消費者物価指数(9月)

9月の消費者物価上昇率(前年同月比、以下CPI上昇率)は、国際商品市況の下落が続いたほか、景気減速によるインフレ期待の後退を受けて低めの伸びとなった(図表5)。

アジア新興経済 図5

マレーシア(前年同月比+2.6%)とインドネシア(同+6.8%)は、通貨安による輸入インフレの上昇圧力を受けつつも、イスラム教の断食明け大祭の消費需要の増加による上昇圧力が剥落した前月に続いて小幅に低下した。またフィリピンは同+0.4%と、干ばつ対策であるコメの輸入量拡大の影響を受けて食料品価格を中心に7ヵ月連続で低下した。

一方、インドは同+4.4%と、モンスーン期(6-9月)の雨不足が食料品価格の上昇圧力となり、3ヵ月ぶりに上昇した。台湾は同+0.3%と、大型台風の影響で野菜や果物などの食料品価格が上昇して今年初のプラスに転じた。


金融政策(10月)

10月は、韓国・インドネシアの中央銀行で金融政策会合が開かれたが、金融政策は両国共に据え置きとなった。

韓国は昨年8月以降、段階的に政策金利が引き下げられてきたが、足元では内需の回復傾向もあって4ヵ月連続で据え置かれている。しかし、輸出は中国経済の減速を受けて停滞しており、今後は米利上げに伴う資金流出や日本の追加緩和による円安ウォン高などのリスクを抱えていることから、年内にも追加利下げに踏み切る可能性はあると思われる。

インドネシアでは、米利上げ観測の後退によってルピア安に歯止めがかかったものの、金融市場の不確実性を考慮して据え置いたと見られる。なお、中央銀行は先行きの経済成長の加速やインフレ率の低下などマクロ経済が改善すると見ており、利下げできる環境が整ってきたと示した。


金融市場(10月)

10月のアジア新興国・地域の株価は、全ての国・地域で上昇した(図表6)。

月上旬は米連邦準備理事会(FRB)による年内利上観測が後退したほか、中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)の改善を受けて景気減速懸念が後退し、これまで売られていたアジア株が買い戻される展開となった。その後は、月下旬のFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けて年内利上げが改めて意識され、アジア株はやや下落した。

国別に見ると、インドネシアはインフレ圧力の後退と政府の経済対策の公表、台湾は経済の結びつきが強い中国の景気減速懸念の後退が株価上昇に繋がった。為替(対ドル)は、米利上げを巡る市場の見方に揺れる展開となったが、総じてこれまで売られてきた新興国通貨が買い戻される動きが広がった(図表7)。

国別に見ると、インドネシアはインフレ圧力の後退と政府の経済対策の公表、韓国は金融政策会合で政策金利が据え置かれて利下げ観測が後退したことが通貨上昇に繋がった。

アジア新興経済 図6-7