この記事は2026年10月23日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「27年の大統領選を控え、再び高まるフランスの財政懸念」を一部編集し、転載したものです。


27年の大統領選を控え、再び高まるフランスの財政懸念
(画像=zzzz17/stock.adobe.com)

フランスで、高校生を中心とする抗議活動(デモ)が広がっている。発端は、教員不足や校舎の老朽化への不満であり、教育予算の拡充を求める声が全国に波及した。仏政府は、教育予算を拡充して教員数の増加を図る方針を示したが、財政再建が急務となるなか、追加支出への要求により、一段と難しい立場に追い込まれている。

財政運営に対する市場の警戒も強い。仏10年国債利回りは、今年10月初めに4.9%台後半という約24年ぶりの高水準まで上昇した。財政の信用リスクを示す独国債との利回り格差(対独スプレッド)は一時150bpを超え、ユーロ圏内でも金利が高いことで知られるイタリアやギリシャの対独スプレッドを大きく上回る水準で推移している(図表)。

仏政府は10月1日、2027年度予算案を閣議決定した。景気が停滞する中で広範な増税は見送られたものの、公務員給与や社会保障支出を中心とした歳出削減によって430億ユーロの財政改善を図り、財政赤字を26年度の名目GDP比5.4%から27年度には同5.0%へ縮小する計画である。

だが、予算成立への道筋は険しい。現在の仏国民議会(下院)は、いずれの勢力も議席が過半数に満たない「ハングパーラメント」と呼ばれる状況だ。予算成立には与野党間での調整が欠かせないが、市場からの財政健全化圧力が高まるなか、社会保障の拡充や減税を求める野党との交渉は、仏政府にとって困難を極めるだろう。今後、①野党に譲歩して予算案を修正する、②与野党が合意できず26年度予算をおおむね引き継ぐ暫定予算を組む──のいずれのシナリオでも財政再建は遠のくこととなる。

さらに、27年春には大統領選が控えている。直近の世論調査では、極右政党「国民連合」(RN)の実質的指導者であるマリーヌ・ルペン氏の支持率が、他候補を大きく上回っている。

同氏は10月、30年までに財政赤字を名目GDP比3%未満に抑える計画を提示したが、歳出抑制策として掲げられた移民関連支出やEU(欧州連合)への拠出金の削減、政府機関の合理化などの実現性には疑問が残る。また、日本の消費税に該当する「VAT」の減税や年金受給開始年齢の引き下げも同時に掲げている。こちらは大統領選後に実施が予想される下院の解散総選挙でRNが勝利すれば、十分に実現可能である。歳出削減は進まない一方、歳入減や歳出拡大のみが先行することで、財政赤字はむしろ拡大する恐れもある。

不安定な政治情勢が続くなか、フランスの財政状況を巡る懸念は拭い難い。金利上昇による景気の悪化や利払い費の膨張が財政をさらに圧迫する悪循環に陥る恐れもある。同国の長期金利は当面、高止まりする公算が大きい。

27年の大統領選を控え、再び高まるフランスの財政懸念
(画像=きんざいOnline)

伊藤忠総研 副主任研究員/高野 蒼太
週刊金融財政事情 2026年10月27日号