IT業界の深刻な人材不足が叫ばれて久しい。そうしたなか、未経験者をプロのエンジニアへと育て上げ、創業以来毎年150%を超える成長率を維持し続ける企業がある。toBE Tech株式会社だ。
代表取締役の百瀬卓也氏は、外資系の福利厚生アウトソーシング企業からIT業界へ転身し、大手ソフトウェアテスト会社・SHIFTでの経験を経て2022年に同社を創業した。
採用通過率が6%未満にもなる厳しい環境に身を置きながら、百瀬氏が確信したのは、「仕組みさえあれば、未経験者でも十分に活躍できる」という手ごたえだった。その信念のもと、同社は採用から育成までを一気通貫で担う独自のスキームを築き上げ、いまや社員の資格取得率は86%を超える。
さらに近年は、AIとの共存を見据えたエンジニア育成にも乗り出している。
独自の採用・育成モデルや競合他社との差別化要因、そしてデジタル人材の輩出にかける百瀬氏の想いに迫った。
企業サイト:https://www.tobetech.jp/
目次
IT業界への転身と創業の原動力
── まず創業に至るまでの経緯と、これまでの事業の変遷について教えてください。
百瀬氏(以下、敬称略) 私の経歴からお話しします。20代のころは、福利厚生のアウトソーシングを行う外資系企業で働いていました。当時はIT業界とはまったく無縁の世界に身を置いていたのです。
30歳を目前にしたとき、自身のキャリアや将来の成長性を考え、IT業界への転職を決意します。動機は、時代の流れに合わせて自身の市場価値を高めたいという純粋な挑戦心でしたね。未経験からのスタートでしたが、その後、株式会社SHIFTへ入社することになります。
── 前職での経験が、現在の事業モデルにどのような影響を与えているのでしょうか。
百瀬 SHIFTでの経験は非常に大きいです。同社は採用基準が非常に厳しく、採用通過率が6%未満ということも珍しくありません。 しかし、現場では未経験からスタートしても、一定の仕組みがあれば十分に活躍できる人がたくさんいます。
能力があるにもかかわらず、チャンスを手にできない人が世の中にはまだたくさんいると感じました。
「もっと多くの人に活躍の場を提供できるのではないか」と考えたことが創業のきっかけです。当時の同僚と志をともにし、未経験者を育成して輩出するビジネスを立ち上げました。
── 未経験者をエンジニアとして育成し、企業へ派遣するモデルは近年増えていますね。
百瀬 おっしゃるとおり、私たちが創業した当時よりも、同様のモデルを採用する企業は増えています。市場全体としては追い風が吹いている状況ですが、一方で課題も見受けられます。現場で期待値とのミスマッチが生じるケースもあります。、。
だからこそ、私たちは「仕組み」と「質」を何よりも大切にしています。
単に人を送り出すのではなく、未経験者が確実に活躍できるための教育体制を構築しました。このこだわりが、現在の高い成長率につながっていると確信しています。
未経験者を戦力化する独自の育成・採用スキーム
── 競合他社が増える中で、御社が差別化できているポイントはどこにあると考えていますか。
百瀬 最大の強みは、採用から育成までを一気通貫で行う独自のモデルです。創業当時から毎月10人以上の採用を継続しており、短期間で組織を拡大するノウハウを蓄積しています。この規模を維持しながら質を担保できる点が、他社との大きな違いです。
── その「仕組み」は、具体的にどのようなものですか。
百瀬 SHIFTで学んだ「可視化」と「標準化」の考え方を参考にしています。優秀な個人に依存するのではなく、誰が担当しても一定の成果が出る仕組みを構築しました。
採用においても、従来の常識にとらわれない攻めの姿勢を大切にしています。
── エンジニアの資格取得率が86%という数字も驚異的です。
百瀬 資格取得は、採用の段階から「当たり前の文化」として徹底して伝えています。 面接の時点で、入社後にどのような学習が必要かを詳細に説明し、本人の覚悟を確認します。入社後も、人事や営業、育成担当が全員でサポートする体制を整えています。
── 継続的な育成を仕組み化するのは、容易なことではないと思います。
百瀬 多くの企業では、入社直後の研修が終わると、あとは現場任せになりがちです。 私たちは現場に入った後も、CCNAなどのネットワーク資格取得を必須とするなど、明確な目標を掲げます。
先輩社員が後輩を教える文化も根付いており、組織全体で成長を後押ししていますね。
顧客の期待値を調整する圧倒的な営業力
── 未経験者を現場へアサインする際、品質管理やリスク管理についてはどのように考えるのですか。
百瀬 そこは営業の段階で、お客様の期待値を正しく調整することを徹底しています。エンジニアの業務を細かく可視化し、「このメンバーならここまで対応可能です」と正直に伝えます。
お客様の業務内容を深くヒアリングし、基準を満たしたメンバーのみをアサインします。
── 営業力が非常に強い印象を受けますが、その組織力はどのように培ったのでしょうか。
百瀬 私たちの営業メンバーには、NEC出身者やSHIFT出身者など、現場を熟知した人間がそろっています。
単なるキーワードマッチングではなく、お客様の課題に対する解像度を高く持つことができます。この提案の正確さが、上場企業を含む多くのお客様との信頼関係につながっています。
──顧客の課題や必要な要件まで踏み込んで提案できるのは、 大きな強みですね。
百瀬 はい。お客様が求める要件を正しく理解し、顧客の期待値を調整する営業力が強いと自負しています。
創業当時は商流の深いところからのスタートでしたが、地道に実績を積み上げました。現在は、直接お取引をいただけるフェーズまで成長できています。
帰属意識を高めるアナログなコミュニケーション
── SESという業態では、社員の帰属意識が薄れやすいという課題をよく耳にします。
百瀬 その点は、私たちがもっとも意識して取り組んでいる部分の一つです。「プロジェクトに参画して終わり」というドライな関係ではなく、人と人とのつながりを非常に大切にしています。あえてアナログで、少し泥臭いアプローチを継続しています。
── 具体的には、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
百瀬 月に2回の帰社日を設けたり、入社タイミングでの同期会を企画したりしています。
また、社員が主体となって土日に勉強会を開催するなど、横のつながりが非常に強いのが特徴です。年に2回の表彰制度や定期的な面談も欠かさず実施しています。
── 社長と従業員の距離も非常に近いようですね。
百瀬 私自身、社員とは積極的にコミュニケーションを取るようにしています。
最近では、他社で「会社との接点がない」と悩んでいた経験者が、当社へ転職してくるケースも増えました。給与条件だけでなく、つながりを求めて来てくれるのはうれしいことです。
── 離職率の低下にもつながっているのではないでしょうか。
百瀬 はい。同期同士のつながりや、適切な案件へのアサインによって、社員が長期的に定着する環境づくりにつながっています。3、4年の経験を持つエンジニアが定着し、組織の核となってくれる好循環が生まれています。
この蓄積が、会社の筋肉質な組織体質を作り上げています。
AIとの共存とデジタル人材プラットフォームへの展望
── 今後の展望について、5年後、10年後のビジョンを教えてください。
百瀬 現在は約300人規模ですが、2027年は400人、2028年は500人と着実に増やします。
私たちは、顧客企業のプロジェクトに人材を参画させて終わりの会社ではありません。デジタル人材を輩出するプラットフォームを目指します。世の中で不足しているITスキルを持つ人材を、次々と世に送り出したいと考えています。
── 最近ではAIの台頭も著しいですが、エンジニアの価値はどう変化すると考えていまか。
百瀬 AIは強力なツールですが、それを正しく使いこなす人間が不可欠であることは変わりません。
根底にある仕組みを理解し、お客様と正しくコミュニケーションを取る力は、今後さらに重要になります。
AIに代替されるのではなく、AIを武器にする人材を育てることが重要です。
── 具体的にAI活用に向けた教育も始めているのでしょうか。
百瀬 すでに5段階に分けたAI研修を開始しており、レベルに合わせてスキルアップできる環境を整えています。
CRMやHR領域のツールを使いこなすデジタル人材の需要は、今後ますます高まります。 市場の変化に迅速にアジャストできる組織であり続けたいと考えています。
── 最後に、toBE Techが事業を通じて成し遂げたいことを聞かせてください。
百瀬 私たちは、単に未経験者を採用してアサインするだけの会社ではありません。「挑戦したい」という意欲を持つ方々を戦力化し、産業の標準を変えていくことを使命としています。これからも、誰もが活躍できる場を創造し、社会のデジタル化に貢献します。
- 氏名
- 百瀬 卓也(ももせ たくや)
- 社名
- toBE Tech株式会社
- 役職
- 代表取締役

