株式会社ログラス

株式会社ログラス代表取締役CEOの布川友也氏は、SMBC日興証券の投資銀行部門でM&Aや投資先のIPO支援に携わったのち、上場直後のGameWithで経営管理体制の構築を経験した人物だ。

その過程で痛感したのが、多くの日本企業がいまだにエクセルで経営管理を行い、データにもとづく経営判断ができずにいるという現実である。

一方、アメリカでは時価総額1兆円超の経営管理ソリューションを提供する企業が育っている現実を目の当たりにした布川氏は、この領域で日本発のユニコーンを生み出すべく、2019年にログラスを創業。「良い景気を作ろう。」をミッションに掲げ、経営企画の担当者だけで運用できる経営管理クラウド「Loglass」を、日本市場に特化した形で磨き上げてきた。

CFOコミュニティづくりから始まった地道な導入への取り組みは、総合商社系のグループ会社を皮切りに大手企業へと事例が連鎖し、着実に実績を広げている。

創業の原点から大企業への導入、昨今のSaaSを取り巻く環境、10年後のビジョンまで、布川氏の思考の深部に迫った。

布川 友也(ふかわ ともや)──代表取締役 執行役員CEO
1993年、東京都生まれ。2016年、慶應義塾大学経済学部卒業、SMBC日興証券 投資銀行部門に入社。PE、総合商社によるM&Aや投資先IPOアドバイザリー業務を担当。その後、GameWith経営戦略室にてIR・投資・経営管理等を担当。2019年株式会社ログラスを創業、代表取締役に就任。
株式会社ログラス
「良い景気を作ろう。」をミッションとして掲げ、経営管理・企業経営の変革を支援するAIソリューション「Loglass」シリーズを提供。主なサービスは、「Loglass 経営管理」「Loglass IT投資管理」「Loglass 人員計画」「Loglass サクセスパートナー」「Loglass AI IR」「Loglass 設備投資計画」「AIソリューション」。
企業サイト:https://www.loglass.co.jp/

目次

  1. 投資銀行と事業会社で痛感した日本企業の経営管理における課題
  2. エンジニア採用に奔走した創業期とプロダクトに込めた思想
  3. コミュニティ構築と事例の連鎖で実現した大手企業への導入
  4. SaaSを取り巻く環境とAIネイティブへの変革
  5. 経営の「ヒト・モノ・カネ」を最適化するプラットフォームへの展望

投資銀行と事業会社で痛感した日本企業の経営管理における課題

── 起業の原点について教えてください。

布川氏(以下、敬称略) 新卒で入社したSMBC日興証券では、PEファンドによるM&Aや投資先のIPO支援を担当しました。

当時は現在ほどファンドが一般的ではありませんでしたが、非常に重要な役割を担っていました。

ファンドが投資する企業は、事業が停滞しているケースや、大企業のノンコア事業である場合がほとんどです。そうした企業の財務情報や経営管理のエクセルを読み解き、企業価値を算出するのが私の役割でした。

しかし、多くの現場では経営管理が適切に行われていませんでした。

一定規模の企業であっても、各現場で作成されたシートが経営判断に活用されていない状況が常態化していました。

その後、上場直後のGameWithに入社し、管理部長やCFOとともに経営管理体制を一から構築しました。当時は日本企業のほとんどがエクセルで経営管理を行っている時代でした。

一方で、同時期のアメリカでは、ログラスと同じ事業を展開する企業が大型のM&AやIPOを実現していました。 時価総額が1兆円を超えるような企業も現れており、日米の差を痛烈に感じたことが起業のきっかけです。

投資銀行で感じた課題と、事業会社での実務経験、そしてアメリカでの市場変化が重なりました。この領域で日本発のユニコーン企業を生み出す必要があると考え、起業を決断しました。

エンジニア採用に奔走した創業期とプロダクトに込めた思想

── 創業当初、特に苦労したのはどのような点でしたか。

布川 創業1年目は、いかに優秀なエンジニアを集めるかに心血を注ぎました。当時は現在のようにAIが普及しておらず、テクノロジー事業の成否はエンジニアの確保に直結していました。

私はシリアルアントレプレナーでもなく、経営管理というニッチな領域を扱っていました。この領域にどう興味を持ってもらうか、毎日泥臭く採用活動を続けました。

エンジニアのコミュニティに飛び込み、オフ会や宅飲みに参加して信頼関係を築きました。知り合いのフリーランスエンジニアに事業構想を話し、厳しい言葉を投げかけられたこともあります。

そうした日々を積み重ね、ようやく最初のチームを作ることができました。この時期の経験が、現在のログラスの基盤となっています。

── プロダクトの思想には、どのような経験が反映されていますか。

布川 アメリカの競合製品はカスタマイズ性に優れる一方で、高度な運用能力を求められます。IT人材が不足している日本企業では、導入しても運用が難しいという懸念がありました。

そこでログラスは、経営企画の担当者のみで運用できるプロダクトを目指しました。機能に一定の制約を設ける代わりに、手離れよくすぐに使えることを重視して開発しました。

── エクセル管理による業務効率の低下が、最大のボトルネックだったのでしょうか。

布川 業務効率化はあくまで一部の課題に過ぎません。本質的な課題は、データに基づいた経営判断ができず、事業再生が必要な状況に陥る企業が多いことです。

日本の優れた企業が外資ファンドに買収される姿を、私は投資銀行時代に間近で見てきました。自ら経営を改善できれば、ポテンシャルをもっと発揮できるはずです。

テクノロジーやAIを活用し、自分たちで経営をより良くしていく仕組みを作ること。そのためのデータ経営を実現することが、私たちが解決すべき最も重要な課題です。

コミュニティ構築と事例の連鎖で実現した大手企業への導入

── 大手企業への導入実績が豊富ですが、どのように進めたのでしょうか。

布川 大企業は組織が巨大で、部署やグループ会社ごとに意思決定の在り方が異なります。

まずは担当者一人ひとりの悩みを丁寧に聞くことから始めました。当時、経営企画の方々は横のつながりがないことに課題を感じていました。

そこで、CFOコミュニティを無料で立ち上げ、ベンチャーから大企業まで交流できる場を作りました。そのつながりから、商社系のグループ会社様への導入が決まりました。

一つの大きな実績ができると、そこからの展開はスムーズに進みました。「住友商事グループで活用されているなら」と、他の総合商社や通信会社などへ事例が連鎖しました。

大企業の現場には、私たちが想像していた以上に多くの課題が存在していました。そのニーズに真摯に向き合い、事例を一つずつ積み上げてきた結果が現在の実績です。

── 国内市場でログラスが選ばれている本質的な理由は何でしょうか。

布川 担当部門だけで導入・運用できるシンプルさが、最大の特徴です。外資系製品にはない、日本市場に特化したパッケージ型ソリューションを提供しました。

この領域のフロンティアを私たちが切り拓いてきたという自負があります。複雑な要件には外資系が選ばれることもありますが、特定の部門やグループ会社での運用にはログラスが適しています。

── 経営層やCFOとの対話で、特に意識していることはありますか。

布川 その企業が「何を成し遂げたいか」を必ず確認します。経営管理の在り方は、企業のフェーズや哲学によって大きく異なるからです。

コスト削減が最優先の企業もあれば、投資リターンの測定を重視する企業もあります。M&A後の組織統合を目的とする場合もあり、課題の幅は非常に広いです。

しかし、抽象化すれば「利益を出して事業を成長させる」という本筋は共通しています。相手の経営理念を理解したうえで、現在のフェーズで何が重要かを特定するようにしています。

自社製品を売り込むのではなく、相手の課題にマッチするかを徹底的に考えます。この姿勢が、信頼関係の構築につながっていると感じます。

SaaSを取り巻く環境とAIネイティブへの変革

── 昨今のSaaSを取り巻く環境について、どのようにとらえていますか。

布川 SaaSの価値が揺らいでいるのは事実であり、現在は「ハードモード」の時代です。

背景には、開発コストの低下と、UI/UXの主役が人間からAIに代わる「ヘッドレス化」があります。

従来のSaaSは、人間が画面を操作することを前提としていました。しかし、ユーザーがAIに代われば、従来の画面の価値は相対的に低下します。

AIネイティブなプロトコルを持たない製品は、今後存在価値を失うでしょう。ログラスも含め、いかに早くAIネイティブへ変革できるかの勝負です。

── 開発コストの低下は、SaaS企業にとって脅威となるのでしょうか。

布川 開発コストは下がりますが、一方でAIのトークンコストが莫大になるという新たな課題も生じています。本質的な顧客ニーズや業務フローを理解せずにAIを活用しても、価値は生まれません。

ソフトウェアを作る難易度は下がりましたが、業務を深く理解する重要性はむしろ高まっています。特に日本の大企業において、自社でセキュリティを担保しつつシステムを構築するのは容易ではありません。

その課題に対応すべく、お客様の環境に合わせたAIエージェントや意思決定に資するプラットフォームのカスタム開発を手がける事業を立ち上げました。これまでの業務と比較して7割ほど工数を削減できたという事例も出てきています。

一方で、汎用的なAIは単発の分析には強くても、正確性やガバナンスを保ちながら組織で継続的に回すのは難しいのが実情です。経営管理のプロセスを理解した私たちのような開発パートナーが伴走して初めて成立すると考えています。

既存のSaaSは徹底的にAIシフトを完遂しなければ生き残れません。私たちはその変化を先取りし、プロダクトを劇的に進化させる決意です。

経営の「ヒト・モノ・カネ」を最適化するプラットフォームへの展望

── ログラスの導入が、最終的な利益改善につながっている理由を教えてください。

布川 単なるシステム導入や事務効率化を目的としていないからです。私たちの営業チームは、事務効率化だけの提案をしないよう徹底しています。

ビジネスモデルのレベルで、利益率を改善するために何をモニタリングすべきか。その切り口を顧客とともに定義し、システムで可視化することに価値があります。

たとえばホテル事業であれば、エリアごとや支配人ごとの利益率を可視化します。適切な管理会計の仕組みをログラスで表現することで、経営の質的改善を支援します。

── 5年後、10年後のログラスが目指す姿について教えてください。

布川 5年後には日経225に採用される規模の企業を目指します。売上高1000億円を突破し、時価総額も相応の規模に到達させる計画です。

数字は後からついてくるものですが、顧客に提供できる領域を非連続に増やします。「良い景気を作ろう。」というミッションのもと、CFOのAI参謀としての地位を確立します。

バックオフィス領域はAI導入が遅れがちですが、そこへ最適な形でデリバリーするのが私たちの役割です。

10年後には、システム提供にとどまらない「経営プラットフォーム」を構築します。

会社経営とは、ヒト・モノ・カネを調達し、投資してリターンを得る活動です。将来的には、ログラスがその調達や投資の最適化に直接関与する姿を描いています。

証券、銀行、人材紹介など、あらゆる形で経営資源の最適化を支援することで、日本経済の発展に貢献したいと考えています。

氏名
布川 友也(ふかわ ともや)
社名
株式会社ログラス
役職
代表取締役 執行役員CEO

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