米FRB(米連邦準備理事会)による12月の利上げをマーケットはほぼ織り込んだとみてよいだろう。米連邦公開市場委員会(FOMC)は10月28日の声明文の中で、「年内での利上げ」ということに言及している。

11月6日に米労務省が発表した10月雇用統計で、非農業部門雇用者数は27万1000人増となり、2014年12月以来の水準で市場予想の18万人を大きく上回った。失業率においても、5.0%に低下している。市場予想の5.1%より改善しただけでなく、2008年4月以来の約7年半ぶりの水準まで低下している。

また、FRBの動向を市場がどのように織り込んでいるのかを知るFF(フェデラルファンド)金利先物は、11月14日時点で70%となっている。

こうした背景から、市場はFRBによる12月の利上げが行われる可能性が濃厚であると受け止めている。それでは、米国が利上げに踏み切ることで世界経済へはどのような影響を与えるのだろうか。


米国利上げが世界の経済に影響を与える理由

まず、米利上げが、なぜ世界の経済に影響を与える可能性があるのかを説明すると、米ドルが基軸通貨であることが理由として挙げられる。世界の商取引の多くがドルを資金決済で利用することから、一定のドル需要が常にあり、そして、そのドルを調達する金利が上昇することが避けられないためだ。

また、為替レートは金利差の影響のみで変動するわけではないものの、日本や欧州などの先進国と比して高金利である米国のドルが買われる展開になれば、為替レートで自国通貨安ドル高のため、ドルを調達する費用が増加する可能性がある。


新興国への影響は大きい

自国通貨安になるということは、輸出系企業にとっては競争力が高まることから恩恵も多く、実際、日本ではアベノミクス政策の3本の矢のひとつである、大胆な金融政策(日銀による量的金融緩和)の結果、ドル円相場は120円台まで回復し、大手メーカーなどの輸出企業業績が改善したことで、外需関連銘柄の多い日経平均株価も一時、2万円台まで回復したのは記憶に新しいはずだ。

しかしながら、このような恩恵を受けることができるのは、先進国くらいだろう、日本や日本企業は、格付け機関の外部格付けも高く、比較的容易にドル資金を調達をすることができる。国際通貨である円決済が可能かつ、マーケットインパクトをあまり与えることなく、他国通貨へ交換することも可能となっている。

一方の新興国においては状況は異なる。いくら輸出競争力が高まっても、自国の格付けは低く、債券発行や借り入れでのドル資金調達の際は、非常に高い金利とならざるを得ない。

その結果、消費が伸びる前に借り入れを返済することができず、デフォルトする企業が増える可能性が高い。何より、消費をけん引しているのも中国をはじめとした新興国のため、企業のデフォルトと失業増、それによる消費低迷といった負のスパイラルに陥るのである。

そして、消費をけん引している新興国の低迷は、着実に先進国にも影響を与えることになる。日本を例に考えてみよう。企業が円安の恩恵で輸出が伸びると考え、量的緩和で低金利のうちに融資を受け、設備投資などを図ろうとしたが、海外で景気が低迷していないのは米国くらいである。中国等の新興国での売り上げが減少したことで、円安効果以上に営業利益が悪化、有利子負債が増加したことで、倒産へ向かうという流れも容易に想像できるのではないだろうか。


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