この記事は2026年10月9日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「就職難と人手不足が併存する韓国の若年層雇用事情」を一部編集し、転載したものです。
(韓国教育開発院「教育統計分析資料集」ほか)
韓国では、若年層の雇用を巡るミスマッチが深刻な問題となっている。企業が人手不足を訴える一方、若者が「希望する仕事がない」と嘆く声も少なくない。その背景には、①大学進学率の高さ、②大企業と中小企業の間に存在する賃金や福利厚生、雇用安定性などの待遇格差──がある。
韓国の大学進学率は73.6%(2024年)で、依然として高い水準にある。大学卒業後に、賃金や福利厚生、雇用の安定性の面で条件が比較的良い大企業や公企業への就職を希望する若者が多い。しかし、こうした「良質な雇用」の数は限られる。そのため、希望する職場への就職を目指し、卒業後も就職活動を続ける「就職浪人」が少なくない。実際、24年の4年制大学卒業者の就業率は62.8%にとどまった。
こうした就職先を巡る厳しい状況は、博士号取得者にも波及している。25年の新規博士号取得者調査では、全調査対象者の33.3%が就業していなかった。未就業者の割合は30歳未満で51.1%、30~34歳でも44.2%に達する。大学教員や政府系研究機関、大企業の研究開発職など、博士号取得者の専門性を生かせる職が十分に増えていないことも、その背景にあるとみられる。
一方、中小企業や地方企業では慢性的な人手不足が続いている。若者が条件の良い職場を求めて就職活動を長引かせる一方で、これらの企業は必要な人材を確保できずにいる。
こうした構造的なミスマッチ問題を考える上で、参考になるのが日本だ。日本では、大学進学に加えて専門学校への進学も広く定着している。専門学校では医療や福祉、情報、観光、美容、自動車整備など職業に直結する教育が行われており、卒業生には企業の規模だけでなく、学んだ専門性を生かせるか否かを重視して就職先を選ぶ道がある。教育と職業とのつながりが明確であることは、企業が求める能力との隔たりを小さくしながら、若年層の就職や雇用ミスマッチの緩和に寄与している可能性がある。
韓国の雇用問題を解決するには、若者に中小企業への就職を促すだけでは不十分だ。大企業と中小企業の賃金・労働条件の格差を縮小すると同時に、大学進学だけを成功の基準とする社会的認識も見直す必要がある。その際に、専門大学や職業教育機関の教育内容を産業界の需要とより密接に結び付け、若者が自らの技能と専門性を基準に職業を選べる環境を整える必要がありそうだ。韓国社会において、学歴ではなく技能と専門性が正当に評価される労働市場をつくることが、雇用ミスマッチを抑制するための近道といえるかもしれない。
ニッセイ基礎研究所 上席研究員/亜細亜大学 都市創造学部 特任准教授/金 明中
週刊金融財政事情 2026年10月13日号