大きい壁は130万円の壁

家計をやりくりする妻にとって、大切なのは収入ではなく"使えるお金(=可処分所得)"を意識し、いくらか把握することです。そして妻の給与が夫の手取り収入に与える影響も踏まえて考えることが重要です。

では以下の事例で、妻の給与によって"使えるお金"がどのように違うかを具体的に見ていきます。

【事例】東京都世田谷区に住むご夫婦
夫35歳、収入は給与収入500万/年のみ、妻28歳、前年度年収なし。
子やその他扶養者なく、社会保険料以外の控除もなし。家族手当は妻の給与年収130万円未満が条件で月1万円支給。妻は第2号被保険者にはならないものとする

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このように、妻の給与年収が103万円以下の場合はそのまま103万円が"使えるお金"として家庭に残ります。103万円を超えると、①②(税金の壁)が発生し、妻の給与が増えると共に、①②の支払い金額も増えていきます(②夫の控除の減額分は妻の給与年収141万円以降一定)。

妻の給与年収が130万円以上になると、③④⑤(社会保険の壁)が発生しますが、税金の壁と違い、その額は妻の給与に関係なく一定です。

では、影響する具体的金額を求めると、①②(税金の壁)は妻の年収が129万円の時に合計で年3万5千円。つまり"使えるお金"は約125万円。年収の増額分に比べて影響が小さいです。

一方③④⑤(社会保険の壁)は妻の給与年収が130万円に達した時点で発生し、その合計金額も年約40万円。つまり"使えるお金"が約90万円に減り、103万円の収入があった時よりかえって少なくなってしまいます。

このように、130万円の壁の方が家庭で"使えるお金"に与える影響は大きいです。


目指すなら170万円以上

いつまでも家庭で"使えるお金"が増えないわけではありません。

給与年収130万円以上から①~⑤の壁により家庭で"使えるお金"が一旦大きく減りますが、それ以降は徐々に増えていきます。そして、130万円未満に抑えた場合(給与年収129万円)より家庭で“使えるお金"が上回るのは、今回の事例だと妻の給与年収約170万円以上になった場合です。

これは、年収129万円から約40万円増やしたところで、使えるお金は約2万円しか増えないことになります。40万円というのは、時給千円で月15日働くとすれば、一日2時間は多く働く必要があります。

本編では、転勤族の妻の方々が、夫の転勤のタイミングで新しいお仕事探しをされた場合に、収入を考える上でいつも頭をよぎる○○円の壁を具体的にひも解いてきました。

ここで大切なことは年収(壁の金額)ではなく、家庭内で"使えるお金"を意識し、いくらになるかを把握することです。そして、時間を重視して効率よく家庭で使えるお金を増やすためには130万円の壁を意識し、夫の収入等の状況にもよりますが、より多くの使えるお金を求めるのであればおおよそ170万円を目安にすると良いでしょう。

松原 季恵(まつばら・きえ)
ファイナンシャル・プランナー。株式会社優益FPオフィス/アシスタント 会社URL http://www.you-eki.co.jp/

130万円の壁はなくなる?新たな「106万の壁」の意味【配偶者控除 後編】

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