10月の注目ニュース、今後の注目点など
◆韓国・台湾:2015年7-9月期GDPを公表(23日、30日)
韓国では23日、台湾では30日に2015年7-9月期のGDP統計が公表された。7-9月期の実質GDP成長率は、韓国が前年同期比+2.6%と前期の同+2.2%から上昇する一方、台湾が同▲1.0%と前期の同+0.5%から低下した。
韓国は中東呼吸器症候群(MERS:Middle East Respiratory Syndrome)が終息に向かったことや政府の景気刺激策、中央銀行の利下げなどから内需主導の景気回復が見られた。一方、台湾は輸出低迷が消費・投資へと悪影響が波及して6年ぶりのマイナス成長となった。
また台湾政府は同日、急速な景気の冷え込みへの対応として40.8億元を投入し、GDPを154億元押上げる消費振興策を公表した。
◆台湾:国民党が総統選候補を朱主席に差し替え(17日)
台湾では17日、与党・中国国民党が臨時の党大会を開催し、来年1月の総統選の公認候補を洪秀柱・立法院副院長から朱立倫氏・国民党主席に差し替えた。
国民党は7月の国民党大会で洪氏を公認候補に決めていたが、これまでの国民党の対中融和路線に対する世論の厳しい評価に加えて洪氏の統一志向の強い発言もあり、世論調査では民主進歩党の公認候補である蔡英文氏に大きくリードを許していた。
ただ、朱氏が候補となっても政権交代は免れないとの見方が多く(*2)、今回の決定は総統選と同日に実施される立法院選挙で大敗を免れるためと見られている。なお、朱氏は現職の新北市長職を休み、総統選に専念するとしている。
◆マレーシア:2016年度政府予算案を発表(23日)
マレーシアでは23日、政府は2016年度政府予算案を発表した。歳出は前年度比+2.5%の2,672億リンギ(うち経常支出が2,152億リンギ、開発支出が520億リンギ)、歳入は同+1.4%の2,257億リンギとした。財政赤字(GDP比)は3.2%と前年度から0.1%縮小し、財政健全化を維持した。
620億リンギ(原油価格1バレル100ドル時)ほどあった政府の石油関連収入は、原油価格が1バレル50ドル前後まで下落したことによって2015年度は439億リンギまで減少している。政府は2016年も原油価格が低迷すると見込み(1バレル48ドルと想定)、石油関連収入は317億リンギと見積っており、歳入不足は今年4月に導入したGSTによる増収分(210億リンギ)で補う構図となっている。
このほか新たに中間層に対する生活支援策を打ち出す一方、高所得者と非居住者に対する所得税率の引上げなど分配政策を強化した。
◆11月の主要指標:マレーシア・タイ・インドネシア・フィリピン・インドでGDP公表
11月は、マレーシア(13日)・タイ(16日)・インドネシア(5日)・フィリピン(26日)・インド(30日)で2015年7-9月期の国内総生産(GDP)が公表される。
マレーシアは4-6月期に見られたGST導入前の駆け込み需要の反動による下押し要因が縮小して成長率が上向きに転じるか、またインドネシア・フィリピンでは予算執行の加速で公共投資が景気の牽引役になるか、そしてインドでは年明けから進んだインフレ圧力の後退と段階的な利下げによる内需主導の景気回復が見られるか注目したい。
当研究所では、マレーシアが前年同期比+4.7%、タイが同+2.5%、インドネシアが同+4.7%、フィリピンが同+5.7%、インドが同+7.0%を予想する(9月18日時点の見通し)。
(*1)政府は8月に消費刺激策として、同月27日から年末までの期間限定で乗用車や大型家電製品に課される個別消費税を引き下げることを決めた。乗用車の個別消費税は従来の5%から3.5%に引き下げられた。
(*2)台湾指標民調の世論調査(10月15日公表)によると、洪秀柱氏の支持率が16%、蔡英文氏の支持率が47%であるが、朱立倫氏が候補となった場合は朱立倫氏の支持率が21%、蔡英文氏の支持率が45%と、両党の支持率の差が若干縮小する
斉藤誠
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
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