ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「過ちては改むるに憚ること勿れ。金融市場是正はトランプ大統領次第」

ドル円=141-146、ユーロ円=156-161、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨首位(首位)、株価18位(18位)、貿易統計、外貨投信に変調、一方的な円安にはなりにくい」
(通貨首位を明け渡し3位)
 先週は一気にスイス・フランとユーロに抜かれ首位から3位へ後退した。米国の二転三転する関税政策に嫌気をさした投資家が欧州を投資先に選んだのだろう。株価も下落し続ける日本よりも欧州市場が優れている。先週後半から米国の「相互関税」90日間一部停止や相互関税の対象からスマホなど電子機器を除外などの報道で今週初はリスク選好の場面もあるが後述する需給の観点からは一方向には進まないだろう。

(今週は消費者物価)
今週は3月消費者物価に注目、予想は前年比で3.7%上昇、コアは3.2%上昇。前月はそれぞれ3.7%、3.0%の上昇。
 最近の指標では4月短観では製造業の景況感の悪化、3月製造業・サービス業PMI、景気ウオッチャー指数、消費者態度指数などの悪化もあり、景気も底堅いとは言えない。日銀の舵取りも難しい。

(貿易統計に変調)
2月貿易統計は5905億円の黒字となった。前年同月は4154億円の赤字だった。3月は中旬までで822億円の黒字。今週は3月全体の貿易統計の発表がある。予想は4854億円の黒字。赤字月が多かった2022年から24年とは異なってきた。原油価格の下落が赤字の縮小、黒字化に繋がっている。日本は1981年から2010年迄30年連続貿易黒字で円高基調であったが、当時の原油価格は50ドル以下であった。
やはり円相場は輸入の22%を占める鉱産物、特に原油価格の影響が大きい。

(外貨投信にも少し変調)
 昨年は貿易赤字の縮小があったが円安を支えたのは28.5兆円増加した外貨投信であった。ただ今年は1月に90.3兆円にのせたものの、2月は3.55兆円減少、3月も1.47兆円減少と変調を示している。オルカンなどの外貨投信ブームの勢いが衰えている。

(政治家とドル円)
 昨日のNHKの報道番組では、自民党政調会長の小野寺氏が「円安は国内の生活費の上昇につながっており、日本は企業力を高めて円高対策を進めなければならない」、また立憲民主党の重徳議員も円安を批判していた。両氏とも物価高の要因は円安にありとしている。ただそれを推し進めると、企業収益の減少、税収減少にも繋がる。単純に円高に持っていくと弊害は大きい。

*米ドル「通貨10位(9位)、株価(NYダウ)14位(17位)、何故関税か? 過ちては改むるに憚ること勿れ。金融市場是正はトランプ大統領次第」
(トランプ大統領が関税にこだわる理由)
トランプ政権が関税政策を重視する理由は、財政政策を実施する上で重要な財源になるからだ。公約を実施するには、今後10年間で約7兆~16兆ドルの追加的な財政負担が必要になる。その中で安定財源として最大のシェアを占めるのが、関税引き上げ。特に重要性が高いと考えられる政策(例えば、トランプ減税の延長)を担保するためには、可能な限り安定した財源を模索していく必要がある。その観点から、関税収入は、トランプ氏にとって魅力的な財源。関税は、議会での債務上限交渉によって決まる国債発行とは異なり、大統領権限によって制御可能な面があるからだ(ジェトロ)

(さて次の変更は?関税紆余曲折、実施延期に免除)
①2月4日からカナダ・メキシコ産品に対しての25%の関税、中国産品に対しての10%の追加関税を課すとする大統領令(2/1)
②カナダ・メキシコに対する追加関税を3月4日まで延期する大統領令を発令(2/4)
③相互関税を4月2日に発動へ(3/5)
④ 相互関税日本に24% 一律10%関税(4/3)他国に対しても
⑤「相互関税」90日間一部停止を表明 対中国は125% 4/10
⑥ 相互関税の対象からスマホなど電子機器を除外 4/12
⑦ さて、次の変更は?

(関税ショックは続くが、一部修正もあり)
 トランプ関税ショックでドル、米株、債券が売られている。ドルは年初来12位、ダウは5.48%安、ナスダックは13.19%安、S&Pは8.81%安(日経は15.81%安)。10年国債利回りは4.494%。
ただ週末に「相互関税の対象からスマホなど電子機器を除外」との公表があり、中東市場で、ドルや米株は反発している。

(景気減速で物価低下は評価できない)
先週も4月ミシガン大消費者態度指数や3月ビジネス楽観指数が弱く、3月消費者・生産者物価が低下した。1Q・GDPナウはマイナス2.4%。物価低下はトランプ大統領の望むところだが、それが景気減速によるものだとしたら評価は出来ない。悪い材料はバイデン政権のせいとするのがトランプ政権の常道だが、いつまでもそれを続けることは出来ない

(今週はパウエルFRB議長発言あり)
今週は何と言ってもパウエルFRB議長の発言が注目される。トランプ大統領は常々FRBに利下げを求めているが、金利上昇の要因はトランプ大統領の関税政策だ。そこをパウエル議長がどう取りまとめるか。その他、小売売上 鉱工業生産などにも注目したい。

*ユーロ「通貨2位(2位)、株価5位(3位)DAX)、ユーロの上昇はドルの信認低下、対ドルで10%近く上昇(年初来)」
(ユーロの上昇はドルの信認低下)
 ビルロワドガロー仏中銀総裁は、ここ数週間のトランプ米大統領の政策を受けてドルの信認が低下していると述べた。

 トランプ政権の保護主義と予測不可能性は米経済にとって「悪い要素」だとの認識も示した。相互関税について、国・地域ごとに設定した上乗せ部分を90日間停止する一方、中国に対する追加関税を125%に引き上げた。 総裁は「過去数十年の米国の政策で一環している大きな要素は、ドルの中心的役割に対する執着だ。トランプ政権もそうした考えを持っていると思うが、それを実行する方法は非常に一貫性が欠ける。最近数週間の出来事はドルの信認への逆風となっている」と述べた。

 これがユーロの国際的な役割の発展にプラスになる可能性があるとし「欧州が25年前にユーロを創設したことに感謝する。われわれは自分たちの通貨の自律性を作り出し、米国とは異なる方法で金利を管理できる。以前はそうではなかった」と述べた。

(ユーロは円を抜いたが、スイスに抜かれ2位を維持)
 ユーロは円を抜いたが、同時にリスク回避に強いスイスフランに抜かれ首位にはなれず2位のままだ。関税騒動での世界同時株下げで欧州株も大きく下落したが、独DAXは年初来2.34%高。10年国債利回りは2.53%で4月は若干低下、関税騒動で売られる米国債に代わって欧州債券に資金が流入しているのだろう

(ECBは今週利下げか)
 今週のECB理事会では0.25%利下げが予想されている。ECBは常に行動の準備ができており、必要に応じて新しい手段を立案してきた確かな実績があると指摘。 調査は、トランプ米大統領が「相互関税」の一部を90日間停止することや、携帯電話や半導体を免税とすると発表する前に実施。
 ユーロが年初からドルに対して10%近く上昇していることも、ユーロ圏のインフレ押し下げ圧力となり、追加利下げ余地をもたらす。米国の関税がユーロ圏の企業景況感にマイナスの影響を及ぼしている。
新たな関税の水準でも、数カ月前に比べて欧州の貿易環境が大幅に悪化することに変わりはない。
 ただトランプ氏の貿易政策が二転三転しているため、今後の予想が難しくなっている。

(為替動向には注意を払う、ラガルド総裁)
 ラガルドECB総裁は、世界的な混乱にもかかわらずユーロ圏金融市場は機能しているとし、必要に応じて金融安定維持へ金融手段を展開する用意があるとの見解を示した。
「欧州、特にユーロ圏では、市場インフラと債券市場が秩序だって機能している」と述べた。ドルが全面安となったが、ラガルド総裁はECBは特定の為替レートを目標とはしていないが、インフレに影響するほか経済モデルに組み込む必要があるため、為替動向には注意を払っていると語った。

*ポンド「通貨4位(4位)、株価7位(9位)、2月GDP改善と関税騒動によるドル安でポンドは4位維持、ただユーロに追いつけず)
(首位だった円をユーロとスイスは抜いたがポンドは追いつけず4位)
 先週、スイスフランとユーロドルは年初から首位を維持してきた円を抜いたが、同じ欧州のポンドは抜けず4位に留まっている。
株価指数も独DAXは関税騒動でもかろうじてプラス圏を保っているが英FTは年初来で2.56%安となった。

(英中銀の利下げに対する市場の見方が後退)
短期金融市場が今年の利下げ幅に対する期待を大幅に引き下げたため、英国国債の損失が拡大し、短期国債が下落を主導した。英国2年国債利回りは0.15%上昇し4.05%となった。 10年債利回りは0.11%上昇し4.75%となった。金融市場では現在、今年、政策金利を0.75%引き下げると予想されているが、これは木曜の引け時点での予想より約0.15%低い。2月GDPの改善があった。
 一方、関税をめぐる懸念が高まり、米国の短期・長期インフレ期待の指標が数十年ぶりの高水準に急上昇する中、短期金融市場ではFRBがどの程度金利を引き下げるかに対する賭けも縮小している。

(2月GDPは予想上回る)
 2月のGDPは前月比0.5%増加し、予想の0.1%増を大きく上回り、2024年3月以来の高い伸びとなった。前年同月比では1.4%増で、こちらも予想の0.9%増を上回った。
サービス業の生産高は前月比0.3%増。1月は0.1%増だった。一方、製造業の生産高は2.2%増と大幅に拡大。電子機器や医薬品、自動車が伸びた。 予算責任局(OBR)は先月、今年の成長率見通しを1.0%に半減させたが、来年は1.9%を見込んでいる。

 2月鉱工業生産は前年比0.1%増で前月の0.5%減少から改善した。

(今週は3月雇用統計と消費者物価)
今週は3月雇用統計と消費者物価に注目したい。失業率予想は4.4%(前月は4.4%)、ボーナスを含む賃金は前年比で5.7%増(前月は5.8%増)。3月消費者物価は前年比2.7%上昇の予想(前月は2.8%上昇)、コアは3.4%上昇(前月は3.5%上昇)。

*豪ドル「通貨8位(11位)、株価15位(15位)、米国の関税、国内景気低迷の中で選挙戦へ」
(豪ドルは関税政策で一喜一憂、ただ経済指標はやや弱い)
 トランプ大統領の関税政策で一喜一憂、先週は3か月延期相互関税適用で対円で1.71%高、先々週は関税賦課で5.78%安。豪の最大貿易相手国の中国は米国と関税問題で敵対しているのでより変動が増幅される。豪全普通株指数は年初来6.73%安、10年国国債利回りは4.48%。

(先週の指標は弱かった)
 4月消費者インフレ期待指数は4.2%(前月は3.6%)、3月NAB企業景況感指数はマイナス3(前月はマイナス2)、4月ウエストパック消費者信頼感指数は90.1(前月は95.9)、3月求人広告は前月比0.4%増(前月は13%減)でやや弱いものが多かった。

(今週は雇用統計)
今週はRBA議事要旨の公表と、3月雇用統計の発表がある。失業率は4.2%の予想(前月は4.1%)、新規雇用者数は4万人増の予想(前月は5.28万人の減少)

(RBAブロック総裁は慎重)
 RBAブロック総裁は、金利の道筋を決めるのは時期尚早だと述べた。米通商政策の影響を忍耐強く見極める必要があるとしている。市場や経済が不安定な局面に入ると警鐘を鳴らしたが、国内金融システムは海外からのショックを十分吸収できる状態にあるとの認識を示した。「市場が動く要素がたくさんある。物価の安定と完全雇用という2つの使命を引き続き重視している」と述べた。

(総選挙は)
 5月3日の総選挙では景気停滞に見舞われる状況にあって、生計費上昇や住宅危機を巡る有権者の懸念が焦点となり、接戦が見込まれる。
政府は既に発表した25年度予算案で総額171億豪ドルの追加の所得減税を発表。住宅不足で住居や賃料が上昇し、家を持つのが難しくなっている。政府は対策として、4月から2年間、外国人が既存住宅を購入するのを禁止する方針を掲げる。
野党・保守連合(自由党と国民党)は、高止まりするエネルギー価格の引き下げのため、中期的に国内のガス産業の発展を促進し、人口の集中する東部で国内のガス供給を優先する方針を示した。長期では豪初の原子力発電の導入を目指すとした。
 オーストラリアン紙の3月23日の世論調査では、支持率は保守連合が39%、労働党31%、緑の党12%などとなっている。労働党、保守連合の2大政党への不信感が根強く、どちらも単独で過半数を獲得できるかが不透明だ。

*NZドル「通貨5位(5位)、株価16位(16位)、企業信頼感が改善でNZドル小幅高。中銀は予想通り利下げ。今週は消費者物価」
(NZドルは中位、株が安い。10年国債利回りは先進国最高の4.8%)
 通貨は5位と中位、豪ドルよりも強い。ただNZ50株価指数は16位(8.33%安)と冴えない。10年国債利回りは4.8%と先進国では一番高い。企業信頼感の改善がNZドルを支えた。
米国への輸出に課される関税が10%のNZは、自国通貨安により影響の大半が相殺されることから比較的健闘すると予想されているが、貿易相手国の景気低迷による打撃を受けるだろうとも指摘されている。

(企業信頼感が改善)
 経済研究所(NZIER)の1Q企業信頼感は前期から改善した。多くの企業で活動低迷が続いている状況を踏まえると予想外という。 業況全般が「改善する」と回答した企業から「悪化する」と回答した企業を引いた割合は19%で、前期の16%から改善した。ただNZIERは「今後の状況改善には期待があるが、企業はなお雇用と投資に慎重」と指摘した。

(政策金利は5会合連続の利下げ) 
NZ中銀は政策金利を0.25%引き下げ、3.5%とした。低迷する経済の回復を支援し、関税による影響を和らげる。経済が需要低迷や貿易障壁による逆風に直面する中、追加利下げの用意があることを示唆した。
昨年8月以降、政策金利を計2.0%引き下げている。
金融政策委員会は「関税政策の範囲と効果が明らかになるにつれて、委員会は必要に応じて政策金利をさらに引き下げる余地がある」とした。声明は、消費者物価上昇率がインフレターゲット(1-3%)の中間に近いため、委員会は情勢に対応する上で最善のポジションにあるとしている。市場は5月の追加利下げを織り込んでいる。

(今週は消費者物価の発表)
今週は3月PMI、貿易収支、消費者物価の発表がある。1Q消費者物価の予想は前年比で2.3%上昇。前期は2.2%の上昇であった。

(国防費増額は金利押上げ要因)
 政府は国防費を今後4年間で90億NZドル増額する方針を示した。GDPに対する比率を現在1%強から今後8年で2%に引き上げることを目指す。