オーナーチェンジ物件とは?

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

オーナーチェンジ物件とは、賃借人(入居者)が居住している状態で売買される不動産のことです。賃貸借契約はそのまま引き継がれるため、入居者が住み続けた状態で、物件の所有権が売主から買主(新しい所有者)へ移転します。

買主は新たなオーナーとして家賃を受け取る権利を得る一方で、敷金返還義務なども引き継ぎます。

空室ではない状態で購入するため、購入後すぐに賃貸収入を得られるのが大きな魅力です。

空室状態の中古物件との違い

空室状態の中古物件は、購入時にリフォームを行ったり、ホームステージング(家具や照明で内装をコーディネートすること)で物件の魅力を高めたりできます。

一方、オーナーチェンジ物件は入居者がいるため室内の内見ができず、賃貸借契約の内容も原則そのまま引き継がれます。入居者がいる場合は、すぐに家賃収入が得られ、入居者募集の手間がかからないという利点があります。

オーナーチェンジ物件が売却される理由

オーナーチェンジ物件が売却される背景はさまざまです。まず、以下のように物件に問題があるわけではなく、投資方針により売却されるケースがあります。

  • 所有期間が5年を超え、税制上有利なタイミングを迎えた
  • ポートフォリオ調整(資産の組み換え)
  • 相続によって取得した物件を整理する など

これらは投資戦略にもとづく前向きな売却であり、特段のリスクを示すものではありません。一方で、以下のように購入時に注意すべき理由によって売却されるケースもあります。

  • キャッシュフローの悪化
  • 入居者や近隣とのトラブル
  • 大規模修繕のタイミング など

購入を検討する際は、売主や不動産投資会社に売却理由を確認し、潜在的なリスクが隠れていないかを見極めることが重要です。売却理由が曖昧だったり、明確な説明が得られなかったりする場合は、慎重に判断する必要があります。

オーナーチェンジ物件の売買時に引き継がれる権利と義務

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

オーナーチェンジ物件を購入すると、新オーナーは前オーナーが持っていた権利と義務をそのまま承継します。まず、承継される主な権利は以下のとおりです。

  • 毎月の家賃収入を受け取る権利
  • 入居者から預かっている敷金を管理する権利
  • 契約終了時に建物を返還してもらう権利

一方で、承継する義務には次のようなものがあります。

  • 建物や設備を適切に維持・修繕する義務
  • 退去時に敷金を精算し、返還する義務
  • 賃貸借契約の内容を遵守する義務

これらの権利・義務は民法および賃貸借契約にもとづいて定められており、前オーナーとの間で内容を正確に引き継ぐことが重要です。特に敷金の預かり状況や契約内容の確認は、後々のトラブルを避けるうえで欠かせません。

敷金は入居者からの預り金です。賃料の未払いが発生した際の補填に充てられるほか、退去時には原状回復費用を差し引いた残額を返還する必要があります。したがって、金額や預かり状況を正確に把握しておくことが非常に重要です。※民法での定めによらず任意で両者が取り決めできる内容もあるため、承継される権利や義務は契約時によく確認することが大切です。不明点がある場合は不動産投資会社や弁護士など専門家へ必ず確認してください。

オーナーチェンジ物件を購入する5つのメリット

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

オーナーチェンジ物件には、以下のように魅力的なメリットがあります。

  1. 購入直後から家賃収入が得られる
  2. 収支計画が立てやすい
  3. 入居者の募集に必要な手間や費用がかからない
  4. 銀行の融資審査に通りやすい
  5. 前オーナーの運営ノウハウを参考にできることもある

それぞれ詳しく解説します。

1. 購入直後から家賃収入が得られる

入居者のいない空室物件では、購入後に入居者を募集し、契約を結ぶまで収益が得られません。しかし、オーナーチェンジ物件で入居者がすでにいる場合、引き渡し直後から家賃を受け取れます。

特に不動産投資の初心者にとっては、空室期間のリスクを避けられる点が大きな安心材料となるでしょう。空室期間中もローンの返済や管理費の支払いは続くため、収入がない状態は精神的な負担にもなりますが、すでに入居者がいるオーナーチェンジ物件ならその心配がありません。

2. 収支計画が立てやすい

新築物件や空室物件の場合、想定賃料で計算するため不確実性が高くなります。しかし、オーナーチェンジ物件なら現在の家賃収入や管理費、修繕積立金などの実際のデータがあるため、投資判断がしやすくなります。

実際の入居者が支払っている家賃をもとに計算できるため、想定よりも家賃が低かったという失敗を防げるでしょう。また、過去の修繕履歴や管理費の推移なども確認できるため、将来的な支出も予測しやすくなります。

3. 入居者の募集に必要な手間や費用がかからない

空室状態の物件を購入した場合、入居者を募集するために広告費や仲介手数料、場合によってはリフォーム費用がかかります。入居審査や契約手続きにも時間と労力が必要です。

しかし、オーナーチェンジ物件ではすでに入居者がいるため、これらの手間や費用をかけずに賃貸経営をスタートできます。

特に不動産投資が初めての方にとって、入居者募集や契約業務は不安な要素です。オーナーチェンジ物件ならその心配がなく、初期費用を抑えられるため、投資効率の向上にもつながります。

4. 銀行の融資審査に通りやすい

オーナーチェンジ物件は、すでに家賃収入が発生しているため、返済能力を客観的に評価しやすく、銀行側もリスクを低く見積もれます。

空室物件の場合は想定賃料での審査となるため不確実性が高くなりますが、オーナーチェンジ物件なら実績データがあるため信頼性が高いです。融資を受けられる金額や金利条件も有利になる可能性があり、投資の収益性を高めることにつながります。

5. 前オーナーの運営ノウハウを参考にできることもある

オーナーチェンジ物件を購入すると、前オーナーの物件管理、運営のノウハウを引き継げるケースもあります。管理会社の選定方法や入居者対応の実績、修繕計画など、賃貸経営の具体的な情報を得られると、初心者でも安心してスタートできます。

また、前オーナーや管理会社から物件特有の注意点や入居者の特徴などを聞くことで、トラブルを未然に防ぐことも可能です。たとえば、「特定の設備が故障しやすい」「近隣住民との関係で注意すべき点がある」など、実際に運営してきた人だからこそわかる情報は非常に価値があります。

オーナーチェンジ物件を購入する3つのデメリット

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

メリットが多いオーナーチェンジ物件ですが、以下のように購入前に知っておくべきデメリットもあります。

  1. 室内の内見ができない
  2. 入居者を選べない
  3. 入居者が退去してしまう可能性がある

それぞれ詳しく解説します。

1. 室内の内見ができない

オーナーチェンジ物件は入居者が居住しているため室内に立ち入るのが難しく、設備の状態や劣化具合を直接確認できないことが多くあります。そのため、購入後に予想外の修繕費が発生するリスクがあります。

  • 壁紙の汚れ
  • 水回りの劣化
  • 設備の故障 など

対策としては、外観や共用部分の状態から推測したり、管理会社から過去の修繕履歴を入手したりして、できる限り情報を集めることが重要です。築年数が古い物件の場合は特に注意が必要で、不動産投資会社を通して、給湯器やエアコンなどの設備の交換時期を確認しておくことが大切です。

2. 入居者を選べない

オーナーチェンジ物件では、前オーナーが契約した入居者をそのまま引き継ぐため、自分で入居者を選べません。もし問題のある入居者が住んでいた場合、賃貸経営が困難になる恐れもあります。

購入前には、不動産投資会社や管理会社を通じて入居者の情報をできるだけ詳しく確認し、過去に家賃滞納やトラブルがなかったかをチェックすることが大切です。入居期間が長い入居者の場合、物件を大切に使っている可能性が高く、安定した賃貸経営が期待できます。

3. 入居者が退去してしまう可能性がある

オーナーチェンジ物件を購入しても、入居者がすぐに退去してしまう可能性があります。たとえば、オーナーチェンジのタイミングと、入居者の転勤のタイミングが重なることも考えられるでしょう。

退去後は空室期間が発生し、新たに入居者を募集する費用や手間がかかります。対策としては、購入前に入居者の居住期間や契約更新の履歴を確認し、長期間安定して住んでいる入居者がいる物件を選ぶことが重要です。

オーナーチェンジ物件を購入する際の5つのチェックポイント

 
(画像=「RENOSY マガジン」より引用)

オーナーチェンジ物件を購入する際は、リスクを最小限にするために以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. 売却理由を確認する
  2. 契約内容を確認する
  3. レントロールを確認する
  4. 物件の周辺や共用部も確認する
  5. 信頼できる不動産投資会社から購入する

それぞれ詳しく解説します。

1. 売却理由を確認する

売却理由に問題がないか、売主や不動産投資会社に直接質問し、納得のいく説明を受けることが重要です。売主や不動産投資会社に直接質問し、納得のいく説明を受けることが重要です。

もし売却理由が曖昧だったり、説明を避けられたりする場合は、何か隠れた問題がある可能性があります。たとえば、「税金対策のため」「資産を現金化したい」といった理由は比較的安心できますが、「管理が大変になった」「収支が合わなくなった」といった理由の場合は、その背景を詳しく確認する必要があります。

2. 契約内容を確認する

賃貸借契約の内容は、オーナーチェンジ物件を購入する際の重要なチェックポイントです。具体的には、以下のようなポイントを確認します。

  • 普通賃貸借契約か定期借家契約か
  • 契約期間
  • 賃料
  • 敷金・礼金の金額
  • 更新条件 など

特に、特約事項や禁止事項、修繕負担の範囲なども細かくチェックすることが大切です。

契約内容は専門的であるため、不明確な場合や不安がある場合には不動産投資会社に、もし問題が発生しているなら弁護士などの専門家に相談するのも一つの方法です。定期借家契約(定期建物賃貸借契約)の場合は契約期間が決まっているため、更新はありませんが定められた時期までに入居者へ通知が必要であることなどを理解しておく必要があります。

3. レントロールを確認する

アパートや一棟マンションのレントロール(賃貸借一覧表)は、以下のような情報が記載された、物件の収益性を判断するための重要な資料です。

  • 現在の家賃
  • 入居者の入居時期
  • 契約更新の履歴
  • 敷金の金額 など

レントロールを確認することで、空室率の推移や家賃の変動、長期入居者の有無などを把握できます。また、周辺の家賃相場と比較して、現在の賃料が適正かどうかも判断できます。

もし相場よりも高い賃料で契約されている場合、将来的に減額リスクがあるため注意が必要です。レントロールは物件の「成績表」のようなものなので、入手して不動産投資会社と一緒に確認するのがおすすめです。

4. 物件の周辺や共用部も確認する

室内の内見ができないオーナーチェンジ物件では、外観や共用部分、周辺環境の確認が重要になります。可能であれば実際に現地を訪れ、以下のような項目をチェックすることをおすすめします。

  • 建物の外壁や屋根の状態
  • エントランスや廊下の清掃状況
  • ゴミ置き場の管理状態
  • 駅からの距離
  • スーパーやコンビニなどの生活利便施設
  • 治安
  • 騒音の有無 など

入居者が長く住み続けられる環境かどうかを見極めることで、空室リスクを抑えることが可能です。共用部分が汚れていたり設備が古かったりする場合は、管理状態に問題がある可能性があります。

5. 信頼できる不動産投資会社から購入する

オーナーチェンジ物件を購入する際は、信頼できる不動産投資会社を選ぶことが成功の鍵となります。実績豊富で評判の良い会社であれば、物件の詳細情報を開示してくれるだけでなく、購入後のサポートも充実しているケースが多くあります。

悪質な業者のなかには、入居者を偽装したり不利な情報を隠したりするケースもあるため、注意が必要です。会社選びのポイントは、実績や口コミ・評判、アフターフォローの内容などを総合的に判断することです。

特に実際の利用者の声を参考にすることで、会社の対応や姿勢についてイメージも湧きやすくなります。複数の会社を比較検討し、質問に対して誠実に答えてくれる会社を選ぶことをおすすめします。

不動産投資の選択肢としてオーナーチェンジ物件も検討しよう

オーナーチェンジ物件は、購入直後から家賃収入が得られ、収支計画が立てやすいという大きなメリットがあります。一方で、室内の内見ができない、入居者を選べないといったデメリットもあるため、慎重な検討が必要です。

購入を検討する際は、売却理由や契約内容、レントロールなどをしっかり確認し、信頼できる不動産投資会社から購入することが重要です。

オーナーチェンジ物件は不動産投資の有力な選択肢の一つであり、特に安定した収益を求める方や初心者にとって魅力的な物件といえます。メリットとデメリットを十分に理解したうえで、自分の投資スタイルに合った物件を選びましょう。

この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部
「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。