大事なのは「継続的に見続けること」

経済指標を継続的に見ていると、それらの数字を通して日本や世界の経済状況が少しずつわかるようになります。また、経済や政治に関するニュースについても、より深く理解できるようになります。経済指標の数字といろいろなニュースとの関連が見えてくると、単なる点だったものが、点と点がつながって線になり、線と線に囲まれて面になり、さらに立体的に見えてくるようになるのです。

実際、私が経営コンサルタントとして仕事ができるのも、さまざまな数字を関連づけながら深く理解できるようになったからです。それは、企業のこともマクロ経済のこともです。私は、企業会計も、経済も、ほとんど独学ですが、継続的に数字を見続け、数字を関連づけながら理解するように努力してきたおかげで、経営分析も、経済分析もできるようになりました。

経営指標も、経済指標も、数字とその対象を見るという点では同じで、どちらも継続的な訓練でその能力は格段に上がると思っています(※経営指標に関しては、同じPHPビジネス新書で『「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』という本をすでに出版していますので、ぜひお読みください)。

ビジネスにおいては、過去を知り、現在の状況をきちんと把握していなければ、未来を予測することはできません。この「過去を知り、現在の状況をきちんと把握」するには、具体的な数字を見て考えることが大切になります。

未来を予測するためには、自分なりの仮説を立ててその仮説が当たったのか、はずれたのか、検証することが大事ですが、この検証も数字を見て行わなければ、あやふやなものになってしまうでしょう。


なぜ、ビジネスパーソンが経済指標を学ぶべきなのか?

読者のみなさんの多くは、今は会社という船をひたすら漕ぐ側かもしれません。しかし、将来はその舵取りをする側になっていきます。なかにはすでに舵取りをしている方もいるでしょう。

会社経営で一番大切なのは、言うまでもなく、全体の「方向づけ」です。何をやるかやめるかを決めることです。そうした会社の方向づけを行う経営判断では、世の中全体の流れを知っていることが不可欠です。会社は社会の一部です。どんなに大きな会社でも、社会の流れに勝てる会社はありません。これは、短期的な流れとともに、長期的な流れについても言えることです。

また、新しい分野へ進出するときや、うまくいっていない事業から撤退するときにも、経済や社会がこれからどうなるのかを予測できなければ間違った判断を下してしまうかもしれません。

もし株を買って資産運用をしようと思ったとしても、現在の株価が高いのか安いのか、これから上がるのか下がるのか、会社の経営指標とともに、経済指標が読めなければこうした判断も勘に頼るしかなくなります。それでは、ばくちと同じです。

経済指標は、ビジネスパーソンとして能力を上げるのに役立ち、ビジネスはもちろん、経済や社会の未来を予測することにも有用ですから、「宝の山」と言えるのではないでしょうか。