この記事は2026年1月14日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:強い経済のグランドデザインへの転換」を一部編集し、転載したものです。

アンダースロー
(画像=years/stock.adobe.com)

目次

  1. シンカー
    1. 米国:市場の利下げ期待は続く
  2. 強い経済のグランドデザインへの転換

シンカー

米国:市場の利下げ期待は続く

12月米国CPIはコアが前月比+0.2%(年率+2.9%)、前年比+2.6%(11月+2.6%)だった。依然2%は上回りながらも、ピークだった2021年からの緩やかな鈍化は続いている。財は前月比+0.0%だった一方、サービスが同+0.3%と住居などによってやや上振れた。ウェイトの大きい家賃は空室率の動向を踏まえると、さらに伸びは鈍化していく見込みであり、サービス全体の伸びも緩やかに落ち着いていくことが見込まれる。

市場がこれまで懸念してきた関税の影響は、依然みられていない。低中所得層の家計の消費余力が低下しているなか、国内外の企業が吸収したことや、中国を起点とした輸入物価の下押しの影響が大きいとみられる。中小企業の景況感であるNFIBの12月調査では、売上不振を最重要問題と挙げる比率は上昇基調にあり、需要の鈍化と低調な雇用環境が続いているが示唆される。インフレと雇用の緩やかな鈍化と引き締め的な金融環境、そして政権からの金融緩和圧力が強まるなか、FRBに対する市場の利下げ期待は続いていく見込み高い。(松本賢)

強い経済のグランドデザインへの転換

  • 目指すべき経済グランドデザインは、企業と政府の支出する力を十分に強くして、家計に所得が回る力を強くすることで、景気回復の果実を届けることです。

  • 中長期の財政試算では、企業と政府の支出する力であるネットの資金需要が消滅する、財政健全化優先(財政収支黒字拡大)と家計ファンダメンタルズの悪化(貯蓄率低下)になっています。

  • 政府の収支は、経常的収支と投資的収支に分解して、経常的収支の均衡とともに、戦略投資の拡大によって、投資的収支はマイナスを拡大すべきです。

  • 戦略投資のダイナミックスコアリングを反映し、ネットの資金需要を十分なマイナスとして、家計に所得をしっかり回し、需要と供給能力の拡大が好循環する、強い経済のグランドデザインとすべきです。


経済再生のマクロ戦略として、官民連携の戦略投資で、企業を貯蓄超過から投資超過に戻し、コストカット型から投資・成長型への移行を明確にします。

グローバルな戦略投資の大競争の中、戦略分野に、全部・全力で投資を拡大するべきです。戦略投資を税収の範囲内に制約する、プライマリーバランスの黒字化目標は、撤廃すべきです。

長期投資には、長期資金の安定供給が必要です。年金基金は海外ではなく、国内に、より多くの長期資金を供給できると考えられます。

投資は、短期的には需要です。投資需要で、需給ギャップを2%超に拡大する「高圧経済」で、景気回復の実感を内需、地方、中小企業に広げ、企業の国内支出を促進します。

大学や零細企業が開発した技術を、産・学・官連携で「スタートアップ」として発掘するとともに、先端加速器ILCの東北への誘致など、「科学技術立国」と地方活性化にもつながる、大規模プロジェクトと、研究開発拠点の創設を進めるべきです。

目指すべき経済グランドデザインは、企業と政府の支出する力を十分に強くして、家計に所得が回る力を強くすることで、景気回復の果実を届けることです。

中長期の財政試算では、企業と政府の支出する力である、ネットの資金需要が消滅する、財政健全化優先(財政収支黒字拡大)と家計ファンダメンタルズの悪化(貯蓄率低下)になっています。

政府の収支は、経常的収支と投資的収支に分解して、経常的収支の均衡とともに、戦略投資の拡大によって、投資的収支はマイナスを拡大すべきです。

戦略投資のダイナミックスコアリングを反映し、ネットの資金需要を十分なマイナスとして、家計に所得をしっかり回し、需要と供給能力の拡大が好循環する、強い経済のグランドデザインとすべきです。

図1:企業貯蓄率と設備投資サイクル

企業貯蓄率と設備投資サイクル
(出所:内閣府、日銀、クレディ・アグリコル証券)

図2:企業貯蓄率と需給ギャップ

企業貯蓄率と需給ギャップ
(注:バブル期を含む1995年以前の需給ギャップは+5を上乗せ
出所:内閣府、日銀、クレディ・アグリコル証券)

図3:「強い経済」のグランドデザインへ

「強い経済」のグランドデザインへ
(出所:内閣府、クレディ・アグリコル証券)

図4:米国CPI賃貸とアパート空室率

図4:米国CPI賃貸とアパート空室率
(出所:BLS、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券)

図5:米国NFIB最重要問題「売上不振」と失業率

図5:米国NFIB最重要問題「売上不振」と失業率
(出所:NFIB、BLS、クレディ・アグリコル証券)

図6:米国SLOOS融資基準と失業率

図6:米国SLOOS融資基準と失業率
(出所:FRB、BLS、クレディ・アグリコル証券)

会田 卓司
クレディ・アグリコル証券 東京支店 チーフエコノミスト
松本 賢
クレディ・アグリコル証券 マクロストラテジスト

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