(写真=PIXTA)
「企業型」の仕組みは基本的に「会社」が掛金をかけ、「加入者」が運用し、原則60歳以降になったら受け取るというものです。この「会社」とは厚生年金の適用事業所で、会社規模は問われません。「加入者」となれるのは60歳未満の厚生年金被保険者で、規約に定めることで65歳まで加入でき、社長や役員も加入できます。
「会社」から見ると、運用リスクがない
会社は掛金をかけていくだけで運用は加入者が行います。そのため会社にとっては積立不足が発生しません。受取額が増えたかどうかは加入者の運用しだいです。
掛金は給与とはみなされません。たとえば社員に給与をUPするかわりに確定拠出年金の掛金をかけると、社員は税金・社会保険料の負担も増えず、会社にとっても社会保険料の負担が増えずに経済的メリットを享受することができます。掛金は全額損金となります。
ただ導入に伴い費用が発生します。説明会や投資教育も行わなければなりません。これらは外部委託ができますが、一般的に費用がかかります。また導入後は運営に付随する手続きが必要なほか、継続的に金融機関に対して運営関連手数料がかかります。
この手数料を、会社と加入者のどちらで負担するかは規約で決められますが、「うちの企業型加入者の間は会社が全額負担する」としているのが一般的です。なお手数料は金融機関によって異なります。
雇用形態の変化に伴い、優秀な人材の確保には、人事制度や福利厚生制度の整備が求められています。その点、確定拠出年金は60歳前に中途退職しても基本的に続けていく仕組みなので、転職先に「企業型」があれば手続きがスムーズで複利厚生の充実につながります。
これにより優秀な人材確保においてプラス効果が期待できます。また投資やライフプランなどの継続的な教育も自立型の社員を育成する土壌づくりになります。
「加入者」にとっては、自分の年金資産がはっきりする
一方、加入者にとって安心なところは、受給権が手厚く保護されているところです。会社の経営が傾いてきたからといって、残高が減額される心配はありません。確定拠出年金は入社して3年以上の方であれば残高は100%保全されます。また自己破産した場合でも差し押さえの対象とはならず、離婚時の年金分割の対象にもなりません。
さらに年金資産は個人ごとに管理され、インターネットなどで残高や運用利回りなどが「見える化」されているため、ライフプランが立てやすいのです。自分の受取額は会社に左右されず自分の運用しだいという点も透明性が高いといえます。
「加入者」が注意すべき3つのポイント
そのほか税金の優遇を受けながら老後資産を準備できる点などもあります。ところで、注意点もいくつかあります。
①50歳以上で加入する人は受給開始年齢を確認
確定拠出年金は10年以上加入していれば、60歳から受け取れます。他の制度から移換した場合は、その加入期間も通算できます。10年に満たない場合は受取開始年齢が引き上がります。遅くとも65歳で受給できますが、50歳代で新たに加入する人は受取開始年齢の確認をしましょう。
②中途退職したら6か月以内に手続きを
60歳未満で中途退職するとその会社の「企業型」の加入者でなくなるため、自分で6カ月以内に手続きが必要です。なにもしないで6カ月経過してしまうと、自動的に年金資産は国民年金基金連合会に移換され、手続きに手数料がかかるので注意しましょう。
③想定利回りを意識して
従前の退職給付制度を見直して確定拠出年金に移行する場合には、掛金をどれほどの利回りで運用すれば変更前と同じ水準の受取額になるかという「想定利回り」があります。「想定利回り」を下回る運用だと制度変更前より受取額が少なくなってしまいます。「よくわからない」と他人事に捉えず、自分の老後資金なのですから主体的に運用していきましょう。
宮一 幸子(みやいち・さちこ)
ファイナンシャル・プランナー。CFP、FP技能士(1級)、キャリアコンサルティング技能士2級、DCプランナー1級、DCアドバイザー(DC協会)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)。宮一FP事務所 会社URL:http://miyaichi3.jimdo.com/
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