2024年2月22日、日経平均株価は1989年12月29日の史上最高値3万8,915円を更新、3月4日には取り引き時間中に初めて4万円を突破し、終値で4万109円となりました。
今回は、このような日経平均株価上昇の要因に注目して「誰が日本株を買っているのか?」をテーマに、「投資部門別売買状況」について解説します。
投資部門別売買状況とは
投資部門別売買状況は東京証券取引所が公表するデ―タで、日本株を売買した投資家(または投資部門)の内訳を示すものです。投資信託、事業法人、銀行など金融機関を含む「法人」や、個人投資家を示す「個人」、そして「海外投資家」と「証券会社」に分けられ、主体者ごとの売買金額と売買株数が、1週間単位で示されます。
「買い」と「売り」の差し引きがプラスなら「買い越し」、マイナスなら「売り越し」と表現されます。「外国人投資家が2週連続で日本株を買い越しました」といったニュースは、この投資部門別売買状況がベースになっているのです。
日本株の売買の6割以上は「海外投資家」
では、実際の投資部門別売買状況のデータを見てみましょう。大きくは以下の4項目で分類されます。
法人
生命保険会社や損害保険会社や銀行、信託銀行などの「金融機関」や、「〇〇ホールディングス」といった持ち株会社、一般企業を含む「事業法人」などを示します。たとえば、2024年2月6日、日本を代表する総合商社の三菱商事は、自己株式を除く発行済み株式数の約10%に当たる4億1,700万株、金額ベースでは5,000億円を上限とした自社株買いを発表しました。このような自社株買いは一般的に「法人」の項目に含まれることになります。
個人
国内の個人投資家を示します。
海外投資家
日本に在住していない「非居住者」と、東証非取引参加者である外国証券会社の在日支店を示します。この「海外投資家」の売買は、欧米の金融機関が運用する年金や投資信託が多くを占めます。また、海外のヘッジファンド(基本的に富裕層を対象とした、さまざまな投資手法を組み合わせて利益を追求するファンド)の売買も含まれます。
証券会社
国内の証券会社による、外国証券会社の在日支店以外の同業他社からの委託注文を示します。なお、調査対象となっている総合取引参加者が行った自己取引は、「証券会社」ではなく「自己計」として集計されています。
次の「表1」が実際のデータです。金額べ―スの「売り」「買い」と、全体における「比率」、「差引き」では、買い越し(+値)売り越し(-値)の金額が分かります。
▽表1:2024年3月第1週(4日~8日)分の投資部門別売買状況(金額)
表1では海外投資家の売買比率は63.7%となっています。2023年の年間集計では69.6%でしたので、海外投資家は日本市場に大きな影響を与えていることが分かります。この投資部門別売買状況において、最も注目すべき情報といってよいでしょう。
日経平均株価との関連
▽海外投資家の売買動向と日経平均株価の週ごとの値動き
このグラフは、海外投資家の売買動向と日経平均株価の週ごとの値動きを、コロナショックが発生した2020年初から、日経平均株価が史上初の4万円台を記録した2024年3月第1週まで示したものです。
2020年11月前後に日経平均が急反発した時期(①)、2023年の4月から6月にかけての上昇局面(②、バブル後の最高値を更新)、2024年の年初以降の動き(③)など、海外投資家の買い越しが日経平均の上昇につながっていることが見てとれます。
直近の2024年の1月~3月第1週までで、海外投資家は3兆2,183億円の買い越しになりました。世界の主要相場と比較して日本株が相対的に割安なことや、日本経済がデフレから脱却間近であること、日本企業のカバナンス(企業統治)が改善していることなどが、日本株が海外投資家から注目される要因になっているようです。
「投資部門別売買状況」は、東京証券取引所のウェブサイトで確認できます。今後も、現在のような海外投資家による日本株買いが続くかどうか注目を集めるところですが、定期的にこの情報をチェックしてみるとよいと思います。