予防のための費用は医療費控除対象にならない

最後の論点は、インフルエンザワクチン接種料を個人が負担した場合や、事業主が負担したものの上記の要件を満たさず給与課税された場合、医療機関に払ったワクチン接種料は医療費控除の対象になるかどうか、である。答えは残念ながら「対象外」だ。国税庁のホームページに「病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません」と明記されている。治療は対象になるが、予防は対象にならないということだ。私見だが、医療費抑制のためには予防にシフトするインセンティブがあっても良いと思うが、所得税政策上はそうはなっていないようである。

要件を満たしたワクチン接種料負担の検討を

事業主がインフルエンザワクチンの接種料を負担した場合、要件さえ満たせば税金計算上の経費にでき、ワクチン接種を受けた個人も給与課税されない。要件のハードルも高くないので、ワクチン接種料負担の費用対効果を検討し、インフルエンザ罹患による生産性低下のリスクを下げることも検討されてはいかがだろうか。

新井 良平・経理ライター
中小企業から上場企業まで規模を問わず経理や税務を経験。日々の経理処理から開示業務、IFRS、内部統制、経営分析、税務申告、移転価格など幅広い経験を基に複数メディアで記事を執筆。