今や北欧家具は、私たちの生活に浸透しています。距離を超え、文化を越えて、私たちを魅了する北欧家具の魅力はいったいどこにあるのでしょうか。
北欧の人々の自然とともに暮らす生活スタイルは、大昔から『木』とともに暮らし、木を愛でてきた私たち日本人と類似しています。木目を現し、木の良さを表した北欧家具や北欧の人々の暮らしを、憧れとともに自然に受け入れているのでしょう。
今回の記事では、北欧を代表する家具デザイナーのヤコブセンについて、魅力的な家具とともに解説します。
(TOP画像引用:ARNE JACOBSEN)
アルネ・ヤコブセンとは
数多くの北欧家具を手掛けたデザイナー、アルネ・ヤコブセン。彼がデザインした作品は、街角や雑誌などの媒体など、あちこちで目にされ私たちの脳裏に残っています。
超近代的な建築家として、その名を知られる彼の名が広く知れ渡ったきっかけは、デンマークの建築家協会が1929年に主催した「未来の家」設計のコンペでした。建築家であり、家具デザイナーでもある友人のフレミング・ラッセンと共同で参加し、オリジナリティにあふれた建築デザインを具現化し見事優勝に輝きます。
建築家として認められたヤコブセンは、1950年代初頭から後に世界的な評価を得る家具デザインに着手します。
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ヤコブセンの半生
1902年、ヤコブセンはデンマークのコペンハーゲンで誕生しました。貿易商のユダヤ系デンマーク人の父ヨハン、そして母パウリーンの長男として生まれた彼は、当初画家を目指しています。
しかし、父親の反対を受けて断念したヤコブセンは、前述したフレミング・ラッセンの後押しもあり建築家を志し、デザイナーとしての才能を発揮し始めます。デンマーク王立芸術アカデミー在学中には、チェアのデザインで1927年に銀賞を獲得。アカデミー卒業後は2年間コペンハーゲンで建築家として活動し、「未来の家」の発表で一躍脚光を浴び、自身の設計事務所を立ち上げます。
1934年には、初期の代表作となる、コペンハーゲン郊外・ベルビュービーチ沿いの「ベラヴィスタ集合住宅」を設計。ほかにも「SAS ロイヤルホテル(現ラディソン・ブル・ロイヤルホテル)」や「デンマーク国立銀行」などを手掛け、北欧モダニズムの巨匠としての地位を世界的なものにしました。
1971年に逝去するまでにヤコブセンが手掛けた作品は、壮大な建築物から掛時計やカトラリーなどの小物まで、多岐に渡ります。
家具デザイナーとして
家具デザインを手掛けるようになったヤコブセンにとって、最初の代表的な作品は1952年に製薬会社の「ノボ ノルディスク」社工場内の社員食堂のために設計した「アントチェア」です。
デンマークの家具制作会社フリッツ・ハンセンとの協力により実現した「三次元曲線」と呼ばれる一体成型の椅子を開発し、世界的にも独創的なデザインが認知されることになります。
その後も「スワンチェア」や「エッグチェア」をはじめ、不朽の名作として名高いチェアを発表。1955年には、同じく高評価を受ける「セブンチェア」を発表。軽量でコンパクト、簡単に積み重ねられるセブンチェアは魅力あるデザインと機能性をあわせ持ち、世界中のファンに向けて、現在も生産が続けられています。
ヤコブセンの代表的な作品をご紹介
アントチェア(アリンコチェア)
ミニマルなフォームと細身のシェイプでありながら、極めて座り心地が良いアントチェア。日本では「アリンコチェア」の愛称でも知られます。
1952年、世界に先駆けて背座一体の三次曲面を具現化した成型合板のシェルは、9層(デコ・シルエットは8層)の構造で、優雅なフォルムながら驚くほどの強度と快適さも兼ね備えています。ちなみに、オリジナルは3本脚です。
セブンチェア
アントチェアから改良を重ねて生まれた個性的で美しいフォルムを持つ、セブンチェア。どんな時代のインテリアスタイルにも驚くほどフィットし、世界中で広く使われています。
1955年に設計されたこのチェアは、アントチェアと合わせて世界で600万本以上を販売し、ヤコブセン作品の中でも最高クラスの販売数を誇ります。
東京・六本木にある国立新美術館内のレストランをはじめ、アートライブラリーや講堂にもセブンチェアが使われています。
スワンチェア
1958年に設計。コペンハーゲンにて、ヤコブセン自身がデザインを手がけたSASロイヤルホテルのロビーやラウンンジエリアを彩ります。曲線のみでデザインされた「スワンチェア」は、その名のとおり白鳥が羽根を広げているように見える独創的なフォルムです。
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ヤコブセンの作品を販売している店舗
正規品の販売網は全世界に広がっており、日本でも80以上の箇所で販売されています。アクタスやヤマギワ、コンランショップなど、お近くの正規販売店でお買い求めください。
ヴィンテージ品については、オークションで出品されており高値で取引されています。購入を検討する際には、サザビーズをはじめとした権威ある海外オークションなど、信頼できる出品者との取引をおすすめします。
ヤコブセン家具のオークションにおける価値は?
北欧モダニズムの代表的な人物のひとりであるヤコブセンは、半世紀以上前に活躍したデザイナーでした。「長く使える良い物」にこだわった彼の家具は、今もなお多くの人に支持され、オークションでも人気を博しています。
ヤコブセンの家具はデザインが特徴的で目にする機会も多く、家具愛好者にとどまらず広く知られており、ブランドとしてのポジションを確立しています。
オックスチェア
1960年に設計されたオックスチェアは、「オックス=雄牛」の名を冠したとおり、ヘッド部分に雄牛を連想させる角をデザインしました。そのパワフルな外見とは対照的に、座り心地は柔らかく快適です。
このチェアは牛2頭分のレザーを贅沢に使用した革製で、脚はクロムメッキ鋼製。サザビーズでは、2007年6月に3万6000 米ドル(約444万円)で落札されました。
ドロップチェア
ヤコブセンの最高傑作とも言えるSASロイヤルホテル内で使われたドロップチェアは、美しい背もたれと丸みを帯びたデザインを持ち、ヤコブセン自身もお気に入りの作品。
このホテルのためにデザインされたドロップチェアの製造数は限られており、その希少性の高さから、サザビーズで2万5000 米ドル(約260万円)で2013年12月に落札されました。
オックスフォードチェア
イギリス・オックスフォードにある、セント・キャサリンズ・カレッジの教授用チェアとしてデザインされたチェア。製作当時は、背中の曲線にフィットするように背面と座面を一体化させた合板を採用していました。
こちらも、2019年5月にサザビーズで2万1250ユーロ(約259万円)の高値で落札されました。
高い評価を集めるヤコブセンの家具を紹介
3300シリーズ(ラウンド・ハウス)
3300シリーズは、ここまで何度か紹介したSASロイヤルホテルに直結する「SASエアターミナル」用にデザインされたソファのシリーズです。
アームチェアや3人掛けのソファなど、幅広いラインナップを揃える3300シリーズは、時代に左右されることのない洗練されたフォルムを持ちます。
特に、ヤコブセンがデザインした邸宅「Sjællands Odde」で使用された3人掛けソファの「3303モデル」は、高さのあるバックレストが安定感を生み、座り心地も抜群。ECサイトでは、134万4200円(税込、2023年3月30日現在)で販売されています。
エッグチェア
ヤコブセンが自身のガレージで試作を繰り返し、完璧なフォルムを追求したエッグチェアは、デンマークデザインにおける不朽の名作です。
北欧のクラフトマンシップを象徴する、ヤコブセンの代表的な作品であるエッグチェアは、3316モデル(グレースレザー/チェスナット)が116万2700円(税込、2023年3月30日現在)で販売されています。
まとめ
最後に、リプロダクト品について説明します。リプロダクト品は、版権が切れた製品を正規メーカー以外が製作した製品です。ヤコブセンの家具もリプロダクト品が販売されています。リプロダクト品が製作されて流通する理由は、秀でたデザインと高い人気をあわせ持っている証とも言えますが、正規品とはまったく異なるものです。
使われる材料が正規品と異なったり、製造方法も簡易的な方法に変えたりと、価格を抑えるためにコストを削減する方法がとられています。ヤコブセンの家具を購入しようと検討されている方は、しっかりと見極めた上で、お買い求めになると良いでしょう。
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