ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)


総括

FX「関税交渉進展で日米欧金融当局の姿勢は変わるか?」

ドル円=145-150、ユーロ円=171-176、ユーロドル=1.15-1.20

「日欧が米関税合意!!!」

 日本に続きトランプ大統領は、EUに対して関税を15%にすることで合意した。
EUは米国から7500億ドルのエネルギーを購入することや米国に新たに6000億ドル投資を行うことなどを約束。
 トランプ大統領は「EUのすべての国が米国への関税をゼロにして貿易を開放することで合意した」と述べたうえで「これは過去最大の取り引きだと思う」と評価した。
 (これで不確実性は軽減されたが、世界経済に良い方向へ向かうかは不透明だ)

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨6位(7位)、株価16位(18位)、関税交渉進展でリスク選好の円安株高、日銀は先行きの利上げ狙いか」
(日経平均の4万円のせで円も安い)
 7月の円はここまで最下位と安い。4月末は年初来トップであったが、その後じり貧、現在は6位。日経平均は日米関税交渉の進展で再び4万円のせ、年初来3.91%高の16位。10年国債利回りは1.605%。

(日銀は政策金利を据え置きか)
 日米関税交渉が合意に至ったものの、新たな関税の水準は依然高く経済への影響を見極めるのに時間が必要で、今週は日銀が政策金利を据え置く見方が強い。ただ日米合意は日本企業にとって不確実性の低下につながり、2%物価目標の実現確度を高めると日銀はみている。日銀の追加利上げは年内に行われる可能性があるとの見方が、足元で約8割に上昇している。
経済・物価見通しは、関税に関する前提が想定内に収まる中で、全体的な経済成長率の見方を大きく変える必要はないという。コメなど食料品を中心に日銀の見通しよりも強めで推移している消費者物価について、2025年度は上方修正が見込まれている。

(内田日銀副総裁は)
日銀の内田副総裁は、各国の通商政策やその影響を巡る不確実性が「極めて大きい」との認識を示した上で、こうした局面での金融政策は経済・物価の安定の観点から「上振れ・下振れ双方向のリスクに対して最も中立的な立ち位置に調整していく必要がある」と述べた。
内田副総裁は、日銀が描く経済・物価のメインシナリオが実現していけば「経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」として、利上げの継続方針を示す一方で、その見通しが実現していくか予断を持たずに判断していくと述べた。

(外貨投信と貿易需給)
 5月、6月と急増した外貨投信の円売りが続くか。また原油価格次第で変わる貿易収支動向も見極めていきたい。

(基調インフレは伸び率低下)
 6月の基調的なインフレ率を捕捉するための3指標は揃ってプラス幅が縮小した。政府の定額補助でガソリン価格が下落に転じるなど、エネルギー価格の伸びが鈍化した。
「刈込平均値」は前年比プラス2.3%「加重中央値」はプラス1.4%で、「最頻値」はプラス1.4%。

(7月PMI、製造業悪化、サービス業改善)
 以下の通り、製造業悪化、サービス業改善となった

製造業 48.8(前月50.1)
サービス業 53.5(同51.7)
総合51.5 (同51.5)

*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)14位(15位)、関税交渉進展でパウエル議長の姿勢は変わるか?」
(ドルは今月は2位、年間では11位)
 トランプ大統領は強硬だが、裏を返せば他国に救いを求める米国が弱いということだ。
ドルは今月はやや強く月間2位、ただ年初来で11位は変わらず。株価3指数はいずれもプラス圏を回復しているが10%以下で、30%を超えるトップグループとに大きく引き離されている。
10年国債利回りは4.39%。関税交渉を巡るトランプ大統領の発言は市場を躍動させるが、中期トレンドは貿易需給とインフレ動向であろう。次第に具体化していく。

(トランプ大統領、久々にドルを語る)
トランプ大統領は、自分が弱いドルを支持することは絶対にないと述べつつ、特に製造業におけるドル安の経済的利点を挙げ、為替政策に関して相反するメッセージを送った。
大統領はドル下落を懸念しているかとの質問に対し、「夜も眠れないというほどではない。そう言っておこう」と続けた。

(FOMC)
 今週のFOMCで金利を据え置くとの見方が大勢のなか、市場では年内利下げの手掛かりを得ようとパウエル議長の発言に注目が集まる。かねてからパウエル議長は関税の不確実性を政策様子見の要因としていた。関税交渉が進展した後の議長発言も重要だ。

(今週はGDP、雇用)
2Q・GDP予想は前期比年率で2.4%増、1Qは0.5%減少。7月失業率は4.2%の予想、6月は4.1%。NFPは11万人増の予想、6月は14.7万人増

(サービス業改善、製造業悪化、7月PMI)
7月の米総合PMIは54.6と、前月の52.9から上昇し、昨年12月以来の高水準となった。ただ、企業は財やサービスの値上げに動いており、関税の影響でインフレが下半期に加速するとの見方を裏付ける内容となった。サービス業PMIは55.2と、前月の52.9から大きく上昇し、全体の改善をけん引。製造業は49.5と、前月の52.9から悪化し、昨年12月以来初めての縮小となった。

*ユーロ「通貨2位(2位)、株価4位(3位)DAX)、9週連続でユーロ円週足陽線、対米関税交渉進展」
(ユーロ円9週連続で週足陽線。米からユーロへのシフトは続いている)
ユーロ円9週連続で週足陽線を達成。7月は対ドルで若干弱いが円がさらに弱い。欧州の株価は強く、独DAXが年初来21.72%高。独10年国債利回りは2.72%。

(米・EU関税交渉前進)
 日本に続きトランプ大統領は、EUに対して関税を15%にすることで合意した。
EUは米国から7500億ドルのエネルギーを購入することや米国に新たに6000億ドル投資を行うことなどを約束。
 トランプ大統領は「EUのすべての国がアメリカへの関税をゼロにして貿易を開放することで合意した」と述べたうえで「これは過去最大の取り引きだと思う」と評価した。
 (これで不確実性は軽減されたが、世界経済に良い方向へ向かうかは不透明だ)
またEU内でも、貿易委員長は「今回の関税合意は欧州の利益を損なう」としており、今後も紆余曲折があろう。

(ECB、8会合ぶり利下げ見送り)
 ECBは8会合ぶりに利下げを見送った。米政権との関税交渉が続き、不確実性が根強い中、様子見姿勢を取った。
ラガルドECB総裁が域内の経済情勢に明るい見方を示したことで、追加利下げ観測は後退した。
総裁は、「中期的にインフレ率が目標水準で安定することが示されており、良い状況にある」と語った。

(ユーロ圏総合PMI上昇、独IFOも改善)
 7月のユーロ圏総合PMIは51.0で6月の50.6から上昇し11カ月ぶりの高水準となった。サービス部門の活動が拡大し、製造業も回復を示した。
独IFOの7月の業況指数は88.6と、前月の88.4から上昇、昨年6月以来の高水準となった

(今週は注目のGDPと消費者物価)
 今週は2Q・GDPと7月消費者物価の発表に注目したい。GDPは前年比で1Qの1.5%から1.2%へ減速する予想。消費者物価は6月と同じく2.3%の予想。

*ポンド「通貨4位(4位)、株価7位(9位)、8月と11月に利下げか」
(対ドルで弱いが、円がさらに弱い7月)
 対ドルで弱いが対円で強い7月。年間でポンドは5位、FT株価指数は年初来11.59%高、10年国債利回りは4.63%で先進国では一番高い。

(8月と11月に利下げか)
英経済は今年と来年に緩やかで安定した成長を続け、インフレ率が今後数カ月間物価目標を上回る水準にとどまるにもかかわらず、英中銀は8月と11月にそれぞれ利下げを実施する見通しだ。

(ディスインフレ見通しも根強い)
英経済は年初から力強く始まった後に勢いを失い、GDPが4月と5月に縮小した。 英国はトランプ米大統領の下で米国と貿易協定を結んだ最初の主要経済国で、このために経済の一部が保護されている。EUを含めた他の多くの国々は依然として、今週の交渉期限を前に米政府と交渉中だ。
インフレ率が3Qに4%に近づくと予想するが、その後は価格圧力が弱まり始めるとみており、アジアから英国や欧州に貿易ダンピングの産品が流れ込めば、今後のデフレ要因となる可能性があるだろう。

(PMIは低下)
 7月の総合PMIは51.0で、6月の52.0から予想以上に低下した。雇用の削減ペースが加速した。需要が低迷する中での人件費高騰が雇用減少につながった。

(英製造業、安定化も見通しはなお脆弱)
英産業連盟(CBI)調査で、英国の製造業は下降後に安定したとみられるものの、工場の投資控えや雇用の再削減などから見通しはなお脆弱であることが分かった。
英製造業の状況は依然厳しく、需要が低迷し、予測が不能と多くの企業が報告している」とし、「投入コスト上昇、労働力不足、世界的なサプライチェーンの混乱で、利益率と生産能力が継続的に圧迫されている」とした。

(IMFの見通しは)
 IMFは、高い家計貯蓄率と世界的な貿易摩擦が英国経済の成長を阻害する可能性があると警告した。IMFは声明を発表し、「経済成長は依然として下振れリスクに直面している。予想以上にタイトな金融環境と家計の予備的貯蓄の増加が相まって、民間消費の回復を抑制し、景気回復を鈍化させる可能性がある。世界的な貿易不確実性の持続は、世界経済活動を弱体化させ、サプライチェーンを混乱させ、民間投資を抑制することで、英国経済に圧力をかける可能性がある。また、商品価格の急騰はインフレ圧力を悪化させる可能性がある」と述べた。

*豪ドル「通貨8位(8位)、株価12位(11位)、経済指標マチマチ、関税待ち」
(マチマチの経済指標)
  予想外の据え置きで上昇、その後は雇用悪化、PMI改善とマチマチの経済指標となっている。米国の具体的な対豪関税はまだ発表されず様子見の部分もある。週間、月間では4位と持ち直してきた。年間では現在8位。全普通株株価指数は6.1%高。10年国債利回りは4.36%

(RBA、急速な利下げに慎重) 
RBAは政策金利を予想外に据え置いた7月の理事会の議事要旨で、4会合で3回目となる利下げを実施すれば慎重かつ段階的に金融緩和を進める戦略に合致しないと判断したことを明らかにした。
議事要旨によると、理事会参加者9人の過半数が3.85%の政策金利は依然としてやや引き締め的だと判断したが、中立水準に達する前にどの程度の引き下げが可能か見極めるのは困難とした。
参加者は「必要な政策引き締めの程度が弱まるにつれて、金利を慎重に引き下げることが賢明な可能性がある」との見方を示したという。

(新たな月次CPI公表)
 統計局は、11月から公表を開始する新たな月次消費者物価指数(CPI)の詳細を明らかにした。 現行の四半期CPIではインフレのリアルタイムな動向を把握することが難しいと指摘してきたRBAにとって、大きな安心材料となる見通しだ。 従来の月次CPIは四半期CPIに含まれる品目の一部しかカバーしておらず、変動も大きかった。

(7月PMIは強い)
7月の各種PMIは製造業が51.6(前月50.6)、サービス業が53.8(51.8)、総合が53.6(51.6)といずれも強かった

*NZドル「通貨4位(6位)、株価19位(19位)、米関税の影響はまだ不透明でパーキングカレンシーとして買われている一面あり」
(NZドルは年初来4位)
 NZドルは対円で年初来4位と強い、米国関税の影響はまだ不透明で高金利を背景にパーキングカレンシーとして買われている一面あり。
一方、株価は年初来1.96%安の最下位と冴えない。10年国債利回りは4.62%と先進国ではトップレベル。

(中銀米、関税でインフレ緩和・支出抑制)
 NZ中銀チーフエコノミスト、コンウェイ氏は、米国の関税について、全体的な影響はまだ不透明だが、国内の中期的なインフレ圧力の緩和や企業投資・家計支出の抑制につながる可能性があると述べた。
各国の対米輸出品が他国に振り向けられ、輸入物価の下落を通じて国内のインフレ圧力が緩和する可能性があると指摘した。
「現時点では様子見姿勢が非常に目立つが、中期的なインフレ圧力が予想通り緩和すれば、追加利下げ余地があると引き続き考えている」と述べた。
また2Qの経済成長率は鈍化しているとも指摘。米国では関税でインフレ圧力が高まる可能性があるが、NZでは世界経済の成長鈍化で外需が減少するリスクがあると語った。
「総合的に見ると、こうした動向は2026年半ばにかけて経済の回復鈍化につながる見通しだ」と述べた。

(2Qの消費者物価は2.7%上昇)
2Qの消費者物価上昇率は前年同期比2.7%と、1Qの2.5%から加速し、1年ぶりの高水準となったものの、予想の2.8%を下回った。インフレ率加速は、地方税と住宅賃貸価格の上昇が要因。
中銀は5月、2Qの上昇率が2.6%になると予想していた。今月の会合では目先の物価上昇リスクなどを踏まえ、政策金利を据え置いた。据え置きは昨年8月の利下げサイクル開始以来初めてだった。
世界経済の見通しが弱まり、余剰生産能力の規模が大きいことから中期的なインフレ見通しは低下する見込みであり、中銀は短期的なインフレ上昇を許容、もしくは無視するとの見方がある

(中国ビジネスサミット2025)
 オークランドで、中国ビジネスサミット2025が開催された。ラクソン首相は基調講演で、NZと中国の二国間貿易は急速に発展しており、輸出の20%以上が中国向けであり、中国市場はNZに継続的なチャンスをもたらしていると述べた。NZ駐在の王小龍中国大使は、中国とニュージーランドの包括的戦略パートナーシップが20年目を迎えるにあたり、中国はNZ緊密に協力し、両国首脳の合意を実行に移し、二国間関係を新たなレベルに引き上げ、両国民にさらなる利益をもたらし、混乱する世界にさらなる安定と確実性をもたらしたいと述べた。