DCの略称で知られる「確定拠出年金」は、2001年10月に「確定拠出年金法」の施行によって始められた。厚生労働省年金局によれば、2015年12月末現在における個人型DCの加入者数は約24万6千人。企業型DCは約547万3千人となっており、年々増加傾向にあるものの認知度は未だ低いままと言える。

確定拠出年金は、現役時代に一定の金額を掛金として拠出し、その資金の運用結果を老後に受給するという私的年金の一種で、「日本版401k」とも呼ばれる。老後の受給額を前もって確定しておき、そこから逆算した掛金を現役時代に支払う「確定給付年金」と対峙する関係だ。自分の老後資金には自分が責任を持つという姿勢を後押しするこの制度。資金形成のための貴重な選択肢であるだけに、是非とも前向きに活用したいところだ。

個人型DCの特徴

DCには、対象者が各個人で掛金を支払う「個人型」と、企業が掛金を支払う「企業型」の2通りがある。

個人型DCは「個人が掛金を支払う」というもので、実施主体は国民年金基金連合会だ。対象者は国民年金第1号被保険者である「20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、自由業、学生など」と、国民年金第2号被保険者である「60歳未満の厚生年金保険の被保険者」となっている。

ただし前者については、農業者年金の被保険者や、国民年金の保険料を一部でも免除されている人は対象とならない(障害基礎年金を受給している人等は対象になる)し、後者についても、勤務先企業で、厚生年金基金、確定給付企業年金、石炭鉱業年金基金のいずれかに加入している人や、企業型年金に加入している人は対象外になるので注意が必要だ。また、公務員など共済組合に加入している人 や国民年金の第3号被保険者は、個人型DCに加入することが出来ない。

掛金は加入者個人が拠出し、企業は拠出することができない。自営業者等の拠出限度は月額6万8000円で、国民年金基金の限度額と枠を共有している。また、企業型年金や厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施していない場合の限度額は、月額2万3000円となっている。

企業型DCの特徴

これに対して企業型DCは「企業が掛金を支払う」というもので、実施主体は企業型年金規約の承認を受けた企業だ。対象者は国民年金第2号被保険者である実施企業に勤務する従業員で、掛金は事業主が拠出する。ただし規約に定めた場合は加入者も拠出が可能になる。
また、企業分に上乗せして従業員が掛金を拠出する「マッチング拠出」を規約に定めておくこともできる。拠出限度額は、厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施していない場合には月額5万5000円、実施している場合には月額2万7500円だ。

給付は原則60歳になってから

老齢年金の受給は、原則60歳に到達した場合となっている。ただし60歳時点でDCへの加入者期間が10年に満たない場合は、期間に応じて支給開始年齢が引き伸ばされることになる。給付は5年以上の有期または終身年金なのだが、規約の規定により一時金も選択できる。

このほか、60歳に到達する前に傷病によって一定以上の障害状態になった加入者が受給できる障害給付金や、死亡一時金、特殊なケースとしての一時給付金などがある。

幅広い税制上の優遇措置

老後資金を蓄える確定拠出年金は、税制上も幅広く優遇措置がとられている。掛金の拠出時は非課税扱いで、個人型の場合、加入者が拠出した掛金額は全額所得控除になる(小規模企業共済等掛金控除)。また企業型の場合にも、事業主が拠出した掛金額が全額損金算入されるほか、加入者が拠出した掛金額も全額所得控除される(小規模企業共済等掛金控除)。

運用益は非課税。積立金に対しては特別法人税が課税されるのだが、2016年度まで課税が凍結されている。

受給時にも控除のメリットを存分に享受できる。年金として受取る場合には、他の公的年金と合算して「公的年金等控除」が受けられるし、一時金として受取る場合にも、退職金などと合算して「退職所得控除」が受けられる。

DCのメリット

DCのメリットは、節税効果だけではない。加入者個人が運用の方法を決めることにより、自立意識の高揚、ないしは経済・投資等への関心の深まりが期待できる。無論のこと、運用が好調であれば年金額が増えるし、年金資産が加入者ごとに管理されるので、各加入者が常に残高を把握できる点もメリットだ。

一定の要件を満たせば、離転職に際して年金資産の持ち運びが可能であることも見逃せない。また、企業にとっては、掛金の追加負担が生じないので、将来の掛金負担の予測が容易である上、掛金を算定するための複雑な数理計算も不要になる。

DCのデメリット

一方、気をつけないとならない点もある。投資リスクは各加入者が負うことになるし、老後に受け取る年金額も、当然ながら事前には確定しない。DCの運用には一定の知識が必要で、運用が不調であれば年金額も減ってしまう。

さらに原則60歳までに途中引き出しができないため、退職金の代わりにはならない。また、勤続期間が3年未満の場合には、資産の持ち運びができない可能性があることや、加入者ごとに記録の管理が必要になるため、管理コストが高くなりやすいことなどもデメリットとして挙げられる。

運用ポートフォリオの考え方

自分の責任の下に運用方法を考えるとは言っても、 最初はまるで方向性が見出せないのが普通だ。どのようなポートフォリオを描くべきなのか、まずは基本的な考え方を整理しておく必要がある。

DCの運用のゴールは60歳以降だから、投資対象はすぐに上昇が期待できるものである必要はない。10年後・20年後に成長していそうな投資対象はどこなのかをしっかり分析することが重要になる。また投資の世界では、運用期間が長期になればなるほどリスクの高い投資が可能になると良く言われる。安全第一だからといって、預金ばかりに頼っていたのではいかにも効率が悪いし、かと言ってあまりにもハイリスク・ハイリターンを狙いすぎるのもお勧めできない。

一般論として、運用当初は株式やリートなどを中心にリスクを取った運用をおこない、期間の経過とともに債券や預金の割合を増やしていく、といったポートフォリオがバランスのとれた運用であると考えられる。

DCは原則として一定の月額を拠出していくので、価格が低いほど多くの口数の購入が可能になる。将来的に上昇が期待できる投資対象であれば、価格の下落は多くの口数を買い付けるチャンスになるし、平均購入単価を低価格で平準化できるということにもなる。

20代、30代の人たちの場合は、少なくともあと何十年もの長期投資が可能な資産となるわけで、投資対象はハイリスク・ハイリターンのものを中心にすることができる。一方40代になれば、徐々にゴールを意識したポートフォリオが必要になってくる。

仕事や家族のことで忙しく、自分自身で資産管理を行う時間も知識もないという人は、自分の代理として「バランス型ファンド」を活用するという手もある。ただ、人気のバランス型ファンドでは、シンプルである一方できちんと分散投資が行われていない場合もある。投資の基本原則である分散投資をすればするほど、ファンドはシンプルではなくなる訳で、「シンプル=良いもの」という公式はここでは成り立たない点に注意すべきだろう。(ZUU online 編集部)

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