この記事は2026年9月18日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「進む投資家の選別志向で、調整局面では物件価格に明暗」を一部編集し、転載したものです。


進む投資家の選別志向で、調整局面では物件価格に明暗
(画像=Imagepocket/stock.adobe.com)

日本銀行が利上げを進めるなか、市場参加者にとっての目下の懸念は、金利上昇が不動産市場を冷やすのかである。足元の市況は好調だ。調査会社のMSCIリアル・キャピタル・アナリティクスによると、2026年上期の国内不動産取引額(9月18日時点で判明している1,000万ドル以上の取引を集計)は約4兆7,000億円に上った。前年同期比3.3%の増加で、07年の統計開始以来の最高水準で推移している。ただし、その中身を詳しく見ていくと次のような動きを示す。

一つ目は「投資対象の変化」。収益化までに時間を要する開発用地よりも、すでに収益を生んでいる既存物件が選ばれている。国内不動産取引額に占める開発用地の割合は、21~25年平均の12%に対し、26年上期は5%に低下した。外国資本の投資傾向はより顕著で、取得額に占める開発用地の割合は、同期間における年平均の7%から0.4%に低下している。背景には、建築費の高騰で開発事業費を見通しにくくなっていることもある。

二つ目は「500億円以上の超大型取引の増加」。取引額全体に占める同取引の割合は、21~25年の半期平均である19%に対し、26年上期は28%に上昇した。ポートフォリオ取引でも、それを構成する個別の物件が大型化する傾向にある。一方、100億円以上500億円未満の取引の割合は26年上期が30%で、同期間における半期平均(31%)とほとんど変わらない(図表)。

三つ目は「ポートフォリオの組み替え」。例えば、20年前後に取得して価格が上昇した賃貸マンションやホテルを売却して利益を確定し、今後の安定収益が期待されるオフィスへ投資対象を移す事例がある。

不動産の利回りは低位で推移しており、金利上昇により、これまでの低金利での資金調達を前提とした投資戦略は変更せざるを得ない。賃料上昇や収益改善などによって金利上昇の影響を吸収できない物件では、価格調整圧力が強まると予想される。

足元では、開発用地への投資減少や保有資産の入れ替え、大型・優良物件への資金流入が生じている。これらは、市場参加者が環境変化を見越し、安定収益を見込める物件への入れ替えなどを図って価格調整に耐えられるポートフォリオへ見直しを進めていることを示唆する。

先行きの不透明感が高まるなか、不動産価格が実際に調整局面に入れば、その下落幅や調整期間をあらかじめ見通すことは難しい。今後は、金利上昇への耐性や収益成長力により、物件間の価格差が広がるだろう。

他方、資金余力のある投資家にとっては、価格下落は取得機会にもなる。こうした調整局面で、新たな取得機会を生かせる投資家と、資産売却を迫られる投資家の間で二極化が進むと予想される。

進む投資家の選別志向で、調整局面では物件価格に明暗
(画像=きんざいOnline)

ニッセイ基礎研究所 准主任研究員/渡邊 布味子
週刊金融財政事情 2026年10月6日号