け、マクレー貿易大臣は、「米国とは非常に建設的で前向きな関係を保っている」と述べた。 「我々は他国よりも悪い状況にあるわけではない。場合によっては、他国の方が関税率が高いこともある。これは慰めにはなりません。関税自体が価格を押し上げ、貿易に良くないからです。しかし、実際には米国との貿易関係が不均衡な国の一つとは見なされていないことは、皆さんもご存知だと思います」 「我々の貿易は非常に補完的です。米国の輸出業者はNZに入る際に平均約1.9%の関税に直面しています。NZの輸出業者は米国に入る際にこれよりわずかに高い関税に直面しています。関税は貿易にとって良くありませんが、輸出業者は米国市場にまだチャンスがあると私告げました」と語った。

(豪ドルほどではないが,NZドルも中国の報復関税で下落)
NZドルは先週7位から8位へ後退。先週は対円で4.07%下落し年初来6.57%安、対ドルでは年初来ほぼ変わらず。株価は先週は0.51%下げて年初来6.75%安。10年国債利回りは4.36%、年初は4.55%。

(今週は0.25%利下げか)
NZ中銀は4月9日に0.25%の利下げを行う見通し。米国の世界への関税賦課で経済が不確実な状況に陥っていることもある。昨年8月以降に計1.75%の利下げを実施して経済を支え続けた。その結果、2024年4Qにはようやく景気後退を抜け出した。
中銀は前会合で4月か5月に0.25%の利下げを想定し、物価上昇率は年内いっぱい目標圏(1-3%)に収まると予想していた。

今週はNZ経済研究所の企業信頼感指数の発表もある。

(引き続き経済指標は冴えない)
3月消費者信頼感指数が2月の96.6から93.2へ低下したことに続き、ANZの3月企業信頼感指数も2月の58.4から57.5へ低下