この記事は2025年10月17日に「CAR and DRIVER」で公開された「【カーデザインを語ろう】カウンタックはランボルギーニの象徴であり永遠の傑作。圧倒的な存在感で世界中のファンを魅了した」を一部編集し、転載したものです。
メカニズムの必然で奇跡のデザインが完成
ランボルギーニ・カウンタック(本国ではクンタッチと呼ぶ)は、千葉匠氏が「このクルマがなかったら、スーパーカーブームはなかった」と語る鮮烈な存在。1971年のジュネーブショーにプロトタイプのLP500を発表。その後、熟成を重ね市販型LP400が1974年にデビューする。スタイリングを手がけたのは、カロッツェリア・ベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニ。まさに鬼才による奇跡のデザインである。シャープで他に類例のない造形は、永遠の傑作と呼ぶにふさわしい。
カウンタックのスタイリングは必然によって生まれた。カウンタックを生み出したもう一人の重要人物はエンジニアのパオロ・スタンツァーニ。彼のアイデアがなければガンディーニの奇跡のデザインは生まれなかった。
1960年代末にジャンパオロ・ダラーラの跡を継いでランボルギーニ開発部門の陣頭指揮を取ることとなったスタンツァーニは、12気筒エンジンを横置きミッド配置したミウラに代わるフラッグシップモデルの開発に取り組んだ。彼はエンジン縦置きにこだわっていた。重心が低くなり、走行性能が圧倒的に向上するからだ。けれども通常の縦置きではミッションケース本体がリアアクスルから後方へ大きく張り出してしまう。V8ユニットならまだしもV12では全長的にもトランクスペース的にも成立は難しい。だがランボルギーニにとって12気筒は宝だった。そこでパワートレーンごと「ひっくり返す」という奇策を思いつく。キャビン側にトランスミッションを組み合わせることで巨大な12気筒エンジンを縦置きミッド配置とする発想である。この時点で既に将来の4WD化も見据えていたという。
カウンタックの室内にはミッションケースの出っ張りがあり、大きなエンジンはリアアクスルの前にきっちりと収まる。そしてF1マシンのようにサイドラジエター方式を採用。ガンディーニはスタンツァーニの奇策、LPレイアウト(イタリア語でエンジン縦置きミッドシップを意味するLongitudibale posterioreの略)をベースにオリジナルデザインを描く。乗員2名用の十分なキャビンスペースを確保したそのスタイルは当然、短くそして平べったい。カウンタックの象徴というべきシザーズドアもまた、「そうでなければ乗り降りできない」という必然から生まれた。
ランボルギーニはフラッグシップのレヴエルトはもちろん、V8を積むテメラリオも、いまなおカウンタックの鮮烈なイメージを踏襲している。レヴエルトもテメラリオもPHEVに進化したが、その「熱い思い」はかつてのカウンタック時代と同様なのだ。
(提供:CAR and DRIVER)