節税
(写真=PIXTA)

「最近は税金に関する本があちこちで売られている。これなら税理士なんていなくても大丈夫だ」とお思いの経営者の方もいるでしょう。しかし、「生兵法は大怪我の基」、安易に自己流で税金を計算して納めると、かえって無駄が多く発生し、損する結果にもなりかねません。ここでは、起業したばかりの経営者の方が知っておくべき節税対策のポイントについて解説します。

節税対策のポイントその1~資本金は1000万円以下で

会社の資本金をいくらにするかによって、節税できる金額が大きく違ってきます。その資本金の額の目安は、一般に「1000万円」と「1億円」に分けられます。それぞれの資本金の額による影響は次の通りです。

(1)資本金1000万円以下の場合
・会社設立から原則として2事業年度分の消費税が免除される
・法人住民税の均等割額が節税できる
例えば、東京23区で従業員50人以下の会社だと、法人住民税の均等割額は次のようになります。

資本金額1000万円以下…年7万円
資本金額1000万円超……年18万円

法人住民税の均等割額はいわゆる「人頭税」的なもので、会社の決算が赤字でも毎年必ず払わなくてはならないものです。そのため、年11万円の差も積み重なれば影響は大きいのです。

(2)資本金1億円以下の場合
・法人税を計算する場合、軽減税率15%を適用できる (資本金1億円超だと25.5%)
・交際費は800万円まで、全額を損金算入(※)できる
・30万円以下の少額減価償却資産を、年間300万円まで損金算入(※)できる
(ただし、同時に後述の青色申告の承認を受けていることが必要)
・特定同族会社の留保金課税が免除される
・欠損金の繰り戻し還付が受けられる
・法人事業税の外形標準課税が免除される
・法人住民税の均等割額を節税できる
※「損金」とは、法人税上の「経費」という意味です。会計の経費と似ているのですが、会計で経費になっても法人税法上では経費として認められないものもあります。

経営者の方にとって会社設立当初は、これから事業を軌道に載せなくてはならない大事な時期です。大事な事業に投資するためにも、資本金を1000万円以下に抑えて節税し、手元に資金を残すようにしておくのが望ましいでしょう。

節税対策のポイントその2 ~青色申告承認申請書を出そう

これから起業する経営者の方が節税を考えるならば、資本金の額と同時に「青色申告」も考えておきたいところです。「青色申告」は、個人事業主の確定申告でよく知られたキーワードですが、これは法人にもあります。この青色申告の承認を受けることによる節税上のメリットは次の通りです。

・30万円以下の少額減価償却資産を、年間300万円まで損金算入できる
(ただし、先述の「資本金1億円以下」であることも必要になります)
・欠損金の繰越控除を7年間にわたって行うことができる
たとえば、資本金が1000万円以下の会社で、1年目が70万円の赤字、2年目が30万円の赤字、3年目が100万円の黒字だったとしましょう。

もし、青色申告の承認を受けていない場合、1年目と2年目の法人税が0円であっても、3年目の法人税は、100万円 × 15% = 15万円を支払わなくてはなりません。しかし、青色申告の承認を受けているならば、1年目と2年目の赤字が3年目の黒字と相殺されます。

結果、▲70万円(1年目)▲30万円(2年目) + 100万円(3年目) = 0円となり、3年目の法人税は0円になります。

青色申告の承認を受けるためには、原則として設立日以後3か月以内に青色申告承認申請書を管轄の税務署に提出することと、複式簿記で日々の記帳を行うことが要件となります。

節税対策のポイントその3 ~創立費と開業費を繰延資産として計上しよう

会社設立そのものにお金がかかります。また設立後、実際に営業活動を始めるまでの間にも経費はかかります。これらは会社の経営上の通常の経費とならず、「創立費」「開業費」という項目で会社の財務諸表上に残ることになります。「創立費」「開業費」のおおまかな内容は次の通りです。

「創立費」 … 会社を登記するために支払った特別な費用。登録免許税、公証人手数料、謄本代、登記までに支払った従業金給料や事務所家賃、定款などを作成するための費用など。

「開業費」 … 会社を登記してから事業がスタートするまでの間にかかった費用。チラシや広告などの宣伝費用、印鑑や名刺を作るための費用など。

「創立費」「開業費」は、「繰延資産」という会計上の資産項目になります。償却方法は5年間にわたって均等償却(経費計上)するか、あるいは会社の任意で償却するかのいずれかを選択できます。起業して初年度から黒字を出すのはなかなか難しいものです。当分の間は繰延資産として財務諸表上に残しておき、いざ黒字になったら繰延資産を一気に償却してすると節税につながります。

この他、実際に会社の事業が始まった場合には、「会社の資産を購入する場合には中古で買うのが望ましい(費用にしやすいため)」、「商品や資産の状況をこまめにチェックし、損失は定期的に計上する」などといった節税の方法があります。最終的には、経営者の方が一人ですべてを判断するのではなく、税務のプロである税理士にその都度相談しながら決めていくのがベストでしょう。(提供: TRUSTAX

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