この記事は2026年9月18日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「韓国における女性雇用の進展と残された課題」を一部編集し、転載したものです。
(国家データ処「経済活動人口調査」ほか)
韓国では近年、女性の労働市場への参加が着実に拡大している。国家データ処の「経済活動人口調査」によれば、15~64歳の女性の就業率は2014年に55.0%だったが、25年には63.0%に上昇している。男性の就業率が同期間で76.0%から76.5%とほぼ同水準で推移したことと比較すれば、男女間の就業率格差は着実に縮小しており、女性雇用の改善傾向が継続していることがうかがえる。
韓国女性の年齢別労働力率に見られる特徴的なM字カーブも、近年では徐々に緩和されている。具体的には、30~34歳女性の労働力率は14年には59.9%だったが、25年には77.3%と17.4ポイント上昇している。同様に、35~39歳でも同期間で56.8%から72.4%と15.6ポイント上昇した。その結果、14年には年齢階層別労働力率で明確な「谷」を形成していた30代の落ち込みが、25年には大幅に解消されている。
とはいえ、男女間の就業率および労働力率の格差は依然として残っている。しかも、女性雇用を巡っては「量」だけでなく「質」の面でも重要な課題を抱えている。よく指摘されるのが、女性は男性に比べて非正規雇用に従事する割合が高いことだ。
25年8月時点で非正規労働者は856万8,000人に上り、賃金労働者全体の38.2%を占めている。このうち女性は491万8,000人であり、女性賃金労働者の約47%が非正規労働者として働いている(男性の非正規労働者比率は約30.5%)。
こうした雇用形態や就業条件の違いを背景とし、男女間の賃金格差も開いたままだ。韓国はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で男女間の賃金格差が最も大きく、21年の男性の賃金水準は女性と比べて31.1%高い。これは、OECD加盟国平均(12.0%)だけでなく、男女格差が大きいとされる日本(22.1%)と比べても、さらに高い水準にある。こうした格差の背景には、女性の非正規雇用比率の高さに加え、職種・産業・企業規模による男女の分布の違いや、出産・育児に伴うキャリア中断など、複数の要因がある。
韓国政府は06年から「積極的雇用改善措置」を導入し、女性雇用率や女性管理職比率が一定の基準を下回る企業に対して改善を求めてきた。その結果、一部の対象企業では女性雇用率や女性管理職比率に一定の改善が見られるが、制度の適用対象が原則、大企業(常時500人以上の労働者を雇用する事業所)および公共機関に限られている。つまり、女性雇用の改善効果は中小企業を含む労働市場全体には十分に及んでいない。
今後は制度の適用範囲を広げるとともに、男性の育児休業取得促進、柔軟な働き方の普及、出産後の継続就業・再就職支援を強化する必要がある。人口減少が急速に進む韓国にとって、女性が能力を十分に発揮できる労働市場を構築することは、男女平等だけでなく、経済成長と少子化対策の観点からも重要な政策課題といえる。
ニッセイ基礎研究所 上席研究員 亜細亜大学 都市創造学部 特任准教授/金 明中
週刊金融財政事情 2026年9月22日号