追加金融緩和,物価上昇率
(写真=Thinkstock/Getty Images)

12月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.1%(11月同+0.1%、コンセンサス同+0.1%)と2ヶ月連続の上昇となった。確かに、これまでの円安などによるコストプッシュの価格転嫁の進展が、物価の押し上げに働いている。コアCPIが0%近傍なのは原油価格の下落の影響が強いからで、コアコア消費者物価指数(除く生鮮食品及びエネルギー)は、12月に前年同月比+0.8%(11月同+0.9%)と強めの上昇となっている。

問題なのは2%の物価上昇の日銀の目標に向けた加速感が感じられないことだ。消費税率引き上げにより下押しを受けた2014年の弱い実質GDP成長率(0%)の後も、2015年は+0.5%程度と潜在成長率なみの水準にとどまるとみられる。賃金上昇が強くなる前の拙速な消費税率引き上げによる消費者心理の萎縮が継続しており、中国経済をはじめとした外部環境の不透明感などにより企業活動が鈍化し、デフレ完全脱却に向けた残り1マイルの道はぬかるんでいることになる。

消費税率引き上げによる消費者心理の萎縮がまだ残ってい中で、食料品を中心とした値上げが続き、家計調査の弱さ(12月の実質消費支出は前年同月比-4.4%)にもみられるように、消費者は防衛的になってしまっているようだ。

需要超過幅が物価を2%に押し上げる力は衰えており、日銀が重要視している消費者物価指数(除く、生鮮食品及びエネルギー)の上昇はこれ以上の加速はしばらくなく、現状程度でしばらくとどまると考えられる。コア消費者物価指数(除く生鮮食品)には、昨年後半から年初までの原油価格の急落の影響が前年同月比で強く残っており、2%の物価上昇の日銀のコミットメントに反し、コアCPI前年同月比は2015年の半ばからゼロ%近傍の動きとなっている。

原油価格が現状程度でとどまれば、その下押し圧力が減衰し、年央までには前年同月比+0.5%程度へピックアップしていく可能性があるが、2016年度後半に2%の物価上昇に達するという加速感が出てくる可能性はかなり小さいだろう。原油価格の下落の影響を受けたエネルギー以外にも、需要の弱さに起因する下落圧力が確認でき、日銀の物価シナリオのリスクが高まっている。

2%の物価上昇の実現は2019年ごろか

ポジティブに考えれば、2016年は、物価上昇が賃金上昇に若干遅れることによる実質賃金の上昇が消費活動を刺激するという、2014・5年とは逆の展開になっていくと考えられる。しかし、そのような需要の拡大が、物価上昇に加速感をもたらすにはかなりの時間がかかる。

コアCPIの前年同月比は2016年末までに+1%程度まで戻るのが精一杯であろう。12月の失業率は3.3%(11月同3.3%)となり、自然失業率とみられる3.5%を持続的に下回り、労働需給は引き締まり始めている。12月の有効求人倍率は1.27倍(11月同1.25倍)へ更に上昇し、1991年以来の高水準となっている。しかし、この程度では、1%程度の物価上昇を持続的にする水準であろう。

失業率が3%を下回る水準に更に低下し、労働需給のかなりの引き締まりが賃金上昇を強くし、賃金インフレと消費活動の拡大が牽引する形で物価上昇が加速していくことが、2%の安定的な物価上昇の達成の必要条件だろう。しかし、2017年4月に消費税率の再引き上げがあるため、再び消費活動は一時的に軟調になると考えられる。

そうなると、物価上昇率の加速には需要持ち直しのもう一サイクル必要となり、2%の物価上昇の実現は2019年頃になるとみられる。本日の日銀金融政策決定会合では、展望レポートにおいて、物価予想(2016年度の+1.4%)が更に下方修正(+1%程度へ)され、「2016年度後半」のターゲットが「2017年度中」へ、昨年10月に続きわずか3ヶ月の間に更に先送りになると考えられる。

12月の鉱工業生産は前月比1.4%低下

12月の鉱工業生産指数は前月比-1.4%となった。コンセンサス(-0.3%程度)を下回ったが、底割れてはいない。中国を含む新興国向けを中心とした不安定な輸出環境を反映して、4-6月期(前期比-1.4%)、7-9月期(-1.2%)と、2四半期連続でマイナスとなった。経済産業省の鉱工業生産の判断は「一進一退」と不安定な形となっている。

しかし、実質輸出が9月(前月比+2.1%)、10月(同+1.3%)、11月(同+1.8%)となり、12月(同-3.1%)には反動がみられたが、トレンドとして持ち直してきている。生産も9月(前月比+1.1%)と10月(同+1.4%)増加し、底割れを回避した。在庫指数の水準は3・4月を下回っており、5月からの弱含んだ期間、在庫がしっかり管理されてきたことを意味する。11月(同-0.5%)と12月の生産の減少は、この急ピッチなリバウンドの反動と考えられる。

10-12月期は前期比+0.6%の3四半期ぶりの増加に転じた。1月・2月の経済産業省予測指数は前月比+7.6%(+6.0%から上方修正)・-4.1%と、トレンドとして持ち直しの兆候が確認されている。

しかし、新興国の景気減速に対する警戒感がまだ強く、地政学上のリスクが企業心理を抑制する可能性があることを考えると、輸出と生産がしっかり持ち直していることが確認できるまでには、まだ時間がかかると考えられる。底割れ回避後の生産動向は、米国景気の回復により輸出がどれだけ力強く増加するのか、内需が拡大に向かう力が明確になるのかにかかっている。