不動産に関する税金は大きく分けて2種類ある。

1つは購入時に発生する税金、もう1つは保有時に掛かる税金だ。購入時に発生する主な税金には「不動産取得税」と「登録免許税」があり、保有時に掛かる税金には「固定資産税」と「都市計画税」がある。この4種類の税金のなかで、軽減措置が最も複雑で、かつ軽減措置によるインパクトが最も大きいのが不動産取得税だ。今回は、この不動産取得税について、その軽減措置をまとめてみた。


個人の住宅取得に手厚い軽減措置

不動産取得税とは、不動産を取得することによって課税されるもので、不動産の所在する都道府県が課税する地方税だ。ここで言う不動産の取得には、有償・無償を問わず、売買・交換・贈与・新築・増改築が含まれる。相続や土地区画整理事業の換地による取得などは含まれない。

実はこの不動産取得税、個人が居住用の不動産を取得する際は、実質的に税額がゼロになる場合が多い。一般的な個人が購入する住宅規模に合わせて、なるべく不動産取得税が発生しないよう軽減措置がとられているからだ。


新築建物の軽減措置

まずは建物の不動産取得税に関する軽減措置を見てみよう。税額は「(建物評価額―控除額)×3%」で計算するが(平成30年3月31日まで)、一戸建てもマンションも自分で住むために新築住宅を購入した場合、床面積が50~240平方メートルであれば、建物の評価額から1,200万円が控除される。240平方メートル以上の建物となると、個人が住む家としてはかなり大きい部類に該当する。

建物の評価額は新築価格の60%程度とされているので、例えば2,000万円の新築建物だと、建物評価額は約1,200万円となる。その場合の不動産取得税は「(建物評価額1,200万円―控除額1,200万円)×3%=0」となる。つまり建物の不動産取得税は、新築価格が2,000万円以上のときに発生してくるイメージだ。


中古建物の軽減措置

中古住宅においても買主の居住用として取得する場合は、同様の要件だ。ただし、中古住宅の場合は、1982年(昭和57年)1月1日以降に建築されたものか、もしくは新耐震基準に適合していることの証明がされたものという要件が付いている。1982年より前に建てられた中古住宅を購入する場合は注意が必要だ。また、旧耐震の建物を購入する場合、安全性は確認しておいた方が良いので、不動産取得税に関わらず耐震診断を取ることをお勧めしたい。


投資用マンションの場合はどうか

一方で、賃貸マンションを購入する場合、不動産取得税の軽減の面積要件は40~240平方メートルだ。一般的なワンルームマンションは25平方メートル程度なので、不動産取得税の軽減措置は受けられない。ただ、ファミリータイプの投資用マンションは入居者探しに苦戦する場合が多く、賃料単価も低いため、投資用であれば不動産取得税を払ってでも、25平方メートルのワンルームマンションを購入した方が良いだろう。


土地の軽減措置

次に土地の不動産取得税の軽減措置を解説する。土地の軽減措置は住宅用に限定されており、オフィス用地などには適用されない。土地の不動産取得税の基本形は「土地評価額×(1/2)×3%」だ(平成30年3月31日まで)。これを①とする。

次に「(土地評価額×(1/2)÷土地面積)×(住宅の床面積)×2×3%」を求める。これを②とする。ただし、この床面積は1戸につき200平方メートルまでが限度だ。

この②が45,000円以上であれば、①から②を控除した金額が土地の不動産取得税となる。


具体例でインパクトを確かめる

上述の軽減措置は極めて複雑な式なので、具体例で見ていこう。土地評価額7,200万円、土地面積125平方メートル、住宅の床面積100平方メートル、建物評価額1,260万円という物件があるとする。

まず上述の①は「7,200万円×(1/2)×3%=108万円」となる。次に②は「(7,200万円×(1/2)÷125平方メートル)×100平方メートル×2×3%=172万8,000円」となる。これは45,000円より高いため、①の108万円から②の172万8,000円を控除するとマイナスとなる。よってこの例の場合は、不動産取得税は課税されない。


注意すべきは中古住宅の購入

以上、不動産取得税の軽減措置を見てきた。個人が普通サイズの住宅を購入する際は、課税されないケースが多いことをご理解いただけたであろうか。一般的な住宅を購入する際は不動産取得税をあまり意識する必要はない。あえて言えば、1982年より前に建築された建物を中古で購入する際は注意が必要だ。この場合は耐震診断を取って、まず安心感を得たい。次に不動産取得税の軽減も忘れずに獲得するのが良いだろう。