LINEいじめ,実態
(写真=The 21 online)

外からは見えにくい「深刻な実態」

その利便性からビジネスマンの間でも利用者が増えている「LINE」。チーム内での連絡等に使っている、という人も多いだろう。だが、その利便性があだになり、深刻な問題になっているケースが増えている。実際、どのような問題が起きているのか。社会保険労務士法人にて日々、多くの問題を取り扱っている大槻智之氏にその現状をうかがった。

「既読スルー」を許さない上司に疲弊するチーム

「上司(男性・45歳)から頻繁に来るLINEに耐えられなかった」

と話すのは営業事務職のAさん(女性・26歳)。最初は「メールや電話よりも連絡が取りやすいから」という理由で部署のメンバーでLINEグループを作ったのだが、徐々に事務連絡のみでは収まらなくなってきたという。

「時々ですが、わりと遅い時間帯に上司から『俺はこう思うけどみんなはどう思う?』という感情的と思えるようなメッセージが来るようになりました」

内容が会社の経営批判や、特定の役員、経営者に対しての誹謗中傷に近いこともあり、Aさんは「ほとんどスルーしていた」そうです。グループの場合は、"誰が既読したのかわからない"のでほとんどのメンバーが"既読スルー"にしていたとのこと。ただ、そのうち「〇〇はどう思う」とグループ内で名指しで意見を求められることが多くなり、「みんな戦々恐々としていた」そうです。

"既読スルー"と差し障りのない返信だけ続けていると、グループではなく直接LINEメッセージが来るようになったという。ちなみに、「自分が気に入らない回答をしたメンバーはグループから外された」そうです。

「今日は頑張ったね、お疲れ様」くらいは我慢できたのですが、「おい、『おやすみなさい』くらいは返事しろよ」や「お~い、既読になってるぞ~」といったメッセージが来るようになり、次第に「LINEを見るのが怖くなった」そうです。

会社に訴えたことでLINE上での中傷も

その後、Aさんは思い切って上司に「事務連絡以外のLINEはやめてほしい」とお願いしたところ、LINEグループを外されてしまったそうです。

その後、同僚に聞いたところ、上司が「Aは協調性がない自分勝手な女」などとグループにメッセージを書き込んでいたことが発覚。事情を知らないメンバーは、上司のAさんに対する誹謗中傷にある程度、同調してしまったそうです。

その後、Aさんにメンタル不全が発症し、人事部がヒアリングをしたところで全容が明らかとなり、LINEによる社内トラブルは解決に向かいました。

この問題がこうなるまで明らかにならなかった一つの要因としては、実はその上司が"経営者の一族"であったため、一部のメンバーは「薄々気が付いていたが、評価など自分がターゲットにされるのが怖くて何もしてやれなかった」ことにありました。

LINEグループに人事権があるなど一定程度の権限がある管理職等が参加している場合には、その管理職のモラルが欠如していると、とんでもない"LINEいじめ"に発展してしまう可能性があるのです。

ちなみにこの上司は、「パワハラ」と「職場の風紀を乱した」という懲戒事由に該当し、降格の上で東京本社から地方の営業所へ転勤させられたそうです。