(この記事は「マイアドバイザー」に掲載されたものです。提供: My-Adviser.jp 写真=PIXTA)
老後資金を非課税で積み立てられる「確定拠出年金(DC)」。中でも企業が資金を拠出するものを「企業型確定拠出年金(企業型DC)」と言います。企業型DCでは会社が出す掛金を「事業主掛金」と呼びますが、企業型DCを導入した会社が規約で定めれば加入者が「事業主掛金」に自分で掛金を上乗せすることもできます。これを「加入者掛金」といいます。よく「マッチング拠出」と言われます。
マッチング拠出は、企業型DCの加入者が給与天引きで掛金を上乗せして、確定拠出専用口座で積み立てできる仕組みです。
「マッチング拠出」がやらなきゃ損と言われる理由
マッチング拠出の掛金は、個人型の掛金のように全額が所得控除となります。つまり、マッチング拠出を活用すると税金がかからない分、給与口座に入るよりも自分の資産が増えるのです。
たとえば税率が20%(所得税10%・住民税10%)とすると、会社から1万円の給与が支払われた場合、給与口座で受け取れるのは8000円になります。しかしその1万円をマッチング拠出の掛金として確定拠出年金口座に入れると、税引きされず1万円のまま自分の資産とすることができます。
これを30年間続けていくと、通常のように給与口座に入ると税引されて288万円となるものが、確定拠出年金口座に入れると360万円となり、72万円違います。確定拠出年金口座を活用するだけで20%増えるのですから、マッチング拠出を活用しただけで20%のリターンを得たことになります。
さらに確定拠出年金口座で運用すると運用益に税金がかからないので、有効的に老後資金を準備できます。
「財形年金」や「個人年金保険」との違い
給与天引きの積立としては「財形年金」もあります。財形年金は制度を導入している会社に勤めている人が利用でき、一定限度額(貯蓄型は元利合計550万円、保険型は払込保険料累計額385万円)まで運用益が非課税となります。ただ残念ながら財形年金は積立額が所得控除になることはありません。
所得控除が受けられるものとして個人年金保険もあります。ただ個人年金保険料控除は掛金全額ではなく上限額(5万円、2012年1月以降締結した保険契約の場合は4万円)があります。上限の場合でも残念ながら払い込んだ保険料の1/2しか控除の対象となりません。
掛け金を決めるための2つのルール
マッチング拠出は毎月積み立てていく仕組みで、年払いや前納、後納、ボーナス月に掛金を増やすことなどはできません。掛金額は任意に決められますが、2つのルールがあります。
ルール1 マッチング拠出の掛金 ≦ 事業主掛金
ルール2 マッチング拠出の掛金 ≦ 拠出限度額‐事業主掛金
ルール2の「拠出限度額」は会社の制度によって違います。会社に確定給付企業年金や厚生年金基金がある場合は月額2万7500円が拠出限度額です。会社に確定給付企業年金や厚生年金基金がなければ月額5万5000円が拠出限度額になります。
たとえば会社に確定給付企業年金がああり、事業主掛金が1万5000円であれば、
ルール1 マッチング拠出の掛金 ≦ 1万5000円
ルール2 マッチング拠出の掛金 ≦ 1万2500円(=2万7500円‐1万5000円)
となり、2つのルールを満たす1万2500円が上限額となります。会社によって掛金が500円単位だったり1000円単位だったりするので確認しましょう。
ライフステージに応じて掛金額は柔軟に変更できます。住宅ローン返済や教育費などで家計が厳しいときは掛金を減らし、ゆとりが出てきたら掛金を増やすということもできます。
原則60歳まで引き出せないことに注意
ただし、マッチング拠出を利用するためにはいくつか注意点があります。そもそも会社が「マッチング拠出」という仕組みを導入していなければ利用することはできません。
さらに掛け金は原則60歳まで引き出せません。生活に支障をきたさない程度に掛金額を設定しましょう。
宮一 幸子(みやいち・さちこ)
ファイナンシャル・プランナー。CFP、FP技能士(1級)、キャリアコンサルティング技能士2級、DCプランナー1級、DCアドバイザー(DC協会)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)。宮一FP事務所 会社URL:http://miyaichi3.jimdo.com/
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