小宮一慶氏
(写真=The 21 online / 小宮一慶 )


「経済指標」を効率的に身につける

新聞に踊る「GDP」「有効求人倍率」「米雇用統計」などのいわゆる「マクロ指標」。「自分の仕事には関係ない」と考えている人も多いのではないだろうか。

ただ、これからは経営者だけでなく「一般ビジネスマンもこうした指標を学ぶべき」と主張するのが、経営コンサルタントの小宮一慶氏だ。新刊『「名目GDPって何?」という人のための経済指標の教科書』を発刊した小宮氏にお話を伺った。


名目GDPと実質GDPの違いを説明できますか?

2015年9月24日、安倍晋三首相は新しい経済政策として「新3本の矢」を発表しました。その中の第1の矢が「希望を生み出す強い経済」で、具体的には「名目GDP600兆円達成」が掲げられました。

「GDPって何ですか?」と聞けば、ほとんどの読者が「国内総生産」と答えられると思います。では、次の質問はどうでしょう?

「名目GDPって何ですか?」

「名目GDPと実質GDPの違いを説明できますか?」

いかがでしょう。ちゃんと答えられる人はかなり減ったのではないでしょうか。でも、この程度の質問なら、学生時代にそれなりに勉強した人なら答えられたはずです。では、さらにこんな質問はどうでしょう?

「安倍政権はなぜ、実質GDP成長率ではなく、名目GDPを目標に掲げたのでしょう?」

「今の日本の名目GDPは何兆円くらいで、バブル絶頂の1990年頃と比べてどのくらい増えているでしょう? GDP世界1位の米国、2位の中国とはどのくらいの差がついているでしょうか?」

「そもそも、なぜGDPがそんなに重要なのでしょう?」

こう聞かれると、答えに詰まってしまう人がほとんどではないでしょうか。


実は経済指標は「宝の山」

経済指標は、その名の通り、経済状況の見当をつけるための目印であり道標ですから、多くの経営者や投資家が注目しています。ですから、新しい経済指標が発表されると、新聞やニュースで次のように取り上げられます。

「小売販売額、8月は0・8%増 5カ月連続プラス」(日経電子版2015年9月30日)

「8月鉱工業生産、0・5%低下 海外の機械需要後退、基調判断を下方修正」(同)

「8月の有効求人倍率、1・23倍 23年ぶり高水準」(朝日新聞デジタル10月2日)

「実質賃金、2カ月連続で増加 8月速報値、物価上昇鈍く」(同10月5日)

これらはほんの一部です。経済指標はほぼ毎日のように発表され、ニュースになっています。そして、それは日本の経済指標に限りません。経済は世界中とつながっていますから、米国や中国の経済指標が発表されれば、それが日本でもニュースになります。

「米雇用統計 就業者数が市場の予想下回る」(NHKニュース10月2日)

「中国の景況感、悪化鮮明 8月製造業指数50割れ」(日経新聞9月1日)

いかがでしょうか。みなさんもこのような経済指標に関するニュースを日々目にしていると思いますが、そうした記事をただ読み飛ばしているだけとしたら、何ともったいないことでしょう。なぜなら、経済指標は実は「宝の山」だからです。