注射
(写真=Thinkstock/Getty Images)

感染すると高熱や頭痛、関節痛などに襲われるインフルエンザ。日本では毎年、12月から3月ごろにインフルエンザが流行している。治療に1週間ほどかかるため、業務に支障が出て悩む人も多いだろう。医療機関でワクチンを接種すれば予防できるが、報道などによると2015年はワクチン接種料の値上げが相次いでいるという。ワクチン接種を控える人が増えればインフルエンザの流行が拡大するおそれもあり、業務に支障が出る可能性も大きくなる。

そうした事態に備えて事業主がワクチン接種料を負担することも一手だが、その場合における①事業主の経費処理の可否②個人の所得税課税③個人の医療費控除、に関する注意事項をまとめてみた。


事業主の会計処理と税務処理

事業主の経費処理についてだが、会計処理と税務処理に分けて考える。まず会計処理としては「福利厚生費」として差し支えない。

税務処理は、費用負担の対象が従業員か役員かによって扱いが変わる。従業員のワクチン接種料は個人事業の「必要経費」、または法人の「損金」、つまり税金計算上の経費にできる。法人の役員は2パターンに分かれ、後述のように個人に所得税が課されない場合は損金としてよいが、所得税が課される場合は法人税法上「役員賞与」となり、損金にはできない。

会計上の処理と従業員の税務処理は単純だが、役員は所得税課税状況で税務処理が変わることを押さえておこう。


個人所得税は原則として課税、要件を満たせば非課税

個人が負担すべきものを会社が負担した場合は給与とみなされ、原則的に所得税が課される。無償または通常より低い金額で経済的利益を受けた場合は「現物給与」となるためだ。例えば従業員のワクチン代3000円を会社が負担したとすると、通常の給料額に3000円を上乗せして給与が計算されなければならない。源泉所得税は給料額と連動しているため、計算に漏れがあると事業主は個人から幾らか追加徴収する必要がある。

ただし経済的利益の供与が以下の3点を満たす場合は、給与として課税しなくてよいとされている。その3点は①業務上必要であること、②著しく多額でないこと、③役員だけでなく従業員も対象であることが挙げられる。

インフルエンザにかかると業務に支障が出るのであれば、予防することは会社として合理的な判断であり、業務上必要だと言える。ワクチン接種は一回数千円程度であり著しく多額とは言えないであろう。ワクチン接種料負担の対象に従業員を含めれば、3つの要件を満たし、所得税は課税しなくてよいと考えられる。

ワクチン接種料負担の対象を役員だけにした場合は、役員個人に所得税が課税されることになる。そうなると、先述したように事業主も税金計算上の経費にできなくなることに注意したい。過去の判例において、役員は人間ドック料、従業員は健康診断料を負担したところ、給与課税されたケースがある。あくまで役員と従業員に平等・公平に機会を与えることがポイントとなる。

また、所得税基本通達では「役員だけを対象として供与される場合を除き」課税が不要となっているため、特定の従業員だけを対象にした場合は所得税の課税が不要とも解釈できるが、過去の判例に「役員を対象とする等特定の者のみに支給されたものでない限りにおいて(中略)課税しなくて差し支えない」というコメントもあり、特定の従業員だけではなく希望者全員を対象にすることと解釈されている面もある。特定の従業員だけを対象とした場合は、税務調査時に合理的な理由の説明が必要となるであろう。