人材会社向けの「送客サービス」というニッチな領域で急成長を遂げるライフワンズメディア株式会社は、親会社のライフワンズ株式会社からメディア部門がスピンオフする形で創業。Webマーケティング力を武器に、初期は介護・保育領域に特化した人材会社の集客を支えてきた。その成長をさらに加速させたのが、2017年に参画し、後に代表取締役に就任した中村幸平氏だ。
IT業界の雄・オービックで12年間培った大手法人営業のノウハウを武器に、同社を新たなステージへと導いた。中村氏が目指すのは、個別の事業の成功ではない。「最強のビジネスマン集団を作ること」だと語る。
目次
親会社からスピンオフ。ナンバー2としての参画から代表就任へ
── ライフワンズメディアの成り立ちから教えてください。
中村氏(以下、敬称略) もともとは、親会社であるライフワンズ株式会社が医療・介護領域に特化した人材紹介事業を手がけていました。その中で、リスティング広告をはじめとするWebマーケティングのノウハウを駆使し、自社で求職者を集めることにこだわってきた歴史があります。
結果として、他社が求職者の集客に苦戦する中で、ライフワンズでは圧倒的な数の求職者を集められるようになりました。その集客力を他の人材会社にも役立てようと、2016年2月に親会社内で人材会社向けの「送客ビジネス」を開始したのが事業の源流です。
その事業を切り出す形で、2017年3月にライフワンズメディア株式会社(当時の社名はライフワン株式会社)が設立されました。私はその翌月に営業責任者として参画しました。
── どのような経緯で参画されたのでしょうか。
中村 実は、前任の代表が中学・高校の同級生で、彼からの誘いを受けたのがきっかけです。
私は新卒で入社したオービックに12年間勤めていましたが、彼の誘いを受け、スタートアップ企業のナンバー2として挑戦することを決意しました。そこから約4年後の2021年夏、コロナ禍のタイミングで彼が親会社に戻ることになり、私が代表の任を引き継ぐことになった、というのがこれまでの経緯です。
急成長のエンジンは「マーケティング力×超営業力」の両輪
── 創業当初は、前年比200%以上という驚異的なスピードで成長されたそうですね。
中村 はい。当社の強みは、「マーケティング力」と「超営業力」という2つの力が両輪で機能している点に尽きます。
まずマーケティング力に関しては、親会社の時代から、医療福祉の人材領域においていち早くWeb集客のノウハウを蓄積してきたことが大きいですね。Googleのリスティング広告やSNS広告、ランディングページの最適化など、他社があまり着手していなかった領域に早期から取り組み、優位性を築くことができました。
事業の拡大とともに広告に投下できる資金も増え、ひと月あたり数千万円単位での運用が可能になったことで、さらにノウハウが蓄積されるという好循環が生まれています。
── もう一方の「超営業力」についてはいかがですか?
中村 手前味噌ですが、まさにそこが私の果たした役割だと自負しています。私が前職で叩き込まれた大手企業に入り込んで信頼を勝ち取る営業ノウハウが加わったことで、事業は一気に拡大フェーズに入りました。
それこそ、当社広告サービス「リスジョブ」をご利用いただいている人材会社には、誰もが知っているような人材大手企業のM社、P社、D社等が有り、医療福祉領域におけるトッププレーヤー企業のS社、T社、L社等も長く継続的にご利用いただいております。
このマーケティング力と超営業力、双方のパワーが噛み合ったことで、他社にはない推進力を生み出せていることが最大の強みだと考えています。
サービスの根幹は「人」。模倣を許さない組織文化の作り方
── 経営者として大切にしていることは何ですか?
中村 「人ありき」という考え方です。これも前職の影響が大きいのですが、「人は石垣~」という言葉があるように、事業や会社を本当に支えているのは、サービスや仕組みではなく「人」であると確信しています。変化の激しい現代において、どんなに革新的なサービスや仕組みを構築しても、すぐに模倣されて陳腐化してしまう。
しかし、優秀なビジネスマンの集団が手掛けていれば、たとえ同じことをやっていても絶対に負けない。そう考えています。
実際に、この8年間で当社のサービスを模倣した競合はいくつも現れました。それでも我々が勝ち続けてこられたのは、営業をはじめとする「人」の力があったからです。
だからこそ、爆発的な拡大ではなく、まずはしっかりと人を育て、優秀な人で強い組織を形成し、強固な組織が事業を支えていく、というサイクルを何よりも大切にしています。
── 「人」の力を高めるために、どのような取り組みをしていますか?
中村 泥臭いことの繰り返しです。私がこれまでに20年以上にわたり培ってきた営業ノウハウは、簡単に言語化して伝えられるものではありません。だからこそ、私自身も今でもメンバーの商談に同席しますし、マネジメント層のメンバーも同様に現場に深く関わります。
特徴的なのは、営業メンバー全員のアポイントの内容を、毎日全員で一緒に振り返る会を設けていることでしょうか。まだ十数名という規模だからできることでもありますが、日々の商談から得られた学びや気づきを即座にチーム全体に共有し、蓄積していく。この地道な学びの継続が、組織全体の力を底上げしているのだと思います。
── 主力サービスである「リスジョブ」の仕組みと強みを教えてください。
中村 「リスジョブ」は、人材会社が効率的に求職者を集めるための送客サービスです。一般的な求人サイトのように具体的な求人内容を掲載する機能もありますが、それはもはや人材会社の集客において主流ではありません。
メインは「人材会社一括登録サービス」です。これは、引っ越しの一括見積もりサイトをイメージしていただくと分かりやすいです。求職者が最大3社の人材会社に一括で纏めて登録できる仕組みです。登録情報を受け取った各社は、一斉にその求職者へアプローチを始めます。早い者勝ちの世界です。
我々はこの仕組みによって、1件の応募に対して最大3社からフィーをいただきます。そのため、人材会社が自社で広告運用を行うよりも安価で効率的に多くの求職者情報を集められます。
自社内にマーケティング部門をもたないスタートアップ企業は勿論、自社だけでは必要なボリュームの集客をしきれない大手企業にとっても、非常に価値が高く、重宝いただいています。
── 人材業界というレッドオーシャンの中で、競争優位性についてはどう考えていますか?
中村 近年、医療福祉の人材領域では営業力が高いトッププレーヤーが大手企業から独立するケースが激増しており、人材会社が乱立すると共に、競争激化による淘汰も進んでいます。
しかし、当社サービス「リスジョブ」は、その中でも勝ち続けている強い人材会社にこそ支持されるビジネスモデルです。我々のサービスを使いこなし、成果を出せるのは、結局のところ営業力のある会社。そうした力のある会社と強固なパートナーシップを築けていることが、当社の事業成長にもつながっており、顧客と成長を共にしています。
現在は医療福祉領域が中心ではあるものの、それ以外にも飲食、教育、美容、ドライバーなど、エッセンシャルワーカー領域に留まらず実績は着実に積み上がっています。まだまだ開拓の余地は大きく、今後もシェアを拡大していけると確信しています。
「最強のビジネスマン集団」が拓く未来。事業へのこだわりは”ない”
──今後の事業展開についてはいかがでしょう。
中村 やりたいこと、やれることは無限にあります。先ずはリスジョブの職種領域拡大ですが、ニーズが高まっている施工管理や整備士、ITエンジニア、営業職といった分野への展開を見据えています。
新規事業で言うと、直ぐに始めやすいのは人材紹介事業。親会社とは別領域で、リスジョブで集めた求職者の中で人材会社に送客しきれない求職者を自社で対応していく、というやり方であればリスジョブのご利用企業にも影響は無く、寧ろ利益を還元する動きにも繋げられます。
また、介護施設や病院といった求人企業向けにもサービス展開は可能で、更にその先には求人企業と人材会社をマッチングするサービスも付加することができます。
人材や求人とは全く別軸で事業を展開することも視野に入れています。そもそも当社サービスの現在の仕組みは、汎用的に言えばWebマーケティングで見込み顧客を集め、営業力が高い会社に送客するというモデルで、求人広告に限らず、あらゆる領域に応用が可能です。
つまり、法人向けの見込み顧客獲得サービス、のような事業も始めることが出来、当社の営業力をもってすれば、既に存在するサービスを後から追い抜くことも可能だと考えています。
── その多角的な展開の根底にあるビジョンとは?
中村 繰り返しになりますが、私の最終的なゴールは最強のビジネスマン集団を作ることです。スキルやノウハウが次々と生み出され、組織内で波及していく。そんな集団を作り上げることさえできれば、あとはやりたい人が手を挙げて新しい事業をどんどん立ち上げていけばいい。そのために必要なのは、やはり「人」への投資です。
当社のスローガンは「楽しもう、役立とう、突き抜けよう」です。困難な挑戦や壁にぶつかることさえも楽しみながら、圧倒的な成果を出す。そんな気概をもった仲間を増やし、この会社を次のステージへと進めていきたいと考えています。
- 氏名
- 中村 幸平(なかむら こうへい)
- 社名
- ライフワンズメディア株式会社
- 役職
- 代表取締役社長