紙書籍と電子書籍の価格差・・・意外に知らない理由は消費税にあった-620x330

絶大な人気を誇っている漫画の1つに『ONEPIECE』がある。インターネットでコミックを購入している人も多いのではないだろうか。その時に気付いた人もいるかもしれないが、紙書籍版と電子書籍版では価格が違うのだ。

楽天ブックスの書籍コミックである『ONE PIECE(75巻)“おれの恩返し”(ジャンプ・コミックス)』で価格を比較してみる。紙書籍版の場合は『432円(税込)』、一方の電子書籍版の場合は『400円』だ。ここでは2つのことに注目してもらいたい。1つは電子書籍版の方が安いということだ。「紙を使わず、配信だけで済むのだから当たり前ではないか?」とお思いの方もいるかもしれない。確かに原材料費、物流費がかからないから安くなるという観点も間違いではない。

しかし、ここでもう1つの点について注目しておこう。それは電子書籍版には『(税込)』という表示がなく、消費税が課税されていないことである。紙書籍版と電子書籍版の差額である32円は400円のちょうど8%となる。つまり、楽天グループからしてみれば、売り上げは同じであるが、購入者から見れば、電子書籍版の方は、消費税8%分が安く購入できるのだ。なぜなら、電子書籍は、海外から配信されており、消費税が課税されていないからだ。


国外事業者に対して消費税課税へ

楽天 <4755> は日本国内の企業であるが、電子書籍の配信を行っている楽天koboを運営しているKobo社はカナダのトロントに本社を構えている。

現在、日本の税制では「電子書籍・音楽・広告の配信などの役務の提供が国外事業者によって国境を越えて行われた場合、国外取引として消費税の課税対象外とされて」いる。よって、「提供者の違いによって最終的な税負担に差異が生じており、国内外の事業者間で競争条件に歪みが生じている」状況だ。

これについて自民党税制調査会は来年度の税制改正で海外企業に対しても、国内の企業と同様に、来年10月から消費税の納税を義務付ける方針を固めた。衆議院総選挙において自公政権が継続することが決まり、消費税も2017年4月からは10%となることが、ほぼ確実となったため、現行の制度では消費者向け取引においては消費税率が引き上がるにつれて、海外企業が有利になり、国内企業が苦戦することになる。この是正を図ろうというのが、今回の国外事業者に対する消費税課税の検討だ。