ドル円予想レンジ 105.50-108.75
「Abe vows to respond to excessive foreign exchange volatility(安倍首相は急激な為替変動への対処を誓った)」-。これは訪欧中の安倍首相弁を伝えた5/5の海外報見出しだ。5/26-27のG7伊勢志摩サミットでは「必要に応じて為替についても議論されることになる
のではないか」との見通しも掲載している。
ドル安円高を睨む日米のウラ表
安倍首相は自らの政治信条に併走して、"デフレ脱却"として円安思考を掲げてきた。しかし4/28に日銀は追加緩和を見送り、円は急騰。ドル円レートは昨秋水準に回帰し、政府と日銀の不協和音を指摘する見方も浮上した。
4/29の英経済紙は社説で"The Bank of Japan risks a reputation for caprice "と題し、日銀の追加緩和見送りは戦略的な狙いがあったとしても市場対話を損ね、「危険なゲーム」と批判している。4/29の米財務省為替報告書で、日本が「監視国」に指定されたことも円買い圧力を増幅させた。
麻生財務相は制約されるものではないとしているが、仮に日本政府が円売り介入を強行すれば、トランプ旋風にも煽られて"日本は保護主義""為替操作国"との論が米国内で高まるのは必至だろう。筆者は従前から国際協調枠組や対米関係を軸としている中での介入は困難と読んできたが、更に厳しくなった観となる。
永田町筋からは、"円高回帰・デフレ脱却失敗の烙印を捺されるぐらいなら「伝家の宝刀(介入)」を・・"との拙速見解も聞こえるが、本展開では2点注視している。一つはドル高の鎮静化であり、FRB管掌のドルインデックス(Broad)が昨秋水準120割れとなっている点だ。
つまりドルの名目実効相場が1/26のピーク126.22から4.76%程度の下落となっていることでドル安調整が更に加速すると米株・米債などへの流入期待≒ファイナンスが滞る可能性として米国側が諸刃の剣を焦燥し始める可能性である。
二点目は安倍首相が「為替安定は重要」とした"安定"の真意であり以前のような円安進展に頼らず、経済・財政対策を世界成長への貢献策をサミット議長国として内外に示す可能性だ。
つまり円安急反転は難しいが、アベノミクスは不惑のデフレ脱却も課題であることから、公的年金や郵貯、共済組合などによる外債・外株投資の大幅な増強、総動員で1ドル105円割れ圧力を円売り需給で鎮静化に努める可能性である。
ドル円は日足雲下限、4/28下落起点111.80を見上げ、4/29高値108.22、4/28日銀ショック後の戻り高値108.75を目標。下値焦点は5/4安値106.24、5/3安値105.54、2014/10/15安値105.175。105.00の通貨オプション防戦圧力も意識されるものと推考。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト