不動産投資は自己資金100万円で始められる?
自己資金100万円からでも、不動産投資を始められます。
主な方法は、以下の2つです。
- 不動産投資ローンを利用して実物不動産を購入する
- 不動産投資信託を利用する
詳しく解説します。
1. 不動産投資ローンを利用して実物不動産を購入する
自己資金100万円で実物不動産を購入する方法としては、不動産投資ローンの活用が一般的です。不動産投資ローンとは、購入する不動産を担保として金融機関から融資を受けることです。
金融機関は、その物件に抵当権を設定して融資を行います。抵当権を設定することにより、万が一ローンの返済が困難になった場合、銀行は賃貸マンションを売却して貸付金を回収します。
不動産投資ローンは、大手銀行をはじめ地方銀行や信用金庫、ネット銀行等、さまざまな金融機関が扱っています。こうしたローンを利用することで、手元資金が100万円程度の状況から不動産投資を始めることが可能になります。
2. 不動産投資信託を利用する
不動産投資信託は、複数の投資家から預かった資金でさまざまな不動産へ投資を行い、そこから得られる収益を配当する仕組みです。不動産投資信託の収益には、家賃収入や売却益等があります。一般的にはREIT(リート)と呼ばれており、不動産を株式のように証券化して取引されています。
REITの魅力は、少ない資金から始められる、安定した配当が見込める、プロが分散投資をしてくれる、などの点です。実物不動産は売買に数カ月の期間を要しますが、REITは流動性が高い証券のため、比較的簡単に換金できるのも魅力の一つです。
ただし、現物の不動産投資と金融商品のREITには「運用する物件を選べるか」に、大きな違いがあります。現物の不動産では自分で選んだ物件に直接投資します。一方、REITでは住宅なのか物流施設なのかなど不動産の種類までは選べたとしても個別の不動産は選ぶことはできません。資金を運用会社に委ね、プロに投資判断を任せる形になります。
また、REITは手持ち資金分の投資となるため、ローンによるレバレッジ効果は期待できませんが、リスクを抑えながら不動産投資を始めたい方に適した選択肢です。現物の不動産投資と比較すると、REITのメリットは以下のとおりです。
- ローンを組む必要がない
- 不動産を所有することで発生する管理費や修繕費などの経費がかからない
- 現物の不動産よりも迅速に売却でき換金性が高い
現物の不動産を自分で購入することに不安がある方や、少ない資金でリスクを抑えて投資したい方には、REITがおすすめです。
実物の不動産投資を自己資金100万円で始める3つのメリット
実物の不動産投資を自己資金100万円で始めるメリットは、以下の3つです。
- 不動産投資ローンを活用しレバレッジ効果で大きな資産を動かせる
- 元手を貯める準備期間がいらず、早いうちから投資を始められる
- 失敗した場合の損失規模が少ない傾向にある
それぞれ詳しく解説します。
1. 不動産投資ローンを活用しレバレッジ効果で大きな資産を動かせる
100万円で不動産投資をする醍醐味ともいえるのが、自己資金では難しい規模の投資による高い収益を期待できることです。株取引などの一般的な投資方法では、得られる収益は投入した資金に比例するのが一般的です。資金が少額であれば、利益も相応の金額にとどまります。
しかし、不動産投資では金融機関から融資を受けることが可能なため、手元の資金が100万円でもそれ以上の価格の物件を購入できます。手元資金だけでなく、融資額を含めた投資額に対して収益を得ることが可能です。このように、借入れによって自己資金より大きな金額の物件を扱うことを「レバレッジ」とよびます。
2. 元手を貯める準備期間がいらず、早いうちから投資を始められる
少額の自己資金でも不動産投資を始められるため、早期に資産形成をスタートできます。十分な資金が貯まるまで待つ必要がなく、より早く収益を得られる点が大きなメリットです。
たとえば、年間で100万円貯蓄できると仮定した場合を考えてみましょう。100万円貯まった時点で投資を始める場合と、500万円貯まるまで待つ場合では、投資開始までに4年の差が生まれます。100万円の時点で投資を始めれば、その4年分早くローンの返済を進められますし、残りの400万円は別の投資に活用することも可能です。
もちろん、ローン条件や経済情勢などさまざまな要因が関係しますが、一般的には早めに投資を始めた方が長期的な収益機会を得やすくなります。時間を味方につけることで、資産の成長期間を最大化できるのです。
不動産投資のメリットについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
3. 失敗した場合の損失規模が少ない傾向にある
自己資金100万円で始める不動産投資は、数千万円の自己資金を投入する場合と比べて、リスクを抑えながら経験を積むことができます。万が一、投資が失敗に終わった場合でも、失う自己資金が限定的です。
初心者にとって、まず小規模で始めて実績を作り、徐々に投資規模を拡大していく戦略はおすすめです。最初の投資で不動産投資の流れや物件管理のノウハウを学び、失敗から得た教訓を次の投資に生かせます。
実物の不動産投資を自己資金100万円で始める4つのデメリット
実物の不動産投資を自己資金100万円で始めるデメリットは、以下の4つです。
- ローンの審査に通りづらい
- 金利変動のリスクが大きい
- 借入金が大きくなるためキャッシュフローが悪化しやすい
- 購入できる物件の母数が少ない
それぞれ詳しく解説します。
1. ローンの審査に通りづらい
物件価格全額を融資してもらうフルローンでの融資を金融機関がどう評価するかは、まず投資対象の不動産の事業性の評価と、加えてオーナーとなる人の職業や資産状況によります。
たとえば、中古のワンルームマンション投資の場合、年収500万円以上の会社員ならばフルローンの審査は通る可能性が高いです。しかし、職業によっては頭金を要求される場合があり、頭金を用意できない場合は、100万円の資金だけではローンの審査で落ちてしまう場合があります。
ただし、ローン審査で重要視されるのは、自己資金の額よりも、年収や物件の収益性などです。そのため、自己資金が少なくても安定した収入があり、収益性の高い物件を選べば、審査に通る可能性は十分にあります。
なお、RENOSY(リノシー)では、自己資金10万円から始めることも可能です。
2. 金利変動のリスクが大きい
頭金を入れた場合とフルローンとを比較すると、頭金を入れた方が借入金が少なくなる分、金利変動による返済額の増加は比較的少額で済みます。フルローンによる不動産投資では、金利の上昇による影響を受けやすい点に注意してください。そのため、金利変動のリスクもあらかじめ折り込んだうえで物件を選べるとベストです。
対策として、固定金利のローン商品を検討したり、将来の金利上昇を見込んだシミュレーションを作成してもらったりすることが大切です。ここ数年は市中金利が上昇傾向にあるため、金利上昇時でも返済を続けられるような余裕のある返済計画を立て、金利上昇リスクに備える必要があります。
3. 借入金が大きくなるためキャッシュフローが悪化しやすい
100万円の自己資金による不動産投資では、頭金を投入した場合と比較すると、返済額が増えます。収入に対する支払いの割合が大きくなるため、キャッシュフローが悪化しやすい点に注意が必要です。
一つ例を挙げて考えてみましょう。
【借入額の差による月の返済額の違い】
返済期間30年、利率2.5%のローンを利用した場合、フルローンと頭金500万円との借入額の差による月々の返済額は以下のとおりです。
返済額
2,000万円の融資を受けた場合:79,024円/月
1,500万円の融資を受けた場合:59,258円/月
以上の条件だと、借入金額が500万円違うと月の支払いに2万円近くの差が出ることがわかります。借入金額次第では、毎月の収支がマイナスになることもあります。
4. 購入できる物件の母数が少ない
金融機関によっては、借入金に対して1割〜2割の自己資金を用意することを条件にしているケースがあります。そのため、100万円の自己資金だけでは購入できる不動産価格の幅が狭くなってしまったり、購入件数の母数そのものが少なくなってしまう可能性もあります。そうなると2件目以降の物件購入に繋がっていかない場合もあるので、投資の拡大が難しくなるでしょう。
たとえば、1件目の物件を売却しない限り、2件目以降の不動産ローン利用は金融機関が拒否するケースもあります。多くの不動産投資家は、2件目3件目と、どんどん投資枠を広げていこうとする傾向にあるため、まずは1件目の投資で次の資金を確保できるように意識しておくことも重要になってきます。
100万円の自己資金で行う物件選びのポイント
不動産投資の対象物件には、区分マンションや一棟(アパートやマンション等)など、種類があります。数百万円から2,000万円前後で買える投資用物件も存在します。では、100万円でできる不動産投資にはどのようなものがあるのでしょうか。自己資金100万円での物件選びのポイントは、以下のとおりです。
- 区分マンションを購入する
- ワンルームマンションの物件を選ぶ
- 新築だけではなく中古も検討する
- 立地・エリア選定を重視する
- 利回りとキャッシュフローのシミュレーションを十分に行う
それぞれの投資ポイントを詳しく見ていきましょう。
1. 区分マンションを購入する
100万円で始める不動産投資としては、区分マンションの購入が一つの選択肢となります。区分マンションとは、部屋単位で販売しているマンションのことです。区分マンションを運用して家賃収益を得る不動産投資を「区分マンション投資」ともよびます。
区分マンション投資は以下のようなメリットが存在し、自己資金100万円からでも始めやすいのが特徴です。
【区分マンション投資のメリット】
- 一棟マンションと比べて手の届きやすい価格である
- 修繕費用や管理費用が一棟所有より少ない
一方で、一室のみの所有だと空室リスクが集中します。借り手が見つからないと賃料収入がストップし、一気に収支がマイナスに傾くため、複数戸所有するなど何らかの方法でリスクを分散する必要があります。
2. ワンルームマンションの物件を選ぶ
単身者向けのワンルームマンションは、数百万円から販売されている物件もあり、ファミリータイプよりも比較的手に入りやすいです。都心部は2,000万~3,000万円前後、郊外や地方の市街地等では2,000万円を切るものもあり、物件の数や種類も豊富に揃っています。
ワンルームマンションは売却しやすいため、多くのデベロッパーが投資用賃貸マンションをどんどん新築しているという状況です。またワンルームマンションの入居者は1人であることがほとんどなので、管理がしやすいのも大きな特徴といえるでしょう。一棟マンションのように高額ではないことから、出口戦略として売却もしやすく、小回りが利く投資用物件として扱われることが多いです。
3. 新築だけではなく中古も検討する
不動産投資は、新築物件にこだわる必要はありません。投資用中古物件の取引も盛んなので、区分マンションだけではなく、たとえば一棟の中古アパートも投資対象の範囲として検討してみてもいいかもしれません。ただし、築年数によっては金融機関からの借入れが難しくなる場合もあるので、できるだけ早めに金融機関へ確認しておく必要があります。なお、中古物件は建物の修繕が必要な場合もありますが、その修繕にかかった費用分を賃料や売却価格に上乗せするケースも多く見受けられます。
4. 立地・エリア選定を重視する
不動産投資において「立地」は、物件の収益性を左右する重要な要素の一つです。いくら物件価格が安くても、駅から遠く交通の便が悪い、周辺環境が整っていない場所では、入居者が見つかりにくく空室リスクが高まります。
一方、駅からのアクセスが良好で、商業施設や学校、病院などの生活利便施設が充実しているエリアの物件は高い賃貸需要が見込まれます。空室リスクを抑えられ、安定した家賃収入が期待できるでしょう。
立地選びで失敗すると、空室や家賃下落などのリスクに直面したとき、投資の継続が厳しくなる可能性があります。物件価格だけでなく、立地条件やエリアの環境等を踏まえ、賃貸需要を十分に吟味したうえで投資判断を行うことが重要です。
5. 利回りとキャッシュフローのシミュレーションを十分に行う
物件購入前には、表面利回りだけでなく実質利回りを計算し、詳細なキャッシュフローのシミュレーションを行うことが不可欠です。月々の家賃収入から、以下のような経費を差し引いた手残り金額を確認しましょう。
- ローンの返済額
- 管理費
- 修繕積立金
- 固定資産税 など
また、空室率や将来の修繕費、管理費の上昇なども織り込んで計算することが大切です。特に都心のワンルームマンション投資では、毎月の収支がマイナス(手出しが発生する)になるケースも多く、必ずしも毎月の手残りがプラスになるとは限りません。
金利上昇や空室発生などの悪条件も想定し、最悪のケースでも耐えられるかどうかを検証することが重要です。複数のシナリオを想定してシミュレーションを行い、リスクに対する備えを十分に持ったうえで投資判断を下しましょう。
【注意】100万円以下の激安物件は避けるべき理由
「自己資金が100万円なのだから、100万円の物件を買えばいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、これは不動産投資初心者にはおすすめできない選択です。
投資用不動産の価値は価格に直結しているため、激安物件というのはそれなりの問題を抱えていることが多いからです。
【激安物件に考えられるデメリット(一例)】
- 修繕前提であり結果として費用がかかる
- 事故物件だった場合、入居がなかなか決まらない
- 賃貸需要が見込めないエリアの物件の可能性
- 違法建築、接道義務違反、用途地域違反、再建築不可物件などの法的瑕疵物件
不動産投資に慣れている方のなかには、このような激安物件を狙って利益を出している方もいます。しかし、初心者が同じように成功するのは非常に難しく、貴重な資金を無駄にしてしまう危険性が高いです。
自己資金100万円という限られた資金だからこそ、慎重に物件を選び、確実性の高い投資を行うことが重要です。激安物件には手を出さず、適切な価格帯でしっかりとした収益性を持つ物件を選ぶことをおすすめします。
不動産投資を100万円で始める際に押さえておくべき5つのポイント
100万円で不動産投資を始める場合、事前に確認しておくべき注意点があります。以下のポイントを理解し実践することで、リスクを軽減しながら安定した投資を実現できます。
- 購入前に物件のキャッシュフローをよく確認する
- 物件の購入時にかかる初期費用を確認する
- 実物不動産は利回りだけで判断しない
- 手元資金が減るリスクを想定しておく
- 信頼できるパートナー(不動産投資会社・管理会社)を選ぶ
それぞれ詳しく解説します。
1. 購入前に物件のキャッシュフローをよく確認する
キャッシュフローがどの程度になるかは綿密に計算する必要があります。キャッシュフローがいくらかは、以下のように計算できます。
キャッシュフロー(手残り現金)=家賃収入-支出-ローンの返済額
キャッシュフローを計算する際は、空室リスクなども考慮した家賃収入の見込み額と、毎月払う経費を整理してください。また、毎月の費用のほか、物件の税金や修繕費など、年間~数年に一度発生する費用も盛り込むと、より実態に即したシミュレーションが可能です。
100万円で始める不動産投資は初期に投資する資金が少ない分、返済額が増えます。毎月の返済に関して、支出に耐えられる利回りが期待できるのかを確認したうえで、物件を選定し購入することが大切です。
2. 物件の購入時にかかる初期費用を確認する
物件の購入にはさまざまな初期費用がかかるため、いざ買うときになって慌てないようにあらかじめ確認しておきましょう。物件購入時にかかる初期費用は以下のとおりです。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 手付金 | 売買契約時に支払う費用(物件価格の5〜10%が一般的) |
| 申込証拠金(新築時) | 新築物件の購入申込時に支払う費用(10万円以内が一般的) |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付する収入印紙代 |
| 仲介手数料 | 不動産仲介業者に支払う手数料(「物件価格の3%+6万円+消費税」が上限) |
| 登録免許税および司法書士手数料 | 所有権移転登記や抵当権設定登記にかかる税金と手数料 |
| 固定資産税および都市計画税 | 引渡し日以降のぶんを日割り計算して売主に支払う |
| 不動産取得税 | 不動産を取得した際に課される地方税 |
初期費用に関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
3. 実物不動産は利回りだけで判断しない
高利回りの物件は一見魅力的に見えますが、利回りだけで物件を判断するのは危険です。利回りが高い物件には、以下のようなさまざまなリスクが潜んでいる可能性があります。
- 築年数が古い
- 立地が悪い
- 将来的に多額の修繕費がかかる など
表面利回りではなく、管理費や修繕積立金、固定資産税などの経費を差し引いた実質利回りで評価することが重要です。また、将来の資産価値や売却時の価格も考慮し、総合的な収益性を見極めることも欠かせません。目先の利回りの高さに惑わされず、長期的な視点で物件の価値を判断することが成功への近道です。
4. 手元資金が減るリスクを想定しておく
自己資金100万円で不動産投資を始める場合、手元資金が初期費用にほぼすべて充てられる可能性があります。しかし不動産投資では、突発的な修繕費の発生や想定外の空室期間により、追加で資金が必要になる事態が起こり得ます。
手元資金がゼロになってしまうと、トラブル発生時に適切な対応ができません。追加で融資を受けるか、最悪の場合は物件を手放さざるを得なくなるリスクもあります。そのため、物件購入後も一定の運転資金を手元に残しておくことが不可欠です。
5. 信頼できるパートナー(不動産投資会社・管理会社)を選ぶ
不動産投資の成否は、パートナー選びに大きく左右されます。実績が豊富で評判の良い不動産投資会社や管理会社を選ぶことで、物件選定から購入後の運用までスムーズに進められます。
会社選びの際には、複数社を比較検討し、提案内容やサポート体制、過去の実績などを確認することが大切です。特に初心者は、購入後のアフターフォローが充実している会社を選ぶことが重要です。
信頼できるパートナーがいれば、トラブル発生時にも適切なアドバイスを受けられ、安心して投資を続けられます。さらに、物件の紹介だけでなく、ローンの相談や確定申告のサポートなど、総合的にサポートしてくれる会社を選ぶことをおすすめします。
また、実際にその会社を利用した投資家の口コミや評判も参考にし、信頼性を見極めましょう。
不動産投資は自己資金100万円からでも十分に始められる
100万円から始める不動産投資は、ローンの返済額が増えるというデメリットもあります。運用を始める前には、さまざまなリスクを見込んだ運用計画を立てるようにしましょう。そのうえで、リスクに耐えられるだけの収益が得られるかどうかを基準に物件を選ぶと失敗しにくくなります。
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