
2023年に設立されたEmpire State株式会社は、法人の営業領域に特化したコンサルティングおよびBPO事業を展開し、直近の会計年度では前年度比約300%の成長率を達成。戦略立案からインサイドセールスなどの実行面まで一気通貫で支援し、「柔軟性」「スピード」「生産性」を武器に企業の事業成長を後押しする。
労働人口減少に伴う営業職の不足という社会課題を背景に、「四方良し」の経営理念を掲げる同社は、法人向け不動産事業やワーキングマザー向け人材紹介事業などといった展開を進める。
急成長を遂げる組織の裏側にある独自のマネジメント手法や、AIを活用した未来の組織構想、2033年に売り上げ100億円を目指す今後の展望について、代表取締役社長の板倉小陽氏に聞いた。
目次
Empire Stateのコア事業である営業BPOの全貌
── 事業として行っている営業支援の詳細を教えてください。
板倉氏(以下、敬称略) 弊社は、法人の営業領域に特化した形でサービスを提供しています。具体的には、営業コンサルティングと営業BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が主軸です。ナショナルクライアントをはじめとした大手企業や、資金調達を実施したベンチャー企業の営業支援が中心です。
支援内容は、戦略立案から実行までを一気通貫で担う点が大きな特徴です。
特に、新規事業や新商材の立ち上げフェーズでは、営業体制がまだ整っていない企業も少なくありません。そうしたお客様に対して、弊社ではターゲット選定、リスト設計、営業スクリプトの作成、インサイドセールスによるアプローチ、商談化までを一貫して支援しています。
たとえば、インサイドセールス体制がない企業に対して、初期の営業オペレーションを平均2週間程度で立ち上げ、初月から商談創出につなげるケースもあります。営業人材の採用が難しい中で、弊社が外部営業部隊として稼働することで、企業は機会損失を抑えながら新規開拓を進めることができます。
しかし、戦略だけでは机上の空論になり、実際の売り上げにはつながりません。そこで、私たちが持つ実行力を生かし、インサイドセールスやフィールドセールスを通じて売上をつくっています。
営業戦略の策定では、新規事業や既存事業でどうセールスするか、どのようにお客様を獲得するかという課題に向き合います。
── 戦略だけでなく、実際の結果まで責任を持つということですね。今年の4月からは新規事業も開始したそうですが。
板倉 はい。今年の4月からは、不動産事業を開始しました。また、ワーキングマザーに特化した有料職業紹介の人材事業もスタートしています。
営業支援を軸にしながら、企業の多角的な課題を解決できる体制を整えています。これにより、より深いパートナーシップをお客様と築けます。
「柔軟性・スピード・生産性」という三本柱
── BPO領域ではターゲット選定が重要ですが、メインとなるのはどのような層でしょうか?
板倉 最近は従業員1000人以上の大手企業のお客様が増えており、それが全体の約45%を占めています。業種としては、ITやコンサルティングなどの無形商材を扱う企業が6割以上です。
より具体的には、ある程度、組織が構築されており、かつ無形商材を扱うお客様が弊社の主な支援対象となります。無形商材は営業の難易度が高いものの、弊社のノウハウが最も生きる領域です。
── 競合他社と比較した際、選ばれる一番の理由や優位性はどこにありますか?
板倉 弊社の優位性は「柔軟性」「スピード」「生産性」の三つに集約されます。
まず柔軟性については、ベンチャー企業ならではの型にはまらない支援を徹底しています。たとえば、最初は戦略策定のみで契約したお客様でも、実行が必要になれば即座に体制を変更可能です。お客様の状況変化に合わせ、最適な支援内容を柔軟に提案し、実行に移します。
── スピード感についても、他社とは明確な違いがあるのでしょうか?
板倉 一般的な営業BPO会社の場合、プロジェクトの立ち上げまでに約1ヵ月を要するケースがほとんどです。体制構築や商材のインプットに時間をかけるため、どうしてもスタートが遅れます。
対して弊社は、平均2週間でプロジェクトを立ち上げます。このスピード感は、機会損失を嫌うお客様から高く評価されている特徴です。
── 三つ目の生産性については、どのような取り組みをしていますか?
板倉 弊社はCRM(顧客管理システム)や最新の架電ツールをすべてのプロジェクトに導入しています。一人当たりの架電効率や生産性を数値化し、リアルタイムで管理しています。
日本の営業現場の課題は、担当者がお客様と向き合う時間を十分に確保できていないことです。弊社はツールを駆使して事務作業を効率化し、日中の稼働時間のすべてをお客様との対話に充てます。
「四方良し」をベースに実現した成長率300%
── BPO事業に着目し、創業を決意したきっかけを教えてください。
板倉 新卒で入社した東京海上日動火災保険での経験が、原点にあります。そこで法人営業、特に新規開拓に従事し、営業の難しさと重要性を肌で感じました。
この領域に注目した理由は二つあります。一つは日本の労働人口不足、もう一つは営業職の圧倒的な不足です。日本の労働人口は、今年だけで約700万人不足するといわれています。企業にとって、正社員を採用し、維持すること自体が年々困難になっています。
── 営業職の採用難は、特に深刻な問題として指摘されていますね。
板倉 おっしゃる通りです。営業職の有効求人倍率は、ほかの職種と比較して3倍以上に達しています。多くの企業が営業職を求めているものの、適切な人材を確保できていないのが現状です。
この二つの社会課題を解決する手段として、営業BPO事業を展開しています。プロフェッショナルが営業を代行することで、企業の成長を止めない仕組みを提供します。
── 創業から短期間で従業員数も拡大し急成長を遂げていますが、その要因は何でしょうか?
板倉 経営理念である「四方良し」の考え方を徹底していることが大きいです。「社内」「お客様」「社会」「未来」の四つすべてにとって良い状態を目指しています。
お客様のためになるのは企業として当然とはいえ、創業時から一貫して特に重視していることです。営業の本質は、人に喜ばれて選ばれ、その対価をもらう職業だと考えています。
── 四方良しの中でも、特に「社内」に対する思いが強いとうかがいました。
板倉 メンバーには、弊社で働く時間を「人生の消費」ではなく「投資」にしてほしいと考えています。貴重な時間を使ってもらう以上、それに見合う成長や報酬を提供することが私の責任です。
そのため、社内は非常に筋肉質な組織になっています。強豪校の運動部のような、高い目標に向かって切磋琢磨する文化が根付いています。
── 具体的な成長率はどれくらいなのですか?
板倉 昨年度との比較でいうと、今期の成長率は約300%に達する見込みです。この高い成長率を維持しているのは、個々のメンバーがプロ意識を持って業務に励んでいるからです。組織が拡大しても、この「筋肉質」な文化は守り抜きます。
── 組織が急拡大する中で、苦労したことはありましたか?
板倉 過去には、人に期待しすぎてしまったことで苦しんだ時期もありました。私はもともと性善説で生きてきましたが、それが裏目に出る経験もしました。
人を信じることは大切ですが、経営者として組織を守るためには、仕組みで解決する視点も必要です。その原体験を乗り越えたことが、現在の強固なマネジメント体制につながっています。
── 板倉社長ならではのマネジメントのこだわりはどういったものですか?
板倉 「自分ができないことを人に頼まない」を徹底しています。自分が理解していない、解像度が低い状態で指示を出しても、目的や主旨がブレてしまいます。
自分が依頼した通りの結果にならないのは、依頼する側の自分の解像度が低いことが原因です。そのため、必ず自分の中で解像度を高めてから、明確な言葉で依頼するようにしています。
自社ビルで仕事・育児・介護を完結させる構想
── 営業BPOから不動産、人材へと事業の多角化をする理由について、詳しく教えてください。
板倉 不動産事業については、将来的に自社ビルを持ちたいという明確なビジョンがあります。そのビルは、単なるオフィスビルではありません。
1階に小児科やスーパー、保育園を入れ、2階に自社のコールセンターを配置します。そして3階には介護施設を設ける構想です。
弊社で働くワーカーがそのビルに来れば、育児も仕事も介護も、すべて完結できる世界観です。働く人々が安心して一日を過ごせる場所をつくる目標を持っています。
── 非常に壮大なビジョンですね。営業支援のお客様とのシナジーもあるのでしょうか?
板倉 はい。弊社に営業支援を依頼する企業は、成長過程にある場合がほとんどです。成長企業は従業員が増え、新しい拠点を構える必要性が必ず出てきます。
最前線で営業をサポートしている私たちが、拠点の選定や戦略もサポートするのは自然な流れです。また、弊社の不動産事業責任者が前職で富裕層向けの資産運用を経験し、不動産の一棟物件を扱っていたため、その点での強みもあります。
── 人材事業についても、働く女性の支援という側面が強いのでしょうか。
板倉 弊社のワーカーの8割は女性であり、その多くがワーキングマザーです。家庭の事情でリモート環境でしか働けないものの、非常に高い能力を持つ方々がたくさんいます。
こうした方々が社会で活躍できる場を広げなければ、日本の労働力不足は解消しません。ワーキングマザーの背中を押し、社会復帰を支援する手段として人材紹介を始めました。
AIが中間管理職を代替する組織をつくる
── 今後の展望について、どのような時間軸で目標を立てていますか?
板倉 まずは早々に年間売り上げ10億円達成を目指し、2033年までに売り上げ100億円企業となります。そのための戦略として、複数の事業を展開するコングロマリット経営を推進します。
一つの事業に固執してしまうと、現在の激しい市場環境ではリスクが高い。一本足打法ではなく複数の強い事業を持つことで、挑戦し続けられる企業体をつくります。
── 今後、進出を検討している領域はありますか?
板倉 次はIT領域、特にSIerやシステムコンサルティングの分野に注力する予定です。また、自社で情報やコンテンツを持つプラットフォーマーとしての展開も考えています。
情報を蓄積し活用できる企業でなければ、これからの時代を生き残ることは困難です。法人や個人のデータを蓄積し、新たな価値を生み出すプロダクトを開発します。
── その目標を達成するために、どのような投資を行いますか?
板倉 「人」と「システム」への投資が最優先です。
人については、プロフェッショナルな中途採用に加え、今後は新卒採用も開始します。中途採用で既存事業にレバレッジをかけ、新卒採用で弊社のカルチャーを醸成する考えです。
システム面では、特にAIを活用した組織改革に投資します。
── AIを活用して、どのような組織を目指しますか?
板倉 私は管理業務の一部をAIで代替し、現場と経営の距離を縮める組織をつくりたいと考えています。中間管理職の役割をAIが一部補完することで、現場の声が直接経営層に届くようになるからです。
意思決定のスピードを極限まで高めることが、弊社の競争優位性をさらに強固にします。AIを単なる検索ツールではなく、マネジメントの基盤として活用します。